Rauber Kopsch Band2.704   

 内棍は原線維鞘とシュワン鞘のつづきをなすものが変形したのであって,蛋白質に富む物質からできており,その外層には縦のすじがあり,周辺部には縦にのびた核が見える.横断してみると,今のべた縦のすじは同心性の線としてあらわれる.たずしこの向心線は全円周の半分だけをえがいている.これらの半円の1群の端は他の群の端と一種の縫線Rhapheをなして相会している.内棍には無髄の軸糸がある.これは進入した神経線維の軸索にほかならないのであって,はっきりした原線維性の構造を示し,その経過中にしばしば瘤状のふくらみをもっている.軸糸の先は単純なふくらみをなして終るか,さもなければ内棍の端のところでいくつかの枝に分れ,これらの枝の先がやはり小さいふくらみをつくっている.これらの枝は内棍の伸びだしたものによって1本ずつ別々に,あるいは何本かが共通に包まれている.軸糸の先端のふくらみは神経原線維の網をあらわす.

 小体の茎には1本のごく細い動脈のあることが普通で,これが層板のあいだで毛細管網に移行している.反対がわの極からも毛細管の係蹄が入ってくることがある.内棍には決して血管がない.リンパ路をなしているのは神経周膜性層板のあいだの繊細なすきま(嚢間腔)であって,嚢腔がそれをなすのではない.

 層板小体はヒトではすでに胎生第4月に認められる.その頃には結合組織細胞がやや細長い小塊をなしており,その外方の層には同心性の層構造がみられる.

そしてまだ無髄の1本の神経線維とつながっている.神経線維が小体の中へ伸びてゆくのではなくて,小体が神経線維の末梢端のまわりに形成されるのである.ちなみにこの神経線維は脊髄神経節細胞の樹状突起であるという考えが最も普通である.

 Timofeew(Anat. Anz.,11. Bd.,1895)は層板小体のなかにある特別な糸状装置Fadenapparatを記載した.各小体にはふつう2本の有髄神経線維が到来し,その1つは無髄の扁平な軸索となって内棍に入りこむ.第2の神経線維は第1のものと並んではいり,そこで髄鞘を失って,1つの注目すべき網目の細かい糸状装置に移行する.この装置は何度もまがって走るごく細い糸からなり,孔のあいた鞘のかたちに第1の線維のリボン状の軸索を包み,そのさいこれと接触することがなく,ましてや吻合することもない(図747).両線維は異なった神経細胞から来ているもののようである.Stefanelli(Monit. zool. ita1., 48. Bd.,1937)はこの糸状装置が副交感性のものであるというが,Stöhr jr. (Z. Zellforsch., 30. Bd.,1939)によればこのことは今日までのところ確証されていない.

 層板小体の変異としては双子および三つ子の小体Zwillings-und Drillingskörperchenがある.すなわち2個または3個の小体がその外棍でたがいに結合しているのである.そのほか花環状rosenkranzförmigにつながった小体もある.終末線維が1つの小体から出て,ふたたび有髄になって,第2の小体に進入するのであって,これに第3の小体が続くことさえもある.これと同様なことが陰部神経小体では非常にしばしばみられる.

 層板小体はいろいろな哺乳動物にもみられるが,その構造は多少違っていることもある.鳥類ではHerbstによって発見され,それゆえヘルプスト小体Herbstsche Körperchenとよばれる.その構造はとくに内棍のところが変わっている.これの少し変つたものにケイ-レチウス小体Key-Retziussche Körperchenがある.これはカモやガチョウなどのクチパシにあるもので,比較的深い結合組織のなかにちつて,グランドリ小体とは大いに異なるものである.

[図747] 層板小体とその糸状装置 イヌの前立腺の結合組織性被膜から(Timofeew,1895).

a 太い有髄神経線維,その先はリボン状の軸索どなる.b 細い有髄神経線維,これが終末糸状装置をつくる.--メチレンブラウ染色.

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最終更新日10/08/31

 

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