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- 661_00【Muscles of tongue舌筋 Musculi linguae】
→(舌筋はすべて横紋筋であって外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、茎突舌筋)、内舌筋(上縦舌筋、下縦舌筋、横舌筋、垂直舌筋)があるが、その舌内にある部分はいずれも、他の筋と異なって多数の脂肪細胞を含む疎性組織により多くの小束に分かたれ、そのために下は軟らかくかつ自由に動きうる。舌筋の作用はオトガイ舌筋のおもな作用は舌を前方に突出させ、また舌の中央部を舌に引く。舌骨舌筋および茎突舌筋のおもな作用は舌を後に引き込ますが、同時に舌骨舌筋は舌の側縁を舌に引き、茎突舌筋は舌背を高める。またこの3筋が一側だけ動けば舌を外側に曲げる。上下の縦舌筋は舌を短縮させ、横舌筋は狭くすると同時に延長させる。垂直舌筋は舌を平らにする。舌筋は舌根ではやや複雑な走向ををとるが、全体としてはほぼたがいに直行する三つの系列にわけられ、それぞれ前後(上縦舌筋、下縦舌筋、茎突舌筋、舌骨舌筋など)、左右(横舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋の一部、上咽頭収縮筋舌咽頭部など)、上下(垂直舌筋、オトガイ舌筋、小角舌筋、舌骨舌筋の一部など)に走る。前後に縦走する系列は比較的舌の表面近くを走り、全体としては他の系列を外からかこむような傾向で配列する。)
- 661_00a【Tongue舌;シタ Lingua】
→(舌は筋がよく発達した器官で、舌の前方の大部分は舌体、舌の前端部を舌尖、舌の後部を舌根という。また舌の上面を舌背といい、その正中線に舌正中溝があり、舌体と舌根との境界にはV字形の分界溝がある。分界溝の中央には舌背孔とよばれる陥凹があり、これは胎生期に、ここから甲状腺の原基が陥入したため、甲状腺と連なっていた甲状舌管のなごりである。舌の外側縁を舌縁といい、舌の下面正中線には口腔粘膜との間に舌小帯とよばれる粘膜ヒダがあり、舌の下面で、舌根両側から舌尖に向かう軟らかい鋸状の釆状ヒダとよばれる粘膜ヒダがる。舌の表面は舌粘膜でおおわれ、その深層にある舌筋と固く結合している。舌体の粘膜は舌乳頭とよばれる乳頭が非常に発達しており、舌乳頭は糸状乳頭、円錐乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭に区別されている。舌根には舌乳頭がなく、多数の舌小胞とよばれる小丘状の高まりがみられる。舌小胞はリンパ小節の集団によって構成されており、これらの舌小胞を総称して舌扁桃とよばれている。舌体では舌粘膜が強靭な舌腱膜とよばれる密な結合組織で粘膜下の筋と固く結合しており、舌の正中面では舌腱膜に連続して密な結合組織が中隔をなしており、これを舌中隔とよんでいる。味覚器官をもち、咀嚼、燕下、および構音を助ける。)
- 661_01【Palatoglossus muscle口蓋舌筋;舌口蓋筋 Musculus palatoglossus; Musculus glossopalatinus】
→(口蓋舌筋は横舌筋の線維束に継続して前口蓋弓に入って、口蓋腱膜に至る。)
- 661_02【Superior constrictor muscle; Superior pharyngeal constrictor muscle上咽頭収縮筋;頭咽頭筋 Musculus constrictor pharyngis superior; Musculus cephalopharyngicus】 Superior constrictor muscle that consists of the following four parts, which insert on the pharyngeal raphe. I: Pharyngeal plexus.
→(上咽頭収縮筋には正中の方へわずかに上行する線維束があり、その起始する部位によってさらに細かく区分される(翼突咽頭部、頬咽頭部、顎咽頭部、舌咽頭部)。)
- 661_03【Styloglossus muscle茎突舌筋 Musculus styloglossus】 o: Styloid process, i: Radiates from posterosuperior into the lateral part of the tongue and merges with the hyoglossus. It draws the tongue backward and upward. I: Hypoglossal nerve.
→(茎突舌筋は外舌筋の1つ。茎状突起(および茎突下顎靱帯)から放射して口蓋咽頭弓のレベルで舌に至る。茎突舌筋の線維の主部は舌縁で舌尖に向かって走り(筋の縦索)、個々の線維束は内側へ曲がり、横舌筋(内舌筋)の線維に付着する。)
- 661_04【Stylopharyngeus muscle茎突咽頭筋 Musculus stylopharyngeus】 o: Styioid process, i: It extends medially between the superior and middle constrictor muscles and reaches the wall of the pharynx, thyroid cartilage, and epiglottis. I: Glossopharyngeal nerve.
→(茎突咽頭筋は茎状突起の頭蓋底近くから起こり、上および中咽頭収縮筋の間を通って筋の内面に至り、口蓋咽頭筋の線維束とともに甲状軟骨に停止する。一部は咽頭蓋の粘膜下に終わる。)
- 661_05【Glossopharyngeal part of superior constrictor; Glossopharyngeal part of Superior pharyngeal constrictor muscle; Glossopharyngeal muscle舌咽頭部(上咽頭収縮筋の);舌咽頭筋 Pars glossopharyngea (Musculus constrictoris pharyngis superioris); Musculus glossopharyngeus】 o:Intrinsic muscles of tongue.
→(上咽頭収縮筋の舌咽頭部は舌内の筋群から起こり咽頭縫線につく。)
- 661_06【Chondropharygeal part of middle constrictor小角咽頭部(中咽頭収縮筋の);小角咽頭筋 Pars chondropharyngea (Musculus constrictoris pharyngis medii); Musculus chondropharyngeus】 o:Lesser horn of hyoid bone.
→(中咽頭収縮筋の小角咽頭部は舌骨小角から起こり咽頭放線につく。)
- 661_07【Ceratopharyngeal part of middle constrictor大角咽頭部(中咽頭収縮筋の);大角咽頭筋 Pars ceratopharyngea (Musculus constrictoris pharyngis medii); Musculus ceratopharyngeus】 o:Greater horn of hyoid bone.
→(中咽頭収縮筋の大角咽頭部は舌骨大角から起こり咽頭放線につく。)
- 661_08【Greater horn of hyoid bone大角(舌骨の) Cornu majus (Ossis hyoidei)】 Larger horn on the hyoid bone.
→(大角は舌骨体の外側端から後上方に延びて細くなるが、その尖端はやや肥厚する(その基部には茎突舌骨靱帯がつく)。)
- 661_09【Hyoglossus muscle舌骨舌筋 Musculus hyoglossus】 o: Body of hyoid bone and greater horn of hyoid bone, i: It attaches from inferior to the lateral parts of the tongue and extends anteriorly to the lingual aponeurosis. It draws the postsulcal part of tongue posteriorly and inferiorly. I: Hypoglossal nerve.
→(舌骨舌筋は長方形筋板として舌骨大角、ならびに舌骨体小部、および舌腱膜の外側縁の間に広がる。舌骨舌筋は下縦舌筋(内舌筋)および(存在する場合は)小角舌筋によってオトガイ舌筋から隔てられる。外側では、舌骨舌筋は顎舌骨筋、顎二腹筋及び茎突舌骨筋によって被われている。)
- 661_10【Inferior longitudinal muscle of tongue下縦舌筋;深縦舌筋 Musculus longitudinalis inferior; Musculus longitudinalis profundus】 Longitudinally arranged muscle fibers near the inferior surface of the tongue. They pass from the posterior part of tongue to its tip. I: Hypoglossal nerve.
→(有対の縦舌筋は外側を走る舌下神経と、内側の顎舌骨筋との間の舌の下面近くにあり、舌尖のほうへ茎突舌筋により被われる。)
- 661_11【Genioglossus muscleオトガイ舌筋 Musculus genioglossus】 o: Mental spine of mandible, i: Fanlike insertion on the lingual aponeurosis from the tip of tongue to the posterior part of tongue. It draws the tongue anteriorly, i.e., toward the chin. I: Hypoglossal nerve.
→(オトガイ舌筋は、下顎骨のオトガイ棘におけるその起始から舌の筋体の中へ扇状に広がり、舌筋膜に付着する。オトガイ舌筋はオトガイ舌骨筋の上に存在し、対側の同名筋から舌中隔によって内側で隔てられる。オトガイ舌筋は舌骨舌筋によって外側から被われる。)
- 661_12【Mandible下顎骨 Mandibula】
→(下顎を形成する。下顎を支え、頭蓋と顎関節をつくる骨で、水平な馬蹄形の部(下顎体)と、その後端から上方に向かう部(下顎枝)に分けられる。本来有対の骨として生じ、生後1年目で下顎底の前端で癒合して一つの骨となる。下顎体の上縁は歯槽部で、下縁は下顎底という。歯槽部には各側8本の歯をいれる八つのへこみ(歯槽)があり、全体として歯槽弓をつくる。各歯槽を境する骨壁を槽間中隔といい、大臼歯の歯槽はさらにその歯根の間を隔てる低い根管中隔で分けられている。体の正中線上前面で左右の骨が癒合した部分は高まり、その下縁は三角形をなして突出(オトガイ隆起)し、ヒトの特徴であるオトガイをつくる。その外側、下縁に接する小突出部をオトガイ結節という。外面ではオトガイ結節から斜線が下顎枝の前縁に向かう。また第2小臼歯の下方にオトガイ孔がある。下顎体の内面には前方正中部に四つの隆起からなるオトガイ棘があり、上二つはオトガイ舌筋、下二つはオトガイ舌骨筋がつく。その下外側で下縁に切歯て卵形のへこみ(二腹筋窩)がある。そこから斜めに下顎枝の前縁に向かう線(顎舌骨筋線)があり、左右のこの線の間をはる顎舌骨筋が口底をつくる。この線の上前はへこみ(舌下腺窩)、またこの線の下方、第2~3大臼歯の所もへこむ(顎下線窩)。下顎底が下顎枝にうつる所は下顎角といわれ、小児で鈍角であるが成長とともに直角に近づく。下顎枝の上縁は深い切れ込み(下顎切痕)によって二つの突起に分かれ、前のもの(筋突起)には側頭筋がつき、後のもの(関節突起)の先に横楕円形の下顎頭があて、側頭骨鱗部にある関節窩と顎関節を作る。下顎頭の下はすこしくびれ(下顎頚)、その前面に外側翼突筋のつく翼突筋窩がある。下顎枝外面は平らで下顎角に近く咬筋のつく咬筋粗面、内面には内側翼突筋のつく翼突筋粗面がある。下顎枝内面中央には下顎孔があり、その前縁は上内方に尖り(下顎小舌)口腔から触れるので、下歯槽神経の伝達麻酔の際、針をさす指標となる。下顎孔の後下から溝(顎舌骨筋神経溝)が出て前下方に斜めに向かう、この上の高まりが顎舌骨筋線である。下顎管は下顎孔からはじまり下顎体の中央で二分し、外側管はオトガイ孔で外側にひらき、内側管は切歯のそばに終わるが、その経過中に各歯槽に向かって小管を出している。有顎魚の下顎を支配する骨格は本来下顎軟骨(Meckel軟骨)で、上顎を支配する支持する軟骨は(口蓋方形軟骨)と顎関節をつくる。ともに鰓弓軟骨の変化したものである。硬骨魚類では下顎軟骨のまわりに若干の皮骨が生じて下顎を支え、そのうち前外面にあり、顎縁の歯をつけた大きい歯を歯骨という。顎関節は下顎軟骨と口蓋方形軟骨それぞれの後部の化骨物(関節骨と方骨)の間につくられる。両棲類、爬虫類も同じ状態であるが、哺乳類では歯骨のみが大きくなって下顎骨となり、顎関節は歯骨と燐骨(側頭骨鱗部に相当する骨)の間に新生されたものである。そして関節骨と方骨はツチ骨、キヌタ骨になっている。多くの哺乳動物では下顎骨は生体でも対をなした状態にとどまっている。Mandibulaはmandere(噛む)という動詞に由来し、語尾のbulaは「道具」を意味する接尾辞である。下顎骨にはすべての咀嚼筋が付。)
- 661_13【Chondroglossus; Chondroglossus muscle小角舌筋 Musculus chondroglossus】 Inconstant structure. o:Lesser horn of hyoid bone, i: See hyoglossus. I: Hypoglossal nerve.
→(小角舌筋はいろいろな形をした繊細な筋であり、舌骨小角から舌腱膜へ走る。小角舌筋はオトガイ舌筋の上に存在し、舌骨舌筋によって被われる。)
- 661_14【Body of hyoid bone舌骨体;体 Corpus (Ossis hyoidei)】 Anterior segment between the right and left lesser horns.
→(舌骨体は長楕円扁平の骨板で、上縁は鋭く、下縁はやや厚い。前面はややふくれた粗面で舌骨上筋および舌骨下筋群の数個の筋が着く面となる。後面は滑らかでややくぼむ。)
- 661_15【Lesser horn of hyoid bone小角(舌骨の) Cornu minus (Ossis hyoidei)】 Small horn on the hyoid bone.
→(舌骨の小角は短小の錐体状で、舌骨体と大角との結合部から後上方に出で、小角の尖端は茎突舌骨靱帯によって側頭骨上の茎状突起と連結する。)