634
- 634_01【Superior vena cava上大静脈 Vena cava superior; Vena cava cranialis】
→(上大静脈は上半身の血液を集める静脈で、上縦隔の中で左右の腕頭静脈が合してはじまり、途中で奇静脈を受け入れながら上行大動脈の右側を下行して右心房にそそぐ。)
- 634_02【Ascending aorta上行大動脈;大動脈上行部 Pars ascendens aortae; Aorta ascendens】 Ascending part of the aorta up to its exit from the pericardium.
→(左心室からおこり、肺動脈幹の後ろを上行して大動脈弓にいたる5cmほどの部。基部の内腔は膨らんで大動脈洞(バルサルバ洞)をなし、ここから左右の冠状動脈が出る。(イラスト解剖学))
Botallo's foramen
- 634_03Botallo's foramen【Foramen ovale of heart卵円孔 Foramen ovale cordis】 Opening in the interatrial septum that is present until birth. Direct flow of blood from the right atrium into the left.
→(卵円孔は出生時まで働いている、心房中隔にある孔。心房中隔の形成は原始心房の正中部はくびれ、その上面を心球・動脈幹がのりこえている。両側の心耳がふくれるにつれて内部では正中矢状位のヒダが張り出し(一次中隔)、その裾はやがて心室間の前・後心内膜クッションに連なる。一次中隔の下縁には心内膜性の肥厚が現れる。その下の左右交通路を一次孔(Ostium primum)とよぶ。一次孔が閉じるに先だち一次中隔の上部に孔があく(二次孔、Ostium secundum)。この孔はすぐに大きくなる一方、一次中隔の肥厚縁および前後クッションの融合によって一次孔は閉じ、左と右の房室口が分離する。肺静脈(そのころ単一)の下行部は一次中隔の付け根の左側に接して存在する。一次中隔に右側で左洞房弁との間(Spatium interseptovalvulare)に現れる鎌状のヒダを二次中隔とよぶ。その裾のはやがて旧一次中隔肥厚縁また左洞房弁等と連合して卵円孔の枠組を構成する。二次孔を生じた後の一次中隔は卵円孔の左手に弁膜状の構造として残存する形となる(卵円孔弁)。胎生期を通じて下大静脈よりそそぐ血流の大部分は卵円孔を介して左心房に向かう。出生して臍静脈からの還流がやむのに対し、肺静脈のそれは増加するので、左右心房の内圧に逆転が生じ、卵円孔は卵円孔縁に圧しつけられ、やがて器質的に張り付く。中隔鎌はその痕跡である。)
Eustachian valve
- 634_04Eustachian valve【Valve of inferior vena cava下大静脈弁 Valvula venae cavae inferioris】 Semilunar fold in front of the opening of inferior vena cava. During fetal development it directs blood toward the foramen ovale.
→(オイスタヒ弁とも呼ばれる。右心房内の下大静脈開口部前縁にみられる弁で、冠状静脈弁(テベシウス弁valve of Thebesius)とともに胎生期の静脈弁に由来するという。)
- 634_05【Right atrium右心房 Atrium cordis dextrum; Atrium dextrum】
→(右心房は心臓の右上部を占め、その後上部と後下部とに、それぞれ、上大静脈と下大静脈が注いでいる。)
- 634_06【Right ventricle右心室 Ventriculus dexter】
→(右心室は心臓の最下位部を占め、後上方にある右房室口で右心房と交通し、前上方にある肺動脈口で肺静脈に連なる。)
- 634_07【Left hepatic vein左肝静脈 Vena hepaticae sinistra】 Vein from the left lobe of liver.
→(左肝静脈は肝臓の左葉からの静脈。)
"Arantius, duct of
- 634_08Arantius, duct of【Ductus venous静脈管 Ductus venous】
→(胎児循環において胎盤からの血液は、肝臓の下へ向かう臍静脈に入り、ごく一部は肝臓に達するが、大部分は肝臓に沿った迂回路で下大静脈に達する短絡路。出世後は、閉鎖して脈管索をつくる。
臍静脈の血液を受け、肝門の左を下大静脈へと送る。肝臓で代謝する必要のない胎盤からの血液を早く心臓におくるための短絡路である。出生後は閉塞して静脈管索としてのこる。静脈管はイタリアのJ.C.Arantius (1530~1589)によって記載された。(イラスト解剖学))
"
- 634_09【Hepatic portal vein; Portal vein門脈;門静脈;肝門脈 Vena portae hepatis】 It conveys blood from the alimentary system to the liver. It forms important anastomoses with the esophageal veins, rectal venous plexus, and superficial veins of the abdominal skin.
→(門脈は胃腸、膵臓、脾臓の血液を肝臓に送る静脈で、肝門を通るのでその名がある。門脈の本幹は膵頭の後面で上腸間膜静脈と脾静脈の合流によってはじまり、6~8cmの長さ、1cmほどの太さの静脈として右上方へ走り、門脈の下で右枝と左枝に分かれ、肝臓の右葉と左葉に分布する。右枝はさらに前枝と後枝に分かれ、右葉の前部と後部に分布する。左枝は横走部と臍部に分けられ、前者は横走して左葉にはいる一方、尾状葉枝を出して尾状葉や方形葉に分布する。臍部は中央の部分で、後方に向かって静脈管索へ細い外側枝を送り、また前方へは肝円索(臍静脈の名ごり)の中へ内側枝を送っている。肝臓の中へはいった門脈の枝は、グリソン鞘(Glisson's sheath)とよばれる結合組織をまとい、固有肝動脈の枝と伴行しながら、分枝をくりかえし、小葉間静脈となる。ここから肝小葉内の洞様毛細血管に注ぎ、さらに中心静脈、小葉下静脈をへて、門静脈にはいり、下大静脈から心臓へと血流は流れることになる。門脈の特徴は、胃腸膵脾の各臓器の毛細血管から発し、肝臓の中でもう一度毛細血管になることである。つまり、二つの毛細血管床の間を連絡することである。門脈の働きは、第一胃腸から吸収された物質を肝臓に送り、余分の栄養の貯蔵や、有害な物質の解毒などを行わせること、第二に胃腸膵内分泌系のホルモンを肝臓に送り(インスリン、グルカゴン、セクレチンをはじめ、直接に肝臓に作用するものもある)、さらに全身にめぐらせることである。なお脾臓において赤血球の分解の際、ヘモグロビンから生じたビリルビンは、門脈によって肝臓に送られ、肝細胞の力で腸へ排出される。門脈の根は次の通りである。胆嚢静脈、臍傍静脈、左胃静脈、右胃静脈、幽門前静脈(この三者が胃冠状静脈をつくる)、短胃静脈、左胃大網静脈、右胃大網静脈、脾静脈、膵静脈、膵十二指腸静脈、上腸間膜静脈、下腸間膜静脈、中結腸静脈、左結腸静脈、右結腸静脈、回結腸静脈、虫垂静脈、空回腸静脈、S状結腸静脈、上直腸静脈。門脈の根は次の3カ所で体循環の静脈と連絡している。①胃の噴門部の静脈網は食道下部のそれと連絡し、食道静脈を経て奇静脈に通じる。②直腸の静脈網は中および下直腸静脈をへて内腸骨静脈に通じる。③臍傍静脈は肝円索に沿って、へそから門脈左枝に至る2,3本の細い静脈であるが、へそ周辺で上、下および浅腹壁静脈と連絡があり、内胸静脈や大腿静脈に通じている。肝臓の病変などで門脈血の通りが悪くなる(門脈圧昂進)と、門脈血ははけ口をこれら三つの連絡に求めて、少しでも体循環へもどろどろとするので、ふだんは目立たないこれらの静脈の吻合が、大きく膨隆してくる。 歴史的には肝門から肝臓に入る静脈をさすが、現在の定義では「毛細血管と毛細血管の間にはさまれる静脈」をいう。ふつう、血液は動脈→毛細血管→静脈の順に流れるが、この後に再び毛細血管を通るような血管系を門脈系という。[→門脈系について 参照] (199)ふつう消化管などからの血液を肝臓に送る静脈(肝門脈)をさす。脾静脈と上腸間膜の静脈の合流によって形成され、肝臓に注ぐ血液の80%を占める。なお、定義からいうと下垂体にも門脈がある。[→血管の構造としくみ 参照] 脾静脈・上腸間膜静脈が膵臓のうしろで合してできる静脈。下腸間膜静脈は脾静脈にそそぐことが多く、ふつうは脾静脈と上腸間膜静脈の合流部より肝臓側を門脈あるいは門脈幹portal trunkという。門脈は、小綱lesser omentum内を肝動脈や総胆管とともに走り、肝門付近で右枝と左枝に分かれ、肝臓内に入る。(イラスト解剖学))
- 634_10【Umbilical vein左臍静脈;臍静脈 Vena umbilicalis】 Branches to the anterior part of the left lobe of liver.
→(臍静脈は肝臓の両側を走行し、胎盤からの酸素に富んだ血液を送るようになる。右臍静脈は胚子期の終わりに消失するため、左臍静脈だけが胎盤からの酸素に富んだ血液を胚子に送る。このような細静脈の構造駅変化は以下に述べる様に要約される(図14-5)。すなわち、
・右臍静脈と肝臓と静脈洞の間に位置する臍静脈尾側部は退行する。
・左臍静脈尾側部の退行しない部位が臍静脈として存続する。
・肝臓内に大きな吻合静脈である静脈管ductus venosusが発生して(図14-5C)、臍静脈と下大静脈inferior vena cava(IVC)を連結する。静脈管は肝臓を迂回するため、胎盤からの大部分の血液は肝臓の毛細血管網を通過することなく、直接に心臓に注ぐ。(Moore人体発生学))
- 634_11【Umbilical artery臍動脈 Arteria umbilicalis】 First inferior branch arising from the internal iliac artery. It is obliterated postnatally from the exit site of the superior vesical arteries onward.
→(臍動脈は成人にみられるのは胎生期間中の臍動脈の遺残で、本幹から出て、まもなく上膀胱動脈を分枝したあとは、内腔が閉鎖した線維索となる。これを臍動脈索という。臍動脈索は骨盤腔の側壁を前進して、膀胱の外側を通って前腹壁に入り、ここから臍に向けて前腹壁の内面をおおう壁側腹膜におおわれて上行するが、成人では臍まで達していないで、前腹壁の途中で途中で消失することが多い。)
- 634_12【Urinary bladder; Bladder膀胱 Vesica urinaria】 Organ located beneath the peritoneum in the lesser pelvis posterior to the pubic symphysis. Its size varies depending on fullness, with the urge to evacuate the bladder occurring at about 350 ml. Even at maximum distension it remains below the level of the navel.
→(膀胱は腎臓で産生され尿管によって送られる尿を約350~500mlまたはそれ以上を一時的に貯える。平滑筋よりなり弾性に富む尿の貯留器官。膀胱は骨盤腔のもっとも前部にあり、恥骨の後ろに位置する。軽度に充満する時には、四面体を呈し、頂にあたるところを膀胱尖といい、錐体の底部にあたるところを膀胱底と呼ぶ。尖と底との間を膀胱体と呼ぶ。)
- 634_13【Arch of aorta; Aortic arch大動脈弓 Arcus aortae】 It is located between the ascending and descending aorta. Its roof extends to the first rib at the left border of the sternum.
→(大動脈弓は上行大動脈につづく弯曲部であり(約5~6cm長)、肺動脈分岐部および左気管支をこえて左後方にまわり、第四胸椎体の左側で胸大動脈に移行する。)
Botallo's duct, ligamnet; Harvey's ligament
- 634_14Botallo's duct, ligamnet; Harvey's ligament【Ductus arteriosus動脈管 Ductus arteriosus】
→(ボタロ管ともよばれる。動脈間索は胎生期の動脈管。左第6鰓弓から形成され、生後は動脈管索となる。左第6鰓弓動脈が気管支肺芽に沿って肺原基に入る枝をわけた後の遠位部が、左背側大動脈に合流するまでの部分。動脈幹が上行大動脈と肺動脈管に分離した後も、この部は肺循環と体循環との間の短絡路として働き、肺呼吸のない胎児での循環路の特色の一つである。出生後、肺循環の開始に伴い、血流が減少し、ついには閉鎖して、のちに動脈管索を残す。イタリアの内科医Leonard botallo [Botallus] (1530- ?)によって詳細に報告された。彼はファロピウスのもとで医学を学び、シャルル9世(16世紀、仏)のイタリア人侍医となったというが、没年などは不明である。)
- 634_15【Left pulmonary artery左肺動脈;左枝(肺動脈の) Arteria pulmonalis sinistra; Ramus sinister】 Artery lying in front of the descending aorta. On radiographs it appears as a 「pulmonary arch」 below the 「aortic arch.」
→(左肺動脈は肺動脈幹の2分枝のうち短い方の枝で、心外膜を貫いて左肺門にはいる。多数の枝を出して気管支区や気管支下区に分布するが個人差は大である。典型的には上葉動脈の枝として肺尖動脈(A1)、前区動脈、後区動脈(後2者は上行枝・下行枝を出す)、肺舌動脈の枝として上舌動脈・下舌動脈、下葉動脈の枝として下葉上動脈(A6)と肺底区の枝(前肺底動脈、後肺底動脈、外側肺底動脈、内側肺底動脈)を出す。)
- 634_16【Pulmonary trunk; Pulmonary artery肺動脈幹;肺動脈 Truncus pulmonalis; Arteria pulmonarlis】 Arterial trunk that ascends in the pericardium. It divides into the right and left pulmonary arteries at the level of the reflection of the serous pericardium.
→(肺動脈幹は右心房と左右肺動脈の起始までの間で分岐前の肺動脈を明確にするために導入された。肺動脈幹は左の第3肋骨の胸骨付近の高さで右心部動脈円錐から起こる。長さは約5cmで心膜腔を通り、やや左側に向かい、頭背側で肺動脈幹のT字形の分岐となり、2本の肺動脈に分岐する。肺動脈幹の両側を2本の冠状動脈が走る。肺動脈幹の起始部は大動脈口の前左側に、中間部は上行大動脈の左側に、分岐部は大動脈弓の凹部に位置する。)
- 634_17【Left ventricle左心室 Ventriculus sinister】
→(左心室は心臓の左下部を占め、後上方にある左房室口で左心房と交通し、右上隅にある大動脈口によって大動脈につらなる。左心室の壁は右心室に比べ2~3倍厚い。心室中隔は、右心室に向かって膨隆しているので、心室を横断面でみると、左心室の内腔は円いのに対して、右心室の内腔は半月状である)
- 634_18【Inferior vena cava下大静脈 Vena cava inferior; Vena cava caudalis】 It arises at the union of the right and left common iliac veins, lies on the right side of the aorta, and opens into the right atrium of the heart.
→(下大静脈は下肢および骨盤と腹部の器官の大部分から血液を受ける本幹で、第5腰椎体の右側で左右の総腸骨静脈の合流として始まり、このあと脊柱に沿って大動脈の右側を上行、肝臓の後面をこれに接して通過し、第八胸椎の高さで横隔膜の大静脈孔を貫いて胸腔に入り、ただちに右心房にそそぐ。下大静脈に流入する枝には総腸骨静脈、下横隔静脈、第3・第4腰静脈、肝静脈、腎静脈、右副腎静脈、右精巣静脈、右卵巣静脈、蔓状静脈叢などがある)
- 634_19【Abdominal aorta腹大動脈;大動脈腹部 Pars abdominalis aortae; Aorta abdominalis】 Segment of the aorta extending from the aortic hiatus of the diaphragm to its bifurcation at the fourth lumbar vertebral body.
→(腹大動脈は下行大動脈の腹腔内にある部分で、胸大動脈のつづきとして横隔膜大動脈裂孔にはじまり、脊柱前面を下行したあと、第4腰椎の高さで左右の総腸骨動脈を分岐して、細い正中仙骨動脈に移行する。胸大動脈とは反対に臓側枝が豊富でかつ協力である。)
- 634_20【Common iliac artery総腸骨動脈 Arteria iliaca communis】 It extends from the aortic bifurcation at the fourth lumbar vertebra to its division into the internal and external iliac arteries in front of the sacroiliac joint. Its branches are insignificant.
→(総腸骨動脈は腹部大動脈の第四腰椎の前で大動脈から分かれる左右1対の終枝。仙骨岬角のレベルにおける仙腸関節の前で、内・外腸骨動脈に分枝する。とくに記載するほどの枝はない。)
- 634_21【Common iliac vein総腸骨静脈 Vena iliaca communis】 Venous trunk extending from the sacroiliac joint to the fourth lumbar vertebra. It unites with the common iliac vein from the opposite side to form the inferior vena cava.
→(総腸骨静脈は左右とも仙腸関節の前面で内および外腸骨静脈の合流によって生じ、第5腰椎体の前面を大動脈の右側に向かって上行し、ここで左右が合して下大静脈となる。右総腸骨静脈は同名動脈の後外側をほぼ垂直に上行するが、左総腸骨静脈は長さが長く、また走行も斜めで、はじめ総腸骨動脈の内ドクにあり、次いで右総腸骨動脈の背側を通って右側とする。)
- 634_22【External iliac artery外腸骨動脈 Arteria iliaca externa】 Second branch of the common iliac artery, which continues as the femoral artery.
→(外腸骨動脈は総腸骨動脈からつづいて、仙腸関節の前面で内腸骨動脈とわかれたあと、大腰筋の内側縁に沿って下行し、鼡径靱帯のほぼ中央でその下を通過して大腿前面出て、大腿動脈に移行する。内腸骨動脈から分かれて、鼡径靱帯の下を通過するまでの部分を指す。)
- 634_23【Internal iliac artery; Hypogstric artery内腸骨動脈;下腹動脈 Arteria iliaca interna】 Artery beginning at the division of the common iliac artery, passing from here into the lesser pelvis and extending to the upper border of the greater sciatic foramen. Its branches are highly variable.
→(内腸骨動脈は総腸骨動脈より起こり、腸腰動脈、外側仙骨動脈、閉鎖動脈、上臀動脈、下臀動脈、臍動脈、上膀胱動脈、下膀胱動脈、中直腸動脈、内陰部動脈に分岐する。)