Rauber Kopsch Band2.729   

 毛包の血管は毛包の入口のところで真皮の血管とつながっている.毛包の豊富な血管分布にくらべると,毛乳頭にふくまれる血管は貧弱なものといえる(図773, 774, 777, 778).

 ここで動物(類人猿をもふくむ)の洞毛Sinushaare, Spürhaare(鋭敏な毛の意)の特別な構造についてしらべてみるとしよう.この種の毛は横断および縦断像がほかの毛と著しく違って見えるが,本質的な差異はけっきょくわずか1つの点であって,それは毛包の結合組織層内に立派な血液腔があるということなのである.洞毛には多数の神経が分布するが,その一部は毛の神経終末部に達するためにこの血液腔を貫いている(後述).ヒトには洞毛がない(Henneberg, Anat. Hefte, 52. Bd.,1915参照).

毛の神経(図781, 782)

 毛には神経が豊富に来ている.神経の終末は毛の太さや長さによって異なっていて,細い毛では終末の状態が単純で,太い毛ではそれが複雑になっている.

 毛乳頭内に存在するわずかの神経糸(図781)を別にすると,神経終末部は毛包頚の領域,すなわち脂腺の少し下方のところにある.

 最も単純な型の神経分布(図782)は次のようになっている.すなわち2,3本の有髄神経線維が脂腺のすぐ下方で毛包に達し,髄鞘を失つたのちにそれぞれ2本の無髄線維に枝分れし,これらは左と右にまがって硝子膜の外面上に輪状に配列する.この輪から多数の(40から50まで)扁平な突起が出て,毛の縦の方向に平行して,しかも次第に多少集中する傾向を示しつつ皮膚の表面に向かってすすみ,短い経過の後に尖端状の終末や,圧平されたり小さく膨らんだりした形の終末に終る.かくしてこの終末装置の全体は冠,またはダイヤモンドをとめる金属台にある程度似ている.--比較的まれに下行線維があらわれて,樽型の終末装置を生ぜしめている.

 いっそう複雑な型の終末装置では,今のべた冠状の終末の外方に輪状にならぶ神経叢が存在するが,その発達の程度はさまざまである.

 最も豪華な型の神経終末はかなり太い毛だけがもっていて,その神経線維は硝子膜を貫き,外根鞘の外方層の内部でメルケルの触覚細胞に接する終末板をもって終わっている. 

[図781]毛乳頭の神経(G. Retzius)

体長19.5cmの人胎児の口唇の毛. h 根鞘で囲まれた毛,n 神経,p 乳頭.

[図782]ヒトの生毛にみられる単純型の神経終末

40才の男の下唇(Szymonovicz).

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最終更新日10/08/31

 

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