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- 683_00【Pharynx咽頭 Pharynx】 Airway and food passageway; 1416 cm long. It extends from the vault of pharynx to the beginning of the esophagus in front of the sixth cervical vertebra.
→( 咽頭は上端で咽頭円蓋となりその前方で後鼻孔を介して鼻腔に、その直下で口峡を介して口腔につながる。下方は第6~7頚椎、または輪状軟骨下端の高さで食道に移行し、途中、第二頚椎の高さで咽頭前壁に喉頭口が開口する。したがって、咽頭は呼吸器系と消化器系が交叉している。前後にやや扁平な管で、肝の内腔が咽頭腔である。咽頭の後壁は単純であるが、前・側壁は発生時に鰓弓と関連が深く、生体での構造が複雑となる。咽頭を上から下へ、鼻部・後部・後頭部の三つに分ける。鼻部は鼻腔につづき、燕下時に軟口蓋が挙上すると、消化管から遮断される。したがって鼻部は気道に属するとみなされることが多い。後部は口峡を経て口腔につづき、軟口蓋と舌根とが前方上下に位置する。後頭部は前壁に後頭の後壁となる。咽頭の下端は食道に連続する。鼻部には耳管が開き、その開口部を耳管咽頭口という。この周囲では咽頭壁にかなり凹凸がみられる。耳管隆起は耳管軟骨により、挙筋隆起は口蓋帆挙筋により生ずる。耳管咽頭ヒダは耳管咽頭筋の足行き一致する。耳管隆起の後方のくぼみは咽頭陥凹とよばれる。鼻部の天井は頭蓋底直下にあたり、この部分を咽頭円蓋という。喉頭部では、舌根の後下方に喉頭蓋が突き出す後頭口の両側、すなわち後頭の側壁と咽頭の側壁の井田は梨状陥凹とよばれる。ここは燕下時に食物の通路となる。この部に上喉頭神経・動脈による後頭神経ヒダを認める。咽頭壁は、最上部では前方鼻腔へ通じる部分を除き、頭蓋底に付着する。頭蓋底近くでは、咽頭壁は筋層を欠き、結合織性の壁となす。これを咽頭頭底板という。咽頭の粘膜上皮、他では重層扁平上皮である。咽頭線は粘膜全体に分布する。)
- 683_01【Superior constrictor muscle; Superior pharyngeal constrictor muscle上咽頭収縮筋;頭咽頭筋 Musculus constrictor pharyngis superior; Musculus cephalopharyngicus】 Superior constrictor muscle that consists of the following four parts, which insert on the pharyngeal raphe. I: Pharyngeal plexus.
→(上咽頭収縮筋には正中の方へわずかに上行する線維束があり、その起始する部位によってさらに細かく区分される(翼突咽頭部、頬咽頭部、顎咽頭部、舌咽頭部)。)
- 683_02【Middle constrictor muscle of pharynx; Middle pharyngeal constrictor muscle; Medial constrictor muscle of pharynx中咽頭収縮筋;舌骨咽頭筋 Musculus constrictor pharyngis medius; Musculus hyopharyngicus】 o:Hyoid bone, i: Pharyngeal raphe. I: Pharyngeal plexus.
→(中咽頭収縮筋は上咽頭収縮筋の下部をおおっている。その小角咽頭部は舌骨から、大角咽頭部は舌骨の大角から起こり咽頭放線につく。)
- 683_03【Inferior constrictor muscle of pharynx; Inferior pharyngeal constrictor muscle下咽頭収縮筋;喉頭咽頭筋 Musculus constrictor pharyngis inferior; Musculus laryngopharyngicus】 Lower constrictor muscle arising from the larynx. I: Pharyngeal plexus.
→(下咽頭収縮筋は線維の走行がもっとも急勾配な筋で、背側で中咽頭収縮筋をおおう。甲状咽頭部は甲状軟骨の外側面から、輪状咽頭部は輪状軟骨の外側面から起こり、非恒常的な線維束が第2気管軟骨から起こることがある。)
- 683_04【Pharyngeal raphe咽頭縫線 Raphe pharyngis】 Tendinous seam between the right and left pharyngeal muscles that is located posteriorly in the midline. It extends to the pharyngeal tubercle.
→(咽頭縫線は左右の咽頭筋の間の後正中線にある結合組織腺。)
- 683_05【Basilar part of occipital bone底部(後頭骨の) Pars basilaris (Os occipitale)】 The part that ascends from the foramen magnum to the spheno-occipital synchondrosis.
→(後頭骨の底部は大後頭孔前縁の前方にある長方形の板状部で、内頭蓋底と外頭蓋底の斜台の下半分を作る。両側縁は側頭骨の錐体と軟骨結合している。)
- 683_06【Petrous part of temporal bone岩様部;錐体乳突部;錐体;錐体部(側頭骨の) Pars petrosa; Pars petromastoidea (Ossis temporalis)】 The part of the temporal bone that contains the internal ear.
→(岩様部は外耳孔の後で下方に突出する乳様突起から頭頂切痕にかけての部を乳突部と、それを底として前内方に水平に突出する四角錐状の骨塊である錐体(狭義の岩様部ということもある)を含めて岩様部(錐体乳突部)と呼ぶ。これは軟骨性頭蓋底の耳嚢に由来する一塊の独立した骨として発生する。しかし、便宜上ここでは乳突部と錐体を分けて説明する。①乳突部の外側面は筋の付着による粗面を有し、外耳孔の後方で下方へ延長した部分を乳様突起といい、胸鎖乳突筋の着くところである。乳様突起の後内側には乳突切痕があり、ここに顎二腹筋後腹が起こり、さらにその内側に後頭動脈溝が認められている。乳突部の内側面には深くて長い陥凹があり、ここにS状洞溝が走り、上方では後頭骨の横洞溝に、下方は頚静脈孔につづく。後縁にある乳突孔は乳突導出静脈を通し、S状洞溝に開く。乳突部の後部は後頭鱗と結合する部分で後頭縁という。顔面神経管は顔面神経の通路で内耳道底の顔面神経野より骨内に入り、蝸牛の外側に沿って、ほとんど水平位で前外方へ進む。次いでほぼ直角をなして後外方へまがり、ここで顔面神経管膝を形成する。その後、鼓室壁の前庭窓の上部すなわち鼓室と骨半規管の間を走行し、外後方に進んだ後、弓状をなして下行し、茎乳突孔に開口する。鼓索神経小管は鼓索神経の通路で茎乳突孔の少し上方で顔面神経管から分かれて前上方へ延び、鼓室溝の後縁に極めて近いところで鼓室に開口する。次いで鼓室の外側壁の粘膜におおわれながら、ツチ骨柄とキヌタ骨長脚との間を前進し、鼓室の前上方を貫通し、錐体鼓室裂を経て、頭蓋外面に出る。②側頭骨の錐体は蝶形骨と後頭骨との間で後外側から前内側に向かい斜位に介在する四角錐体形の骨で、最も堅い骨として知られている。前、後、下の3面および上、前、後の3縁に大別される。先端部を錐体尖といい、蝶形骨体、大翼、および後頭骨底部との間に破裂孔を形成する。破裂孔は骨化せず頭底線維軟骨で満たされており、ここを大・深錐体神経が貫通する。錐体線に頚動脈管の内攻が開口する。すいたの下面に導管の外口が開口し、外口の後上壁から2本の頚鼓小管が入り鼓室に開く。錐体の前縁は蝶形骨大翼との間に蝶錐体裂をなす。前面は大脳面ともよばれ、外側溝半には内耳前半器管によって生じた弓状隆起があり、また弓状隆起と錐体鱗裂との間には鼓室の上壁をなす鼓室蓋がある。錐体戦地角には三叉神経圧痕という小さな窩がある。その後外方に錐体の長軸とほぼ平行に走る2本の溝があり、内側の溝を大錐体神経溝といい、その後端は大錐体神経溝といい、その後端は大錐体神経管裂孔より骨内に入り顔面神経管につづく。また外側の溝は小錐体神経溝といい、その後端は小錐体神経管裂孔より骨内に入り、鼓室を経由して鼓室小管につづく。上縁は前面と後面との境界をなし、境界部の稜に上錐体洞溝がある。後面は小脳面ともよばれ、この面のほぼ中央に内耳孔があり、これは内耳道につづき、さらにつづいて内耳道底となる。内耳孔の上外後方に浅い弓下窩の下外後方に前庭水管の開口である前庭水管外口がある。後縁の前内側部は後頭骨底部に接し、錐体後頭裂をなし、ここに下錐体洞溝がある。その後内側部に頚静脈切痕があり、後頭骨外側部の同名溝と合して頚静脈孔をつくる。この切痕内に出る頚静脈孔内突起はは、後頭骨の同名突起と相対して頚静脈孔を小さい前部と大きい後部とに分ける。下面の前縁鱗部に接するところ、すなわち錐体鱗裂の前内側端に筋耳管管の開口があり、この管は筋耳管管中隔により上部の鼓膜張筋半管と下部の耳管半管に二分されている。また下面の後外側部には大きい弓状の頚静脈窩があり、その直前にある頚動脈管外口との間にはきわめて小さい錐体小窩があり、その底に鼓室小管が開口する。またこの窩の後内方に蝸牛小管の外口が認められる。頚静脈窩の外壁には乳突小管があり、これは骨内で顔面神経管の下端部と交差し、鼓室乳突裂に開く。頚静脈窩の外側で下面の後外側端より細長い茎状突起が出るが、その突起の基部直前に顔面神経管の開口である茎乳突孔がある。この孔の少し上方で鼓索神経小管が顔面神経管から分かれて鼓室の後壁より鼓室の前上隅を貫いて錐体鼓室裂より外頭蓋底出る。なおすいた鼓室裂と既述の錐体鱗裂とを合わせて鼓室鱗裂という。)
- 683_07【Styloid process of temporal bone茎状突起(側頭骨の) Processus styloideus (Ossis temporale)】 Long bony process in front of the stylomastoid foramen. It is a relic of the hyoid arch.
→(茎状突起は錐体下面の後外側端から前下方へ向かう細長い突起である。その長さは1~5cmで、茎突下顎靱帯、茎突舌骨靱帯、茎突喉頭筋などの起点となる。茎状突起の根部の前面は茎状突起鞘で被われる。なお、茎状突起は舌骨と関係ある第2鰓弓軟骨の一部が骨化したも野である。)
- 683_08【Stylopharyngeus muscle茎突咽頭筋 Musculus stylopharyngeus】 o: Styioid process, i: It extends medially between the superior and middle constrictor muscles and reaches the wall of the pharynx, thyroid cartilage, and epiglottis. I: Glossopharyngeal nerve.
→(茎突咽頭筋は茎状突起の頭蓋底近くから起こり、上および中咽頭収縮筋の間を通って筋の内面に至り、口蓋咽頭筋の線維束とともに甲状軟骨に停止する。一部は咽頭蓋の粘膜下に終わる。)
- 683_09【Muscular layer of oesophagus筋層(食道の);食道筋 Tunica muscularis oesophageae】 Double layer of muscle in the wall of the esophagus. In the upper one-third of the esophagus it consists of transverse striated muscle and in the lower one-third of smooth anular (inner) and longitudinal (outer) muscle.
→(食道の筋層は食道壁にある2層の筋層。上食道の上1/3の部分はほとんど骨格筋空なり、中間の1/3は骨格筋と平滑筋の両方、また下1/3は平滑筋線維のみからなる。内層は輪走(内輪筋層)、外層は縦走(外縦筋層)。食道の輪筋層は食道下端で特に発達しており、下部)
- 683_10【Pharyngobasilar fascia咽頭頭底板 Fascia pharyngobasilaris; Membrana pharyngobasilaris】 Uppermost, nonmuscular, membranous part of the pharynx. It attaches the wall of the pharynx to the base of the cranium. Corresponds to the submucosa
→(咽頭壁のうち筋のない最上部の結合組織壁。)
- 683_11【Digastricus muscle; *Digastric muscle顎二腹筋 Musculus digastricus; Musculus biventer mandibulae】 o:Mastoid notch, i: Digastric fossa. It has an intermediate tendon that acts on the lesser horn of the hyoid bone by means of a connective tissue sling. Raises the hyoid bone and opens the mouth.
→(顎二腹筋は舌骨の上方にある細長い筋で中間腱で前腹と後腹との2腹に分かれる。その後腹をもって側頭骨乳突切痕で起始し、斜め前・下方へ走る。舌骨付近で後腹は中間腱に移行し、この腱は二分した茎突舌骨筋によって挟まれ、かつ線維性滑車によって舌骨に固定される。前腹(顎舌骨筋からは皮膚側へ位置しているが)は中間腱から起始し、下顎骨内面で下顎下縁近くの二腹筋窩に停止する。顎二腹筋の前腹(下顎神経の枝である顎舌骨筋神経の支配)と後腹(顔面神経の支配)とは神経支配が異なることは注意を要する。下顎が固定されているときには、舌骨を引き上げる。舌骨が固定されているときは下顎骨を後下方に引く。両者は発生学的にも由来を異にし、前腹は顎舌骨筋・口蓋帆長筋などとともに咀嚼筋と同類(鰓弓のうち顎骨弓mandibular archに属する筋)であり、後腹は茎突舌骨筋・アブミ骨筋などとともに顔面表情筋と同類(鰓弓のうち舌骨弓hyoid archに属する筋)である。ちなみに、咀嚼筋は下顎神経で支配され、顔面表情筋は顔面神経支配である。このように発生学的な由来を知れば、色々な筋の支配を整然と整理することができる。)
- 683_12【Posterior belly of digastric muscle後腹(顎二腹筋の) Venter posterior; Venter mastoideus (Musculus digastricus)】 Portion of the digastric muscle that passes from the mastoid notch to the intermediate tendon. I: Nerve to mylohyoid.
→(顎二腹筋の後腹は乳様突起から中間腱までの部分)
- 683_13【Stylohyoid muscle茎突舌骨筋 Musculus stylohyoideus】 o: Styloid process, i: Body of hyoid bone near lesser horn. It accompanies the posterior belly of the digastric muscle and gives it passage through a perforation. It acts to draw the hyoid bone upward and backward during swallowing. I: Facial nerve.
→(茎突舌骨筋は側頭骨の茎状突起の基部後面から起始する。茎突舌骨筋の筋腹は二分して顎二腹筋の中間腱を挟みつける。茎突舌骨筋は舌骨体および大角に停止する。作用として舌骨を挙上する。顔面神経から支配を受ける。)
- 683_14【Medial pterygoid muscle内側翼突筋 Musculus pterygoideus medialis; Musculus pterygoideus internus】 o: Pterygoid fossa and the maxillary tuberosity. i: Pterygoid tuberosity on inner side of the angle of the mandible, passing obliquely downward and backward. Synergist of the temporal and masseter muscles. I: Mandibular nerve.
→(内側翼突筋は蝶形骨の翼突窩で起始して、下顎角内面に停止する。したがって、この筋は、下顎骨の外面側を走る咬筋浅部と同様な走行方向で下顎骨の内側面を走る。両筋は作用方向は同一であり、したがって協力筋である。)
- 683_15【Greater horn of hyoid bone大角(舌骨の) Cornu majus (Ossis hyoidei)】 Larger horn on the hyoid bone.
→(大角は舌骨体の外側端から後上方に延びて細くなるが、その尖端はやや肥厚する(その基部には茎突舌骨靱帯がつく)。)
- 683_16【Superior horn of thyroid cartilage上角(甲状軟骨の) Cornu superius (Cartilago thyroidea)】 Upper process projecting from the posterior margin of the thyroid cartilage, giving attachment to the thyrohyoid ligament.
→(甲状軟骨の上へ向かう突起。甲状舌骨靱帯がここにつく。 (Feneis))
- 683_17【Palatopharyngeus muscle; Palatopharyngeal muscle口蓋咽頭筋;咽頭口蓋筋 Musculus palatopharyngeus; Musculus pharyngopalatinus】 o: Arises from the palatine aponeurosis in two portions, between which the levator veli palatini inserts, and from the pterygoid hamulus. I: Glossopharyngeal nerve.
→(口蓋咽頭筋はもっとも強力な咽頭の挙筋である。口蓋腱膜と翼状突起から放射状に始まり、大部分は口蓋咽頭弓の中を通って咽頭収縮筋の内面を下っていく。線維の一部は甲状軟骨の後縁に停止するが、一部は咽頭縫線を越えて咽頭の下部で対側の筋と吊り紐を形成する。吊り紐が短縮すると咽頭の背側壁は袋状に持ち上げられる。上咽頭収縮筋の内腔面を走る口蓋咽頭筋の付加的な筋束がほぼ円弧状に咽頭の後壁に達する。)
- 683_18【Inferior horn of thyroid cartilage下角(甲状軟骨の) Cornu inferius cartilaginis thyroideae】 Lower process projecting from the posterior margin of the thyroid cartilage that articulates with the cricoid cartilage.
→(甲状軟骨後縁から下へ向かう突起。 (Feneis))