708_00【Liver肝臓 Hepar】 Organ located in the upper right side of the abdomen in the hypochondrium. Its inferior border runs from the upper left to the lower right through the epigastric region. In healthy subjects its border does not reach below the costal margin. It moves with respiration and is thus palpable. →(肝臓は身体内の最大の腺であり多様な機能を営むが、それを①胆汁の生産と分泌(腸管内へ)を行う、②炭水化物、脂肪、蛋白の代謝活動、③胃腸管から血液中に進入した最近や異物を細くする、とう3点に要約することができる。(1)位置と形状:肝臓は右上腹部ある巨大な消化腺で、重さは男で1,400g、女で1,200gほどある。色は暗赤褐色で、これは充満する血液によるものである。肝臓の表面が平滑で光沢に富むのは腹膜(の臓側葉)におおわれているからである。肝臓の上面は横隔膜の下面に接して丸く膨らみ、横隔面と呼ばれる。横隔膜上の心臓に対応して、浅い心圧痕をみる。からだの正中にほぼ相当して、横隔面を大きい右半と小さい左半に二分する肝鎌状間膜が走る。これは肝臓の表面を被う腹膜が左右から翻転しながら寄り合い、その間に線維性の結合組織をいれるもので、肝臓を横隔膜から吊り下げる役をしている。このようにして横隔膜と肝臓は平滑な腹膜で自由に滑り動くようになっているが、後部のせまい領域では、両者が線維性結合組織によって密着して活動性に欠ける。肝臓表面のこの領域を無漿膜野(裸の領域Area nuda--腹膜に包まれていない--の意)という。無漿膜野は前方へ細く張り出して肝鎌状間膜につづき、左右へ細く伸びて左三角間膜と右三角間膜になる。左三角間膜の端は、肝臓の左上端を横隔膜につなぐ索をなして線維付属(Appendix fibrosa hepatis)とよばれる。肝臓の上面と下面の境界は前方でうすくするどい縁をなし、下縁(または前縁)とよばれる。上腹部を斜め右下方へ走る一線をなし、触診することができる。これと右肋骨弓の交点に胆嚢の底が腹壁直下に頭を出している。下縁の正中部には肝円索切痕とよぶ切れこみがあって、肝鎌状間膜をはさんでいる。肝臓の下面は上腹部の内臓に面するので、臓側面とよばれる。ここには矢状方向に走る2条のくぼみと、それを横に結ぶくぼみがHの字をなしている。Hの左縦線は前方の半分が肝円索をいえる肝円索裂、後方の半分が静脈管索をいれる静脈管索裂である。Hの右の縦線には前方に、胆嚢の上面をおさめる胆嚢窩があり、後方に大静脈をおさめる大静脈溝がある。H字の横線に当たる溝は肝門で、門脈、固有肝動脈、肝管のほか多数のリンパ管と若干の神経が通っている。肝鎌状間膜、肝円索裂、静脈管索裂によって、肝臓は大きい右葉と小さい左葉に分けられる。肝臓の臓側面では、右葉(広義)が胆嚢窩、大静脈溝、肝門によって狭義の右葉、中央前方の方形葉、中央後方の尾状葉に分けられる。尾状葉は全科法へ乳頭突起を出し、前右方へ、肝門の後縁に沿って尾状突起を出す。乳頭突起に対峙して左葉から小綱隆起が張り出し、両者の間に小綱をはさむ。(2)肝臓の構築:肝臓の表面は大部分腹膜をかぶり、その下に線維性の結合組織がある。この結合組織は大血管とともに肝臓内に侵入し、血管周囲線維鞘をつくる。ギリソン鞘(Glisson's sheath)ともよばれる。肝臓の実質は径1mm前後の短六(ないし五)角柱の肝小葉を構造単位として成り立っているが、肝門からはいる肝固有動脈と門脈の枝はグリソン鞘を伴って、この肝小葉の稜線(三つの肝小葉の合するところ)に沿って走るこの動静脈を小葉間動・静脈とよぶ。肝小葉の角柱の中心を貫いて中心静脈という太い毛細血管が走り、その周囲に肝細胞の板が放射状に配列する。肝細胞板(hepatic cell plates)は分岐し、吻合し、あなをもち、すきまに洞様毛細血管(sinusoidal capillaries)をいれている。小葉間動静脈の枝は小葉の洞様毛細血管に注ぎ、中心静脈から、小葉下静脈(Vena sublobularis)とよばれる小静脈を経て下大静脈へと流れていく。肝細胞板の中に、肝細胞のあいだを縫って走る細管系が毛細胆管(bile capillary)であって、肝細胞の産生する胆汁を運ぶものである。毛細胆管は肝小葉のへりで小葉間胆管とよばれる小導管に注ぎ、グリソン鞘の中を合流しつつ肝門へ向かう。(3)肝臓と血管:肝臓は門脈の番人というべき器官である。すなわち消化管から送られてくる血液中に余分の糖分があればグリコゲンとして貯え、有害物質があれば分解、解毒する。脾臓から送られる破壊血液のヘモグロビンをビリルビンに変えて胆汁中に排泄する。門間区によって運ばれてくる膵臓のホルモンは、肝細胞でのグリコゲンの産生とブドウ糖への分解を調節する。しかし、門脈血は酸素に乏しい静脈血であるから、肝臓は動脈血を固有動脈にあおがねばならない。胎生期においては、臍から前腹壁を上行して肝臓の下面に達する臍静脈(Vena umbilicalis)が、肝門で門脈と合して、そのまま肝臓の下面を後方へ走り、下大静脈に注ぐ。細静脈と下大静脈のこの短絡路を静脈管またはアランチウス(Arantius)の管と称する。生後、胎生期の循環路は閉鎖し、結合組織索として残る。臍静脈の遺残が肝円索、静脈管の遺残が静脈管索である。 (解剖学事典 朝倉書店より引用) 肝臓の生理 肝臓は重要な機能を営む器官であり、肝臓を楔状すると12時間前後で低血糖で死亡するといわれている(動物実験では70%の肝切除でも数週で機能が正常になるといわれている)。)
708_01【Anterior part of diaphragmatic surface of liver前部(肝臓の横隔面の) Pars anterior faciei diaphragmaticae hepatis】 Anteriorly facing part of the diaphragmatic surface. →(肝臓の横隔面の前部は前方へ向く横隔面の部分。)
708_02【Right triangular ligament of liver右三角間膜;右外側肝間膜(肝臓の) Ligamentum triangulare dextrum hepatis】 Common margin of the hepatophrenic and hepatorenal ligaments. →(肝右葉と横隔膜の間の三角状腹膜ヒダ。肝冠状間膜の右端。 (Feneis))
708_04【Coronary ligament of liver肝冠状間膜;冠状間膜 Ligamentum coronarium hepatis】 Parietal peritoneal fold passing from the diaphragm to the visceral peritoneum of the liver at the border of the bare area. →(肝冠状間膜は肝臓の上面と後面とを被う腹膜は横隔膜の下面を被う腹膜に連なる。肝臓を被う腹膜が横隔膜を被う腹膜に移行するところが肝冠状間膜である。胎生期の肝臓では、冠状間膜は肝臓の上端部で冠のように冠状を呈するので、この名称を与えられた。)
708_05【Left triangular ligament of liver左三角間膜;左外側肝間膜(肝臓の) Ligamentum triangulare sinistrum hepatis】 Free margin of the left side of the coronary ligament. →(肝臓と横隔膜の間の三角状腹膜ヒダ。肝冠状間膜の左端。 (Feneis))
708_06【Fibrous appendix of liver線維付着;線維付属;肝線維付属(肝臓の) Appendix fibrosa hepatis】 Connective-tissue projection that is occasionally present on the upper end of the left lobe of liver. →(肝臓の線維付属は左葉の上端に時たまある結合組織性尖頭状付属。)
708_07【Left lobe of liver左葉(肝臓の) Lobus hepatis sinister; Lobus sinister (Hepar)】 Traditionally the part of the liver to the left of the attachment of the falciform ligament of liver on the diaphragm. →(その右境界は下大静脈と胆嚢底をむすぶ線に一致する。(Feneis))
708_08【Inferior border of liver; Inferior margin of liver下縁;前縁(肝臓の) Margo inferior hepatis; Margo ventralis; Margo anterior】 Border between the diaphragmatic and visceral surfaces of liver. →(肝臓の下縁は横隔面と臓側面の間の縁。右肋骨弓に沿って第9肋軟骨の尖端まで左方に上行し、ついで胸骨剣状突起の約2横指下方を横走し、左側の第5肋間に至る。)
708_09【Falciform ligament of liver肝鎌状間膜;鎌状間膜;前肝間膜 Ligamentum falciforme hepatis】 Peritoneal fold passing between the midline of the abdominal wall and the liver. →(肝鎌状間膜は横隔膜と前腹壁から肝表面にのびる腹膜の半月形ひだ。肝臓は発生学的に胃の遠位側で前腸の下部から腹側に向かって前(腹側)胃間膜内に生ずる。したがって、前(腹側)胃間膜は肝臓の腹側にある前(腹側)間膜mesohepaticum ventraleと肝臓の背側にある後(背側)肝間膜mesohepaticum dorsaleとに分かれる。前肝間膜は前腹壁と肝臓(前面と下面)との間で肝鎌状間膜となる。この間膜の下方の遊離縁内に臍静脈をいれる。この静脈は生後閉鎖して肝円索となる。後肝間膜は、肝臓と胃・十二指腸との間で小綱(肝胃間膜と肝十二指腸間膜)となる。)
708_10【Round ligament of liver肝円索;臍静脈索 Ligamentum teres hepatis; Chorda venae umbilicalis】 Connective tissue remains of the umbilical vein. →(肝円索は胎生期の臍静脈(胎盤から臍帯を通って肝臓に向かい、静脈管を経て下大静脈に注ぐ)の遺残である線維索で、臍から肝臓の下縁に至り、肝臓下面で肝門の左側(肝円索裂)を走る。肝円索とともに細い静脈(臍傍静脈vv.paraumbilicales)が走る。この小静脈は一方では門脈と、他方では臍輪を経て前腹壁の皮静脈と交通する。したがって、肝硬変や門脈閉塞で門脈循環が障害されると、側副路となる。)
708_11【Notch for ligamentum teres肝円索切痕;肝切痕;臍切痕 Incisura ligamenti teretis; Incisura hepatis; Incisura umbilicalis】 Notch in the inferior border of liver for the passage of the round ligament. →(肝円索切痕は下縁にある切痕で、肝円索が通る。)
708_12【Right lobe of liver右葉(肝臓の) Lobus hepatis dexter; Lobus dexter (Hepar)】 Traditionally the part of the liver to the right of the attachment of the falciform ligament on the diaphragm. →(肝臓の右葉は厚く大きく肝臓の約4/5を占める。左葉との境は下大静脈と胆嚢底をむすぶ線に一致する。)
708_13【Fundus of gallbladder胆嚢底 Fundus vesicae biliaris; Fundus vesicae felleae】 The body of gallbladder is attached to the liver. →(胆嚢底は下方に向いたまるい胆嚢端部。)
708_13a【Gallbladder胆嚢;タンノウ Vesica biliaris; Vesica fellea】 Pear-shaped organ measuring 8-12 cm in length. →(胆嚢はナスビの形のふくろ(長さ約9cm、太さ約4cm)で、胆汁を貯える。肝臓の下面の下面にあって、胆嚢窩に浅くはまりこんでいるので、肝臓の下面の被膜と共通の結合組織でおおわれ、下面と底は腹膜におおわれる。胆嚢の底はふくろの底の部分、体はふくらみの部分、頚は細くなった部分である。底が前方に向き、肝臓の下縁から少し前に突出している。頚がうしろ向き、胆嚢管につながる。胆嚢の内面には網状のひだが突出し、丈の高い単層円柱上皮でおおわれる。上皮細胞は粘液分泌を行う。よく発達した筋層がある。胆嚢管は長さ約3cmのやや迂曲する管で、内腔にらせん状に突出するひだがあり、らせんひだとよばれる。胆管と合流して総胆管となる。肝管を流れてくる胆汁は、通常、胆嚢管にはいって胆嚢に貯えられ、必要に応じて胆嚢管から総胆管を経て必要に応じて胆嚢管から総胆管を経て十二指腸に放出される。とくに食事が十二指腸に達すると、十二指腸壁から血中にコエシストキニンが放出され、このホルモンの左葉で胆嚢が収縮し、胆汁が排出される。)
708_14【Visceral surface of liver臓側面;内臓面;下面(肝臓の) Facies visceralis hepatis; Facies inferior】 Partly concave posteroinferior surface of the liver that faces the viscera. →(肝臓の臓側面は後下面で、いろいろの臓器に接するので、それに応じて浅い凹み(圧痕)がみられる。左側、すなわち左葉の下面には胃による胃圧痕、食道による食道圧痕がある。右側(右葉の下面)には、十二指腸・右結腸曲・右腎臓・副腎に接する十二指腸圧痕・結腸圧痕・腎圧痕・副腎圧痕がある。臓側面の中葉、すなわち右葉の左端部には、H状の溝がある。Hの横棒にあたる凹みは肝門で、肝臓に出入りする脈管(肝動脈・門脈・リンパ管)・神経・肝管が通るところである。Hの左脚にあたる縦溝は左葉と右葉との境界になる深い矢状裂で、前部は肝円索裂といわれ肝円索をいれ、後部は静脈間索裂で静脈間索をいれる。Hの右脚にあたる縦溝は浅い凹みで、前部は胆嚢窩で胆嚢をいれ、後部は下大静脈をいれる大静脈溝である。H状の溝で囲まれ、肝門の前方にある長方形の部は方形葉といわれ、胃の幽門と十二指腸の始部とに接する。肝門の後方にある部は小さく不規則形で、尾状葉といわれ、横隔膜・網嚢の上部に面する。尾状葉は前方に乳頭突起を出し、右前方には尾状突起を出して右葉に連なる。尾状葉は尾のような尾状突起をもつので、そのように名づけられた。)