Rauber Kopsch Band2.711   

左右の乳房は正中線へ向かって相寄り (その接近の程度はさまざまである),そのあいだに乳洞Sinus mammarum, Busenという谷間をはさんでいる.乳洞の広さは個体的に異なる.各乳房の中央よりやや下方で,たいていは第4肋間隙または第5肋骨の高さに,乳房の表面から小さい円錐状の高まりが出ている.これが乳頭Papilla mammae, Brustwarze,であって,やや外側上方へ向いている.乳頭の皮膚は,そのすぐ周りをとりまく輪状の部分すなわち乳輪Areola mammae, Warzenhofとともに,ほかの部分より暗い色調が目立っている.ただ乳頭の先端だけは暗い色がついていない.乳頭と乳輪の色は白人の処女ではバラ色またはそれよりやや暗い赤, 経産婦では褐色を帯びている.なお乳頭の皮膚にはしわがある.また乳頭の先端の近くには12~15の小さい孔があり,これは乳管Ductus lactiferi, Milchgängeの開口である.

 乳房Mammaの基層をなすものは乳腺の腺体すなわち乳腺体Corpus mammaeであって,皮膚の脂肪層の一部である脂肪枕というべきものがこれを包んでいる.この脂肪枕の厚さが乳房の大きさの個体差を生ぜしめる最も主な要素であって,乳腺そのものは乳房全体の高まりにくらべればずっと小さいもので,その大きさの個体差ははるかに少ないのである.乳腺はほず円形で平たくて固く,その内面は乳腺底Basis glandulae mammaeとよばれて平らであるか,または軽くへこんでいる.乳腺底は浅胸筋膜および大胸筋の上に接し,前者とは結合組織によってつながっている.乳腺底が大胸筋の下縁を越えてひろがっていることは稀にしかない.乳腺のもっとも厚い部分は中央部で,すなわち乳頭のあたりである.腺体の周辺部は上および内側方よりも下および外側方が著しく写い(v. Eggeling).乳腺を包む脂肪組織は多数の結合組織中隔によって仕切られている.これは皮膚支帯Retinacula cutisに属するもので,その1端は真皮に,他端は腺をかこむ結合組織ならびに浅胸筋膜と結合し,かくして乳腺の固定に役だっている.

[図758]分泌しつつある乳腺

分娩後14日の婦人

1, 2 内腔の狭い終末部で,腺細胞の内部に脂肪球がある.3, 4広い終末部でその内腔に脂肪球が放出されている.

S.711   

最終更新日10/08/31

 

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