024
- 024_00【Sphenoidal bone; Sphenoid bone蝶形骨 Os sphenoidale】 Bone located between the frontal, occipital, and temporal bones.
→(蝶形骨は頭蓋底のほぼ中央部にあり、上面観は羽を広げた蝶のように、また前方から見るとコウモリのように見える最も不規則な形をした無対性骨である。蝶形骨は発生学的には四つの部分、すなわち体、大翼、小翼および翼状突起に4部に分けられる。これはらは生後1年以内に癒合して単一の骨となる。蝶形骨は9種の周囲の骨と相接しており、それらは後頭骨、側頭骨、頭頂骨、前頭骨、篩骨、鋤骨、上顎骨、口蓋骨、頬骨である。Sphenoidaleはクサビ(sphen)に似た(eidos)という意味で、蝶とは無関係。これは多くの骨の間にクサビのようにはまりこんだ骨だからである。日本名も以前は楔状骨であり、更に古くは胡蝶骨と呼ばれたこともある。楔状骨の名は現在では足根骨の一つに占有されている。)
- 024_01【Body of sphenoid bone体(蝶形骨の);蝶形骨体 Corpus (Ossis sphenoidalis)】 The part of the sphenoid between the wings of the sphenoid and their processes.
→(蝶形骨体は蝶形骨の中央部にあり立方体をなしている。上面中央部には鞍状を呈したトルコ鞍があり、その中央に横位楕円形の下垂体窩がある。トルコ鞍の後方には鞍背という上方に突出した骨板があり、その両側外側端の突起を後床突起という。鞍背の後部は台形をなして後頭骨の底部とともに斜台を形成する。下垂体窩の前には体の前部との境界線である鞍結節とよべる横走する稜があり、その両側端にある中床突起は発育が弱く明瞭なものは少ない。鞍結節の前には細い横走する[視神経]交叉溝があり、その両外側は視神経管につづく。交叉溝の前部は蝶形骨隆起とよばれているが、これは隆起ではなく滑らかな平面である。体の前部は小翼と後部は大翼と結合している。下錐体窩の外側と大翼の根部との間には、内側頚動脈溝という前後に走る溝があり、外側に蝶形骨小舌という突起状の骨板がある。体の下面は鼻腔、咽頭腔の上壁をなし、中央に蝶形骨吻が前下方に突出し鋤骨翼にはさまれる。体の前面中央部には蝶形骨稜という上下に走る稜線があり、篩骨の垂直板と相接する。蝶形骨稜の両側でがいおうに蝶形骨甲介が認められる。これはバルタン小骨ともよばれ、発生学的には篩骨の一部であったものが8~12歳に蝶形骨体と癒合したものでとくに若年頭蓋で著明である。体の内面は空洞状をなし蝶形骨洞とよばれ、その正中部には蝶形骨洞中隔があり、洞を左右に分けている。その前面には蝶形骨洞口という開口部が両側にあり蝶篩陥凹に通じている。)
Ingrassia's process
- 024_02Ingrassia's process【Lesser wing of sphenoid bone小翼(蝶形骨の) Ala minor; Ala parva (Ossis sphenoidalis)】
→(蝶形骨体の前端の両側から左右に向かって翼状に延びるほぼ三角形の部分で、その先は細くとがっている。小翼の前縁は前頭骨の眼窩部と縫合するため鋸歯状で、その正中の小部分は篩骨の篩板に接する。前根と後根の2根を有し、この両根の間に視神経管がある。前縁は鋸歯状をなすことが多く、前頭骨の眼窩部と結合する。後縁は遊離縁をなし、その内側端に視神経管の後外側から後内側に向かう前床突起がある。上面は平坦で頭蓋底のうちで指圧痕、脳隆起などきわめて少ない部分である。また前頭蓋窩の後部を形成し、内側では蝶形骨隆起に移行する。下面は大翼眼窩面との間に上眼窩裂を形成している。)
- 024_03【Greater wing of sphenoid bone大翼(蝶形骨の) Ala major; Ala magna (Ossis sphenoidalis)】
→(蝶形骨の大翼は蝶形骨体後部の外側から前外側方へ翼状にひろがる部分である。3面および3縁を有する。上面は大脳面といわれ、凹面をなして中頭蓋窩の一部をなし、指圧痕、脳隆起、動脈溝、静脈溝が認め等えっる。この面で大翼と体の結合部近くに前内側から後外側に向かって三つの孔、すなわち正円孔、卵円孔、棘孔が並ぶ。正円孔は上顎神経、卵円孔は下顎神経、棘孔が並ぶ。正円孔は上顎神経、卵円孔は下顎神経、棘孔は中硬膜動脈および下顎神経硬膜枝の通路である。外側面は上・下の2部から成る。上部は側頭面といわれ大きく側頭窩の底をなすが、側頭加療より下内方部は側頭下面といわれ小さく側頭下窩の上壁の大部分をなす。内側面の大部分は眼窩面といわれ、ほぼ菱形をなし眼窩外側壁の形成にあずかる。その下方には上顎面があり、翼状突起に前面とともに翼口蓋窩に面し、ここに正円孔が開口する。なお眼窩面と上顎面の境は下眼窩裂の後縁をなす。上縁は前方で前頭骨と結合する短い前頭縁と、後方で頭頂骨と結合する短い前頭縁といわれ、また下部は遊離縁で下眼窩裂の上縁の一部をなしている。後縁の外側部は側頭骨鱗部と結合し鱗縁といわれ、その内側部は側頭骨錐体との間に蝶錐体裂をつくる。この裂の外側部に斜走する耳管溝がある。後縁の最後端は角をなし、そこから蝶形骨棘という小突起を出す。なお後縁と側頭骨岩様部との間に蝶錐体裂があるが、その外側部に斜走する耳管溝があり、ここに耳管軟骨をいれている。耳管孔は翼状突起根部の舟状窩につづいている。)
- 024_04【Pterygoid process of sphenoid bone翼状突起(蝶形骨の) Processus pterygoideus (Ossis sphenoidalis)】
→(翼状突起は蝶形骨の両側で蝶形骨体と蝶形骨大翼との間の下面から下方に向かい、頭蓋底面に対してほぼ直角に出る突起で、外側板と内側板からなり、その前面は口蓋骨垂直板および上顎体後部に接する。翼状突起の根部は前後に走る翼突管で貫かれる。)
- 024_05【Frontal margin of sphenoid前頭縁(蝶形骨大翼の) Margo frontalis (Ossis sphenoidalis)】 Border of the greater wing of the sphenoid that is united with the frontal bone.
→(蝶形骨大翼の頭頂縁より前方大部分は前頭骨と結合する前頭縁である。頭頂縁と前頭縁の間には大翼上縁では明瞭な境界をつけられない。前頭縁より内側は内下方に下降する薄く鋭い縁(眼窩面の後壁)となる。このことは蝶形骨小翼との間にできる上眼窩裂の下縁である。)
- 024_06【Zygomatic margin of sphenoid頬骨縁(蝶形骨大翼の) Margo zygomaticus (Ossis sphenoidalis)】 Border of the greater wing of the sphenoid for articulation with the zygomatic bone.
→(蝶形骨大翼の前縁は側頭面と眼窩面の間を下る鋭い縁で、その上部は前頭縁の一部として前頭骨の頬骨突起と結合し、以下の大部分は頬骨と結合する頬骨縁である。)
- 024_07【Sphenoidal crest蝶形骨稜 Crista sphenoidalis】 Median bony ridge on the anterior surface of the body of the sphenoid that articulates with the perpendicular plate of the ethmoid.
→(蝶形骨体の前面中央部には蝶形骨稜という上下に走る稜線があり、篩骨の垂直板と相接する。)
- 024_08【Sphenoidal rostrum蝶形骨吻 Rostrum sphenoidale】 Prolongation of the sphenoidal crest to inferior that articulates with the vomer.
→(蝶形骨稜の下端は体下面前部の正中線から前下方に突出する蝶形骨吻となる。前下方に突出し鋤骨翼にはさまれ連結する。)
- 024_09【Vomerovaginal groove鋤骨鞘突溝;頭底咽頭管 Sulcus vomerovaginalis; Canalis basipharyngicus】 Groove that unites with the vomer to form the vomerovaginal canal.
→(鞘状突起の内側縁と蝶形骨体の間に出来る鋤骨鞘突溝は鋤骨翼が蝶形骨に着くと鋤骨鞘突管となる。口蓋骨鞘突管と鋤骨鞘突管の小管はいずれも翼口蓋神経節の因頭枝の通る所である。)
- 024_10【Vaginal process of sphenoid鞘状突起(蝶形骨の) Processus vaginalis (Ossis sphenoidalis)】 Small bony ridge medial to the root of the medial plate of the pterygoid process. It is bounded on its lateral side by a small depression.
→(翼状突起の内側板の上端内方に向かって、蝶形骨体の下面に沿う薄板上の鞘状突起が出る。)
- 024_11【Palatovaginal groove口蓋骨鞘突溝;咽頭管 Sulcus palatovaginalis; Canalis pharyngicus】 Groove that joins the palatine bone to form the palatovaginal canal.
→(鞘状突起の下面の細い溝つまり口蓋骨鞘突溝は後方から前方に進むに従って深さを増し、口蓋骨の蝶形骨突起と合して口蓋骨鞘突管をつくる。)
Vidian canalヴィディウス管
- 024_12Vidian canalヴィディウス管【Pterygoid canal翼突管 Canalis pterygoideus】 Canal that runs anteriorly in the base of the pterygoid process. It transmits the greater and deep petrosal nerves to the pterygopalatine ganglion in the pterygopalatine fossa.
→(翼状突起の根部は前後に走る翼突管で貫かれる。大および深錐体神経が合した翼突管神経及び翼突管動脈が通る。)
- 024_13【Greater palatine groove大口蓋溝;翼口蓋溝 Sulcus palatinus major; Sulcus pterygopalatinus】 Groove along the posterior border of the maxilla, which forms part of the greater palatine canal for transmission of the greater palatine nerve and the descending palatine artery.
→(鼻腔面の上頭洞裂孔より後方にある部は口蓋骨の垂直板と結合する。その面の後上部には口蓋骨眼窩突起が接する。この口蓋垂直板と結合する面の後下部には後上方から前下方に斜めに走る大口蓋溝があって、口蓋骨の同名の溝と合して大口蓋管をつくる。)
- 024_14【Medial plate of sphenoid; Medial plate of pterygoid process; Medial pterygoid plate内側板(蝶形骨翼状突起の) Lamina medialis (Processi pterygoideus ossis sphenoidalis)】
→(翼状突起の内側板は細長く殆ど矢状位に立ち、その下端は鈎形に外方に曲がって翼突鈎をつくる。その上にある浅い翼突鈎溝は口蓋帆張筋の腱が通るところである。内側板は後縁は上部で2分して浅い舟状窩(口蓋帆張筋が起こる)を囲む。舟状窩の上に接して上に述べた耳管溝が斜めに上外方に向かい大翼後縁までつづく。これは耳管軟骨部の着く所である。また、内側板の上端から内方に向かって、蝶形骨体の下面に沿う薄板上の鞘状突起が出る。この突起の下面の細い溝(口蓋骨鞘突溝)は後方から前方にすすむんい従って深さを増し、口蓋骨の蝶形骨突起と合して口蓋骨鞘突管をつくる。なお鞘状突起の内側縁と蝶形骨体の間にできる鋤骨鞘突溝は鋤骨翼が蝶形骨に着くと鋤骨鞘突管となる。この2小管はいずれも翼口蓋神経節の咽頭枝の通る所である。)
- 024_15【Groove of pterygoid hamulus翼突鈎溝 Sulcus hamuli pterygoidei】 Groove that forms a pulley for the tensor veli palatini muscle.
→(翼突鈎の上にある浅い急な弯曲によってできる翼突鈎溝は口蓋帆張筋の腱が通る所である。)
Bertin's bone
- 024_16Bertin's bone【Sphenoidal concha蝶形骨甲介 Concha sphenoidalis】 Originally a pair of separate, hollow bones. It is united with the body of the sphenoid to form part of the anterior and inferior wall of the sphenoidal sinus.
→(蝶形骨洞口の下部は体下面につづく弯曲した薄い骨板で被われ、これを蝶形骨甲介(ベルタン小骨)という。これは鼻殻軟骨の後部から発生し、本来は篩骨の一部である。)
- 024_17【Opening of sphenoidal sinus蝶形骨洞口 Apertura sinus sphenoidalis】 Anterior opening of the sphenoidal sinus into the spheno-ethmoidal recess.
→(左右の蝶形骨洞は蝶形骨体の前面の蝶形洞口で外部に開く。)
- 024_18【Optic canal; *Optic foramen視神経管;視神経孔 Canalis opticus; Foramen opticum; Canalis fasciculi optici】 Canal for transmission of the optic nerves and the ophthalmic artery.
→(視神経孔Optic foramenともよばれる。眼窩の上壁の最も深部で蝶形骨の小翼の蝶形骨体よりの根部は視神経管が貫通し、この管の外側には前床突起が延びだしている。視神経および眼動脈が通る。)
- 024_19【Superior orbital fissure上眼窩裂 Fissura orbitalis superior】 Opening in the upper part of the orbit between the greater and lesser wings of the sphenoid that connects the cranial and orbital cavities. It transmits the ophthalmic, oculomotor, trochlear, and abducens nerves and the superior ophthalmic vein.
→(眼窩の外側壁の後端には、上壁との間に上眼窩裂(蝶形骨の大翼および小翼の間にある上部裂隙)がある。上眼窩裂は頭蓋腔(中頭蓋窩)に通じ、眼筋の支配神経(動眼神経・滑車神経・外転神経)・眼神経・上眼静脈が通る。)
- 024_20【Orbital surface of sphenoid; Orbital surface of greater wing of sphenoid bone眼窩面(蝶形骨大翼の) Facies orbitalis (Ossis sphenoidalis)】 Surface of the greater wing of the sphenoid facing the orbit.
→(蝶形骨大翼の前内側を向く面の大部分は菱形の平滑な眼窩面でしめられる。)
- 024_21【Temporal surface of sphenoid側頭面(蝶形骨大翼の) Facies temporalis (Ossis sphenoidalis)】 Lateral facing surface of the greater wing of the sphenoid.
→(蝶形骨大翼の外方を向く面は側頭面で、その大部分は頭蓋の側面において側頭窩の底となる。)
- 024_22【Infratemporal crest側頭下稜(蝶形骨大翼の) Crista infratemporalis (Ossis sphenoidalis)】 Bony ridge between the (vertical) temporal surface and the (horizontal) infratemporal surface of the greater wing of the sphenoid.
→(蝶形骨大翼の垂直部をなす側頭面と水平部の下部との間にある骨隆起が側頭下稜がある。)
- 024_23【Infratemporal surface of sphenoid側頭下面(蝶形骨大翼の) Facies infratemporalis (Ossis sphenoidalis)】 Horizontal, inferior surface of the greater wing of the sphenoid.
→(蝶形骨大翼の側頭下稜より下方は側頭下窩の上壁の大部分が側頭下面になり、ここに卵円孔と棘孔が開く。)
- 024_24【Spine of sphenoid bone蝶形骨棘 Spina ossis sphenoidalis; Spina angularis】 Inferiorly projecting tip of the greater wing of the sphenoid.
→(蝶形骨の大翼の外側縁と後縁と合する部の下面からは下方に向かう鋭い蝶形骨棘がでる。蝶形骨棘には蝶下顎靱帯、翼棘突靱帯がつき、口蓋帆張筋の上部が起こる。)
- 024_25【Foramen rotundum正円孔;正円管(蝶形骨大翼の) Foramen rotundum】 Foramen that opens anteriorly into the pterygopalatine fossa. It transmits the maxillary nerve.
→(蝶形骨大翼が蝶形骨体から出る根部を貫く3孔が前内方から後外方にならぶ。最前のものは正円孔で、前方に向かって翼口蓋窩に開く。中の最も大きい卵円孔と最後の棘孔はともに頭蓋底下面に開く。正円孔は上顎神経が通る。)
- 024_26【Maxillary surface of sphenoid上顎面;蝶形上顎面;蝶顎面(蝶形骨大翼の) Facies maxillaris; Facies sphenomaxillaris】 Surface of the greater wing of the sphenoid facing the maxilla. The foramen rotundum opens here.
→(蝶形骨大翼の眼窩面の下方は明瞭な線を境として狭い上顎面につづく。)
- 024_27【Lateral plate of sphenoid process; Lateral pterygoid plate外側板(翼状突起の);外側翼状板 Lamina lateralis (Processi pterygoideus ossis sphenoidalis)】
→(蝶形骨の翼状突起の外側板は内側板にくらべて広く、やや短く、矢状面に対して斜めに位置する(その外面からは外側翼突筋が起こる)。外側翼突筋の下頭が起始する。内外両側板は前縁で連結し、その前面を縦に走る浅い翼口蓋溝は翼状突起が上顎体および口蓋骨垂直板と合してつくる翼口蓋窩の後壁をつくる。また、内外両側板は後方に開いた翼突窩をつくる(ここから内側翼突筋が起こる)。しかし、内側板と外側板とはその下部では離れて翼突切痕をはさむ。ここには口蓋骨の錐体突起がはまりこんでこれを補う。外側板の後縁は鋭く、その上部から小さい翼棘突起を出すことが多い。)
- 024_28【Pterygoid notch翼突切痕;翼裂 Incisura pterygoidea; Fissura pterygoidea】 Notch located between the lateral and medial plates of the pterygoid process. It is open inferiorly and lodges the pyramidal process of the palatine bone.
→(翼状突起の内側板と外側板とはその下部では離れて翼突切痕をはさむ。ここには口蓋骨の錐体突起がはまりこんでこれを補う。)
- 024_29【Pterygoid hamulus; *Hamulus of medial plate of pterygoid process翼突鈎 Hamulus pterygoideus】 Hooked process on the end of the medial plate of the pterygoid process.
→(翼状突起の内側板の下端は鈎形に外方に曲がって翼突鈎を作る。翼突下顎縫線という靱帯が起始する。)