801_03【Rectum直腸 Rectum; Intestinum rectum】 Tenia-free 15 cm long segment extending between the sigmoid colon and anus. →(直腸は消化管の末端部でS状結腸につづく大腸の一部である。結腸から直腸への移行はゆるやかで、仙骨中央部あたりがほぼ両者の境界となる。直腸は腸間膜を欠き、直腸ヒモを示さない部分である。直腸の下端は、骨盤隔膜を貫く寸前までで、それ以下は肛門管である。肛門管の直上部にあたる直腸窩部はふくらみ、ここを直腸膨大部という。膨大部上方には横走するヒダが2~3本認められ、直腸横ヒダといい、最も恒常的なものは右壁にあって、コールラウシュのヒダという。直腸ははじめ仙骨の曲がりに沿って前方に凹の間借りを示し、これを仙骨曲といい、下端近くでは前方に凸の曲がりを示し、これを会陰曲という。直腸壁の平滑筋の筋層のうち、重筋層と一部の輪筋層は周辺の臓器へとのび、直腸尾骨筋、直腸膀胱筋、直腸尿道筋などとよばれる筋束をなす。直腸が内容をいれて拡張すると、壁の伸展刺激は求心性神経線維によって仙髄に伝えられ、反射的に内容の排出、すなわち排便が起こる。このような排便中枢の中枢は仙髄(S2~4)にあり、肛門脊髄中枢anospinal centerといわれる。排便defecationのさいには、交感神経が抑制されるとともに、副交感神経の興奮が高まって、大腸の蠕動・収縮がおこり、内肛門括約筋は弛緩し、さらに陰部神経を介して外肛門括約筋も随意的に緩められる。そのほかに、腹壁の筋・横隔膜・骨盤隔膜を作る肛門挙筋の収縮によって腹圧が高められ排便を助ける。)
801_05【Urogenital triangle; Urogenital region尿生殖部;尿生殖三角;尿生殖器部 Regio urogenitalis; Trigonum urogenitale】 Region around the perineum that is located anterior to an imaginary line connecting the two ischial tuberosities. →(尿生殖三角は左右の坐骨結節をむすぶ線の前方部で泌尿器官を囲む周辺部部域。この領域の浅筋膜のうち脂肪層(キャンパー筋膜)は坐骨直腸窩内の脂肪層に接続するものであり、同時に大腿皮下の浅筋膜にも移行する。陰嚢では脂肪層が平滑筋層(肉様膜)で置き換えられている。肉様膜は寒冷刺激に応じて収縮し、陰嚢皮膚の表面積を減少させる。尿生殖三角線筋膜のうち線維層(コールス筋膜)は後方では尿生殖隔膜後縁に付着し、外側方では恥骨弓の辺縁に付着するほか、前方では前腹壁浅筋膜の線維層(スキャルパ筋膜)へと移行する。このような尿生殖三角浅筋膜の線維層は陰茎あるいは陰核の部位では管状の鞘構造をとり、また陰嚢あるいは大陰唇の部位では著明な1層をなす。浅会陰隙とは、下方を会陰線筋膜の線維層で境され、上方を尿生殖隔膜で境されるような隙間のことである。この隙間は後方では隙間の上壁と下壁がたがいに癒着する形で閉じられ、外側方でも隙間の上壁と下壁が恥骨弓辺縁部に付着する形で閉じられている。しかし浅会陰隙はその前方部で前腹壁浅筋膜と前腹壁筋の間の隙間と自由に交通する。)
801_06【Superior fascia of urogenital diaphragm上尿生殖隔膜筋膜;内尿生殖隔膜筋膜 Fascia diaphragmatis urogenitalis superior; Fascia diaphragmatis urogenitalis interna】 Obsolete term. Current scientific opinion holds that there is no complete boundary to the deep perineal space. →(深会陰横筋の坐骨直腸窩側にある筋膜。 (Feneis))
801_07【Sacrum [Sacral vertebrae I-V]仙骨;仙椎[1-5] Os sacrum [Vertebrae sacrales I-V]】 →(はじめ分離していた第一から第五までの仙椎は、成人すると癒合して一個の仙骨となり、骨盤の後壁を作る。仙骨では、元来仙椎に存在していた棘突起は正中仙骨稜となり、関節突起は中間仙骨稜となり、横突起は外側仙骨稜となる。さらに最外側部に外側部という部分があり、そこに肋骨遺残物が含まれている。なお本来各椎骨間に左右おのおの一個ずつであるべき椎間孔が、それぞれ前仙骨孔と後仙骨孔とに二分されるので、片側で8個の仙骨孔となり、それぞれ脊髄神経の前枝と後枝とを通過させるのも大きい特徴である。外側の耳状面は腸骨の耳状面と関節する。仙骨底(上方にあっても底という)の前方に強く突出した辺縁部を岬角という名称は側頭骨の中耳(鼓室)の内側壁にもあるから注意のこと。4本の横線は5個の仙椎の癒着部を示している。)
801_08【Sacrotuberous ligament; Sacrotuberal ligament仙結節靱帯 Ligamentum sacrotuberale; Ligamentum sacrotuberosum】 Strong band that extends from the sacrum and the ilium to the ischial tuberosity. →(仙結節靱帯は三角形をした強大な靱帯で、坐骨結節よりおこり、内上方に扇形に放散して、下後腸骨棘、仙骨下半部の外側縁、鼻骨につく。仙棘靱帯とともに、大坐骨切痕および小坐骨切痕をそれぞれ大坐骨孔、小坐骨孔にかえる。また後面は大臀筋の起始となる。しばしば下臀皮神経の枝によって貫かれる。この靱帯の深層で、これと仙棘靱帯との間を、陰部神経、内陰部動静脈が走る。)
801_09【Ischiococcygeus muscle; Coccygeus muscle; Coccygeal muscle坐骨尾骨筋;尾骨筋 Musculus ischiococcygeus; Musculus coccygeus】 Muscle fibers that fan out from the ischial spine to the lateral surfaces of the sacrum and coccyx. They are joined with the sacrospinal ligament. →(仙骨下端と尾骨を結ぶ筋で、ヒトでは退化的に(坐骨)棘尾骨筋に相当し、その浅(外)部が仙棘靱帯になり、深(内)部が尾骨筋に変化し、肛門挙筋とともに尾骨隔膜を形成する。前後の仙尾筋は、それぞれ腹側と背側の尾筋に相当する。後仙尾筋は固有背筋の最下部である。)
801_10【Rectococcygeus; Rectococcygeus muscle直腸尾骨筋 Musculus rectococcygeus】 Thin sheet of smooth-muscle cells that passes from the second-third coccygeal vertebrae to the rectum. →(第二~三尾骨から直腸へ張る薄い板状の平滑筋。(Feneis))
801_11【Levator ani muscle肛門挙筋 Musculus levator ani】 Principle muscle of the pelvic diaphragm. It is derived from the abdominal wall musculature and permeated by smooth-muscle cells. I: Sacral plexus, S2-S5. It consists of the following parts. →(肛門挙筋の丈夫な前部(恥骨尾骨筋)は分界線直下の恥骨の内面から起こり、薄い後部(腸骨尾骨筋)は腸骨から起こる。その起始腱は内閉鎖筋筋膜に接して移行し、閉鎖筋膜から発する腱束を受ける。これらの線維の起始部では腱性の係留物(肛門挙筋腱弓)により強化されている。左右両側で恥骨尾骨筋の内側線維束は挙筋脚を形成している。それらの線維束は背方と尾方、また直腸の前では外側を通り、それぞれ会陰の中心腱へ放散する薄い前直腸線維束や前立腺挙筋として前立腺筋膜(あるいは恥骨腟筋として腟壁)へと分かれる。それより鼻側にある肛門挙筋の線維束は恥骨直腸筋として直腸の背側を取り囲み、反対側の線維と共にループを形成する。恥骨尾骨筋の外側束は尾骨と仙骨の背側に広がる。腸骨尾骨筋の筋線維は尾骨と仙骨に付き、また肛門と尾骨の間では強靱な線維束である肛門尾骨靱帯に付いている。)
801_12【Iliococcygeus muscle; Iliococcygeal muscle腸骨尾骨筋 Musculus iliococcygeus】 Bundle of muscle fibers that mostly pass from the tendinous arch of the levator ani to the anococcygeal ligament and lateral wall of the coccyx. →(腸骨尾骨筋は坐骨棘と腱弓から起こり尾骨、肛門尾骨靱帯に終わる。退行的でときに結合組織性の膜となる。)
801_13【Ischial spine坐骨棘 Spina ischiadica】 Bony process between the greater and lesser sciatic notches. →(坐骨体の後縁の上部に、後内方に突出する三角形の坐骨棘がある。)
801_14【Obturator fascia閉鎖筋膜 Fascia obturatoria】 Stronger portion of parietal pelvic fascia covering the obturator internus. →(壁側骨盤筋膜の上部は内閉鎖筋の内面を被っている骨盤筋膜のとくに強い部分。)
801_15【Tendinous arch of levator ani muscle肛門挙筋腱弓;閉鎖筋膜腱弓 Arcus tendineus musculi levatoris ani; Arcus tendineus fasciae obturatoriae】 Tendinous arch of variable thickness formed by the obturator fascia at the origin of the levator ani. →(上骨盤隔膜筋膜は閉鎖筋膜と合する線において肛門挙筋腱弓をなして肛門挙筋の起点をつくり、また下骨盤隔膜筋膜と内外相応じて肛門挙筋と尾骨筋とを包み骨盤出口の大部分を閉ざすロート上の骨盤隔膜を形成する。)
801_16【Obturator canal閉鎖管 Canalis obturatorius】 Canal formed by the obturator groove of the pubis and the obturator membrane for the passage of the obturator vessels and the obturator nerve. →(閉鎖孔の上縁で、恥骨上肢の下面にある閉鎖溝と閉鎖膜の上縁によってつくられる管で、外上後方から内下前方に向かって走り、閉鎖動静脈・神経が通る。)
801_17【Pubococcygeus muscle; Pubococcygeal muscle恥骨尾骨筋 Musculus pubococcygeus】 o: Pubis, near the pubic symphysis, tendinous arch of levator ani. i: Perineal body, anus, anococcygeal ligament, coccyx. →(恥骨尾骨筋は恥骨および閉鎖筋膜より起こり、肛門管の両側を通って直腸後方で合流し、尾骨や前仙尾靱帯に付着する。)
801_18【Superior pubic ramus; Ramus of pubis恥骨上枝;寛骨臼部(恥骨枝の) Ramus superior ossis pubis; Pars acetabularis ramus ossis pubis】 The part of the pubis above the obturator foramen. →(恥骨上枝は、寛骨臼の前下部と、そこから前下方に伸びて恥骨体の上部につづく三角柱状の部分をいう。)
801_19【Pubic symphysis; Pubis symphysis; Symphysis pubis恥骨結合 Symphysis pubica; Symphysis ossium pubis】 Cartilaginous joint between the rami of the pubis. →(恥骨結合は骨盤前面で左右の恥骨が正中線上で向かい合ってできる連結。両側の恥骨結合面がうすい硝子軟骨に被われ、その間に線維軟骨でできる恥骨間円板が連結する。その構造は椎間円板の線維輪に似る。女性では妊娠時にこの結合は弱められ、またこのことは分娩時における新生児の頭の産道通過を助ける。モルモットなどでは、女性ホルモンの投与によって、実験的にこの結合を弱めることができる。付属する靱帯に次のものがある。(1)上恥骨靱帯:恥骨結合の上縁で左右の恥骨を結ぶ。(2)恥骨弓靱帯:恥骨結合の下縁で、左右の恥骨下枝を結び、恥骨弓をつくる。下面で尿生殖膜との間隙を陰茎静脈が通る。 Symphysisははsyn(一緒に)physis(生える)、すなわち「自然に癒合したもの」という意味である。解剖学用語としてのsymphysisは線維軟骨結合という一般名詞であるが、慣用的にはpubicaという形容詞なしでも恥骨結合を指すことが多い。正しい読み方はスィンフィスィスである。)