Rauber Kopsch Band2.692   

 皮下包については大部分のものをすでに筋学のところで挙げたけれども,ここに概観的にまとめておこう.

 常にあるいはしばしば存在するもの

喉頭隆起皮下包Bursa subcut. prominentiae laryngicae

仙骨皮下包 B. subcut. sacralis

尾骨皮下包 B. subcut. coccygica

肘頭皮下包 B. subcut. olecrani

膝前皮下包 B. praepatellaris subcutanea

膝下皮下包 B. infrapatellaris subcutanea

踵骨皮下包B. subcut. calcanearis

 比較的まれなもの

肩峰皮下包B. subcut. acromialis

(上腕骨の)橈側および尺側上顆皮下包Bursae subcut. epicondyli humeri radialis, ulnafis

背側中手指節関節皮下包 Bursae subcut. metacarpo. phalangicae dorsales

背側指関節皮下包Bursae subc. digitorum dorsales

脛骨粗面皮下包B. tuberositatis tibiae

腓骨踝および脛骨踝皮下包Bursae subcut. malleoli fibulae, tibiae

 このように皮膚の実質が軟化するのと反対に,長く続く外界の作用によって骨化の起ることがある.永続する圧迫作用にさらされていたいろいろな場所で,真皮に骨化がみとめられた.皮膚のいわゆる練兵骨Exerzierknochenこれに属するものである.

10.皮膚の血管(図729731, 755)

 皮膚の動脈が深い動脈から分れて起るぐあいは(Manchotが示したように)多くの領域で著しいちがいを示す,また皮膚の動脈が筋肉層から外へでる場所にもしばしば変化がある.しかしその分布領域とその走る方向関係には大きい規則性がある. 

 動脈系の分節型は皮膚の血管の配列にも当然あらわれている.皮膚そのものに分節性の切れ目があるわけではないが,血管と神経の分布が皮膚の全領域を皮膚分節Dermatomerenに分けており,とくにそれが胴にはっきり現われているのは理解できることである.しかし分節性の皮膚の動脈は終動脈Endarterienをなして分布しているのではない.となりの血管との吻合が存在するからである.肋間動脈・腰動脈・外側仙骨動脈の各後枝Rami dorsalesの皮枝,および側胸部側腹部とでは肋間動脈・腰動脈の外側皮枝Rami cutanei lateralesがすべて各2つの脊椎肋骨分節のあいだで筋肉の層から出てくる.そして肋骨と平行して皮膚に分布する.前胸部においても分節状態が部分的になおみとめられる.しかし前胸部と前腹部では基本形の修飾があらわれており,同じようなことが僧帽筋の領域の皮膚血管の分布にも起こっている.前胸部と前腹部では内胸動脈の皮枝が第2肋間隙で強く発達して,分節像をかなりに消滅させている(C. Manchot, Die Hautarterien des menschlichen Körpers. Leipzig,1889.--O. Grosser, Morph. Jahrb., 23. Bd.,1905).

 腹部では外陰部動脈の腹壁枝と浅腹壁動脈とが横の方向と交叉しながら縦に走っているために,基本型からかなりちがう関係を生じている.この性質はこの両血管に限らず,他のすべての縦走血管についても同じことである.

 皮膚の静脈・リンパ管・神経の幹は一般に皮膚の動脈と非常によく一致した関係を示す.しかも分節の基本型が強く残っているほどよく一致し,のちに発生のいろいろな関係が多くからんでくるほど一致が少くなるのが常である.

 血管およびその枝の配列によって血管分枝の2つの主要型が区別される.

1. これは後に述べる型よりいっそうまれなもので,内径のかなりよく一致した相当多数の動脈が,垂直に深部からやってきて脂肪層内に入りこむ.そして短い経過ののちに各動脈は何本もの枝に分れ,散開しながら真皮の下面にいたり,真皮の最下層にもぐりこんで隣りの血管の枝と結合する.この粗い1次吻合からさらにいくらか細い枝がでて,これらの枝がおたかい同志や隣りの枝と結合し,また枝分れし,さらにまた結合するというふうにして,より細かい2次吻合をつくり,けっきょく皮膚血管網kutanes Netzともいうべき網が形成される.この網は一部は上述の吻合網と同一平面にあり,一部はそれよりやや上方にある.血管がこんなぐあいになっているのは臀部・手掌・足底である.

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最終更新日13/02/03

 

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