Rauber Kopsch Band2.696   

毛や皮膚腺はもとより,皮膚筋にも神経が来ている.また皮下組織にはなはだ豊富な神経が来ているところもある.

 皮膚における皮膚神経についていっそう詳しく述べると,真皮の内面の隙間からはいってきた神経小幹は,たえず枝分れしながら次第に乳頭層にまで上つてきて,ここで乳頭の下に終末[神経]Endgeflechtをつくる.この叢には深部浅部がはっきり区別できる.深部はかなり粗い網目をなす比較的太い小枝でできているが,浅部はもっと網目がこまかくて少数の細い線維からできている.この細かい方の終末叢では神経線維の分岐がみられる.そして最後にこの叢から個々の神経線維また嫡小さい線維束が上方へ出て,乳頭および表皮に達する.神経のほかの一部はすでにその前に,皮下組織や毛や皮膚の腺・筋・血管などに終わっている.

 皮下組織の小さい神経幹において断然多数を占めるのは有髄線維で,その太さは12µまでである.しかし終末叢においては枝分れの結果細くなっていて,太さが2~6µである.

 腺・筋・血管に終るものを除けば,皮膚の神経はすべて皮膚の知覚作用に関係するもの,つまり知覚神経である.これはその存在部位によって表皮・真皮・皮下組織の神経に分けられる.そのほかまた終末の様式によって,(細胞の外または内部に)自由終末をする神経,小体性終末(神経終末小体Corpuscula nervorum terminaliaをもつ)をする神経,および細胞性終末をする神経に分けられる.

 この分類はすべての分類と同様に,多少は無理なところがある.というのは終末小体から小さい神経線維がでて,それが自由終末をするという場合があるのである.

 さらに一言注意しておくのは,ヒトでは細胞性の終末をする神経は,嗅糸の支配をうける嗅粘膜(その由来からみて外皮に属する)だけであるが,動物ではこの種の終末が広く存在していることである.

A. 表皮における神経終末
a)表皮内の自由終末

 有髄神経組織は結合組織の縁のところで枝分れして,髄鞘をつけたまま上皮の下縁に達する.ここで髄鞘を失って軸索だけ表皮内に進入し,ここで上皮の細胞間を通る.軸索は上皮内で何度か細かい枝に分れる.これらの細枝は何本かの神経原線維と,いくらかの原線維周囲物質とからなっており,たがいに吻合しながら胚芽層の外縁にまで達し,角質層には入らない.これらの細枝が細胞のあいだで小さいボタン状の膨らみ(Knöpfchen) (図734)をなして終り,その膨らみのなかで神経原線維が1つの閉じた網をなしている(Boeke, Stöhr).

 Boekeは角膜の上皮と舌の上皮(第I巻図60, 61)において,終末性の小ボタンが細胞のあいだにではなく,細胞原形質の内部に存在することをみた.しかも角膜上皮では,ほとんどすべての細胞にこれを見いだしたのである.

b)表皮内の小体性終末

 表皮内での小体性終末korpuskulare Endigungenとしては,メルケルの触覚細胞Merkelsche Tastzellenを挙げてよかろう.これは小泡状の明るい細胞からなり,その下面か上面に1つの円盤状の神経終末すなわち触覚盤Tastscheibeがある.この細胞は小泡状の大きい核を1つもち(Boeke),この核がたいてい細胞の下部にある.細胞体め周辺部は明るいが,核の表面に接する中心部は暗調で,ここに原線維がたくさん走っている.触覚盤は細胞の内部にあって,神経原線維のつくる1つの網からなる.その網の目は円形または卵円形をなし,細胞体の内部にひろがる“終末周囲細網Periierminales Netzwerk"に移行している.触覚盤の網のどこかの1個所から原線維がでて(その数は多いことも少いこともある)他の触覚細胞にいたり,そこで第2の触覚盤をつくることがある.

S.696   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る