Rauber Kopsch Band2.713   

しばしば腺体の一部が乳房の上外側縁から腋窩の方へ伸ぴている.

 時として乳輪の表面がそのほかの部分よりも低くなっていることがある.また乳輪がかなりもりあがっている場合もある.

 乳輪には大きい脂腺があって,.これは妊娠中にはさらによく発達する.その数は12ぐらいでモントゴメリー腺Montgomerysche Drüsenとよばれ,一種の乳汁分泌を営むにいたることがある.

 それでこの腺は前から迷在乳腺verirrte Milchdrüsenとも呼ばれ,ふつうの脂腺と乳腺との中間型と考えられる.しかしv. Eggeling(Jen. Z. Naturw.,1904)は汗腺と乳腺との中間型であるという.

 この脂腺が存在するのと同じ場所には,また生毛が生えている.乳輪およびそのごく近辺に比較的太い毛が生えていることは,婦人ではごくまれである.さらに乳輪には大きい汗腺すなわち乳輪腺がある.乳頭の皮膚乳頭は大きくてしばしば複合型である.また乳頭と乳輪には平滑筋が豊富に存在する.乳輪ではその筋束が幅ひろくて扁平であり,輪走するが,一部は放射状に走っている.乳頭では多数の筋束が一部は縦走,しかし大部分は輪走の網をなし,乳輪の筋束と編みあっている.乳頭には膠原組織のほかに弾性組織も豊富に存在する.

 乳管は開口のあたりでは8~10層からなる扁平上皮,そのほかの部分では低い円柱上皮で被われている.乳腺,あるいはむしろそれぞれの乳腺葉は,その構造からいって,樹状に分枝する導管(乳管)をもつ複合胞状腺である.

 乳腺は性的成熟の時期になってはじめて強く発達してくるもので,それまではいわば小児的状態にある.しかし性的成熟も乳腺を1つの前段階にいたらしめるだけで,乳腺はこの状態ではまだ機能を示さないのである.乳腺はその活動期すなわち乳汁分泌期にはいつ初めて充分な発達をとげるのである.すでに妊娠第2月で乳房の外観上の変化があらわれてくる.すなわち乳輪が大きくなり,いっそう暗い色調になる.そしてこの傾向は分娩にいたるまで強まる.したがって乳房のこの状態はかなり確かな妊娠の徴候とみられている.この外観上の変化と足並をそろえて乳腺はますます発達し,未熟ながらその分泌活動をはじめる段階にはいる.乳腺の完成がすすむにつれて,その血管装置も増加して血液の供給が増す.

 腺胞は球形または西洋ナシの形で(図757),導管の端に斜めの方向についている.処女の乳腺では終末部が小さくて,その壁は密に寄り合っている.これに反して授乳期(図758)には終末部が平均0.12mmもの直径をもつ立派な小胞をなし,その広い内腔は無数の脂肪小球をふくむ液体で充たさ流ている.すなわち腺胞の内容は出来上がった腺胞性乳汁alveoläre Milchである.腺胞の壁は核をもつ基礎膜と,その外側に接するごくわずかな結合組織とである.基礎膜の内面は乳腺上皮Milchepithelによって被われている.これは単層の上皮細胞で,その機能と形態がさまざまな段階を示している(図758).しかし同一の腺胞ではかなり同じ状態の上皮型がみられる.個々の上皮細胞は脂肪小球を豊富に含むこともあり,全く脂肪を含まないこともある.各腺胞を分けている腺胞間の組織のなかには血管やリンパ管や神経がゆきわたっている.この組織のなかにさらに形質細胞の群や,量の不定なリンパ球がみとめられる.リンパ球は腺胞性乳汁のなかにも少数ながら散在し,また腺胞の壁を貫いてゆくところが見られる.しかしリンパ球は乳汁の産出にとって特別に意味のあるものではない.

乳房の脈管と神経

 動脈は肋間動脈(内側および外側乳腺枝Rr. mammarii mediales et laterales),内胸動脈の乳腺枝Rr. mammarii,側胸動脈の外乳腺枝Rr. mammarii externiから来ている.

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最終更新日10/08/31

 

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