866
- 866_00【Brain stem脳幹 Truncus encephali】 Collective anatomical term for the rhombencephalon and mesencephalon. The clinical definition includes the basal ganglia, diencephalon, and portions of the 【rhinencephalon】.
→(TAで脳幹は髄脳(延髄)、橋、中脳を脳幹と定義している。かつては、脳を運ぶ際に脳幹をもって運んでいた、脳幹は、脳の柄のような部分という意味で付けられた。日本の神経解剖の教科書では間脳を含める場合や間脳と大脳核を含めて脳幹と称している場合が多いので注意をようする。)
- 866_01【Medullary striae of fourth ventricle第四脳室髄条;ピッコロミーニ氏髄条 Striae medullares ventriculi quarti】 Bundle of myelinated nerve fibers that passes from the arcuate nucleus to the cerebellum.
→(第四脳室髄条は後脳部と髄脳部の境界部の脳室底には数本の線維が正中溝を横切って横走する線維の束。下小脳脚まで追跡できる。髄条は、次の諸部分から起こる線維より成る複雑な線維束である。すなわち、①中隔核、②外側視索前野、③視床前核群である。海馬体および扁桃体複合核からの線維は中隔核に投射する。)
- 866_02【Medial vestibular nucleus in medulla oblongata前庭神経内側核;内側前庭神経核 Nucleus vestibularis medialis in medulla oblongata】 (Schwalbe's nucleus) Terminal nucleus located lateral to the sulcus limitans that receives afferents from the ampullary crests and the maculae of saccule and utricle. Its efferents travel bilaterally in the medial longitudinal fasciculus to nuclei of the extraocular muscles, Cajal's interstitial nucleus, and into the spinal cord.
→(前庭神経内側核は小型および中型細胞からなり、比較的線維が少ない。これは前庭神経核のうちで最も大きく、舌下神経核の吻側端の高さから外転神経核の高さまで伸び、上方は前庭神経上核と融合する。前庭神経内側核から起こり内側前庭神経核脊髄路を下行する神経線維は反対側の中心頚髄核にも終止する。)
- 866_03【Rootlets of vagus nerve根糸(迷走神経の) Fila radicularia (Nervus vagus)】
→()
- 866_04【Medullary reticular formation延髄網様体 Formatio reticularis; Substantia reticularis】
→(延髄網様体は系統発生的に脳幹の中で最も古い部分で、脳幹の中心の基質を形成している。菱脳蓋中、迷走神経核、前庭神経核および顔面神経核近くに位置する核。鰓弓および身体の筋肉の調節作用をおこなう。網様体は上方および下方につづいている。)
- 866_05【Gray reticular substance灰白網様質;灰白網様体 Substantia reticularis grisea; Formatio reticularis grisea】
→()
- 866_06【Median sulcus of fourth ventricle正中溝(第四脳室の);菱形窩内溝 Sulcus medianus ventriculi quarti; Sulcus medianus fossae rhomboideae】 Midline groove running through the rhomboid fossa.
→(第四脳室の正中溝は菱形窩の正中を通る溝。)
- 866_07【Medial longitudinal fasciculus; MLF内側縦束 Fasciculus longitudinalis medialis】 Bundle of various fiber systems that enter and leave at different levels. Its fibers interconnect the motor nuclei of cranial nerves and also connect the vestibular apparatus with ocular muscles, neck muscles, and the extrapyramidal system. This serves to coordinate muscle groups, e.g., masticatory, tongue, and pharyngeal muscles when swallowing or speaking; or ocular muscles for movements of the globe.
→(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、非交叉性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)
- 866_08【Nucleus ambiguus疑核 Nucleus ambiguus】 Nucleus of origin lying posterior to the inferior olive. It gives rise to the motor fibers of CN IX and X as well as the cranial portion of CN XI. It receives afferent projections mainly from the solitary nucleus and reticular formation.
→(疑核はオリーブの背側にある核。舌咽神経(IX)、迷走神経(X)および副神経(XI)延髄根の起始核。疑核は三叉神経脊髄路核と下オリーブ核群のほぼ中間で、網様体内にある細胞柱である。この核は毛帯交叉の高さより下オリーブ核群の吻側1/3部の高さまで広がり多極性のコリン作働性の下位運動ニューロンからなる。この核より出た線維は背側に弧を描き、迷走神経背側運動核からの遠心線維と一緒になり下オリーブ核群の背側の延髄外側面から外にでる。疑核の尾方部は副神経の延髄根をだし、吻側部は舌咽神経の特殊内臓遠心性線維をだす(茎突咽頭筋を支配する)。迷走神経の特殊内臓遠心性線維(迷走神経に結合する副神経延髄根からの線維を含めて)は咽頭と喉頭の筋を支配する。疑核の細胞はNissl染色標本では同定が困難であり、この細胞は線維を出し、副神経脊髄根の一部を構成する。疑核の細胞はコリン作働性であるので、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)により免疫細胞化学反応を行えば、容易に見ることができる。舌下神経核と迷走神経背側運動核の細胞もChAT免疫反応陽性である。)
- 866_09【Cerebello-olivary fibres小脳オリーブ核線維;小脳核下オリーブ核線維;小脳オリーブ路 Fibrae cerebelloolivares; Tractus cerebelloolivares】 Fibers connecting the dentate nucleus and inferior olive.
→(小脳オリーブ核線維は小脳諸核から起こり上小脳脚を通った後、交叉して対側に移り中心被蓋路に合流して下行する。起始に対応して主・副オリーブ核に終わる。すなわち前部・後部の核からの線維は背側・内側の副オリーブ核に、内側核からは内側副オリーブ核に外側核からは主オリーブ核に終わる。)
- 866_10【Raphe of medulla oblongata延髄縫線 Raphe medullae oblongatae】 Seamlike median line at the decussation of medial lemniscus.
→(延髄の縫線は毛帯交叉のなかの正中線。間に神経細胞体が分散している線維束の交叉が特徴。)
- 866_11【Lemniscal interolivary layer毛帯オリーブ間層;絨帯オリーブ間層 Stratum interolivare lemnisci】
→()
- 866_12【Arcuate nucleus of medulla oblongata弓状核(延髄の) Nucleus arcuatus】 Group of cells lying anterior to the pyramidal surface. It gives rise to the anterior and posterior external arcuate fibers of the medulla and the medullary striae of fourth ventricle.
→(延髄の弓状核は錐体の腹側部に、大きさ、位置、高さがさまざまな小さい細胞集団により構成される。この核はしばしば上部で橋核と連続する。入力線維は大脳皮質に由来し、遠心性線維は外弓状線維となって小脳に投射する。弓状核からの線維の一部は延髄の正中線を背側に走って第四脳室髄条を形成して外側方に走り、下小脳脚を通って小脳に達する。)
- 866_13【Nuclei of solitary tract; Solitary nuclei孤束核 Nuclei tractus solitarii】 Column of cells extending from the decussation of pyramids to the middle of the rhomboid fossa. As a functional unit, the nuclear complex receives viscerosensory afferents whose endings are arranged somatotopically. Taste fibers from cranial nerves VII, IX, and X terminate in the anterior portion. As an independent integration center it is connected e.g. with the reticular formation, amygdala, and insular cortex. The current division of nuclei as follows is based mainly on different levels of acetylcholinesterase activity. The various functions of the individual nuclei in humans is unknown.
→(孤束核は延髄背側を矢状方向に走る細い細胞柱で、菱形窩底の下で境界溝のすぐ外側にある。小さい独立核の集まりで一括して言えば脳幹の内臓求心性の核であって迷走神経、舌咽神経、顔面神経からの線維が孤束を経てはいってくる。孤束核は次の数個の部分に分けられる。すなわち、①内側部、迷走神経背側運動核の背外側にある、②背内側、背外側および腹外側亜核、孤束を取り巻く、および③小細胞性亜核、最後野の腹側にある。内側部の細胞は迷走神経背側運動核を吻側にわずかに越え、また、第四脳室より下方へ広がり、反対側の同じ細胞性と合一して迷走神経交連核をつくる。外側の諸核は大細胞性の細胞柱をなし、孤束を一部あるいは完全に取り巻いている。この外側部は孤束のほぼ全長にわたって平行に存在する。吻側では橋下部まで広がり、一方尾側ではその細胞数が減少し、網様体との区別が難しくなる。孤束核の膨大した吻側部(すなわち外側部)は主として特殊内臓求心性(味覚)線維を顔面神経(中間神経)と一部の顔面神経と舌咽神経からくる一般内臓求心性線維を受ける。孤束核の内側部の細胞は多数のニューロペプチドを含有している。すなわち、エンケファリン、ソマトスタチン、サブスタンスP、およびコレシストキニンなどである。同部位にはサブスタンスP含有線維も豊富に存在する。孤束核から起こる二次路系は次の部位に同側性に投射する。すなわち、①疑核とその周辺の網様体、②橋上部の傍腕核、および③味覚に関与する視床の核、すなわち後内側腹側核(小細胞部)である。孤束核から起こるその他の二次線には舌下神経核と唾液核に投射し、舌の運動と唾液の分泌反射を仲介する。孤束核からの迷走神経背側運動核、横隔神経核(第三(C3)・第四(C4)・第五(C5)頚髄の高さ)、および胸髄の前角細胞への投射はせきと嘔吐反射に関与する。孤束核は生理学的に同定された延髄の呼吸“中枢”と同一の広がりをもち、この中枢は疑核とその周辺の網様体を包含する。延髄“呼吸中枢”の細胞は迷走神経のインパルス、および直接の化学的環境変化(CO2蓄積)によって賦活される。別個の昇圧帯と減圧帯からなる延髄の血管運動“中枢”は十分明らかにされていない。最近、心臓血管系の調節に関する神経回路網が重視されてきた。ノルアドレナリン作働性ニューロンの1集団(グループA5と呼ばれる)が橋の下部で上オリーブ核と顔面神経の根線維の間にあり、軸索を孤束核、疑核、迷走神経背側運動核および胸髄の交感神経節前線維のニューロンに投射しており、上記神経回路網の一部と思われる。)
- 866_14【Descending root of vestibular nerve前庭神経下行根 Radix descendens nervus vestibularis】
→(")
- 866_15【Restiform body索状体;髄小脳脚 Corpus restiforme; Corpus medullocerebellare】 Posterolateral group of afferent fibers passing to the cerebellum.
→(索状体は下小脳脚の大部分を占める外側部の純求心性線維束である。脊髄から小脳への脊髄小脳線維と延髄から小脳への楔状束小脳線維・網様体小脳線維を含む。)
- 866_16【Trapezoid body台形体 Corpus trapezoideum】 Interwoven, crossing fibers from the two anterior cochlear nuclei. It is part of the auditory pathway.
→(台形体は橋下位の高さで蝸牛神経腹側核および一部台形体背側核(上オリーブ核)から出て橋被蓋の背側部を横走し対側に向かう線維の総称(もしくはこれらの線維で構成された部位)。これらの線維は交叉の後、前背側方に進み、外側毛帯に加わる。)
- 866_17【Vestibular tubercle; Acoustic tubercle前庭結節;聴結節 Tuberculum vestibularis; Tuberculum acusticum】 Area overlying the vestibular nuclei lateral to the sulcus limitans at the beginning of the lateral recess.
→(前庭神経野は境界溝の側方、外側陥凹のはじまるところの隆起で前庭神経核と蝸牛神経核の一部を容れる。)
Gierke, Respiratory bundle of
- 866_18Gierke, Respiratory bundle of【Solitary tract孤束 Tractus solitarius】 Bundle of efferent fibers from cranial nerves VII, IX, and X to the nuclei of the solitary tract.
→(孤束は被蓋背側部を縦走する細いが明瞭な線維束。孤束核で囲まれ、閂の下方で左右のものが中心管の背側で交叉し、ある距離上を下り頚髄上部へと入る。迷走神経、舌咽神経および顔面神経(中間神経)に由来する内臓求心性線維によって形成されている。下の前2/3の味覚を伝道する神経(鼓索神経)と下の後1/3部の味覚伝導神経(舌咽神経)は主として孤束核の吻側に部に終わる。迷走神経が入る高さとその尾方の孤束は主として一般内臓求心性線維を含み、大部分は迷走神経からくる。)
- 866_19【Rootlets of glossopharyngeal nerve根糸(舌咽神経の) Fila radicularia nervus glossopharyngeus】
→()
- 866_20【Anterior cochlear nucleus; Ventral cochlear nucleus蝸牛神経前核;蝸牛神経腹側核;腹側蝸牛神経核 Nucleus cochlearis anterior; Nucleus cochlearis ventralis】 Nucleus that can be subdivided into two parts.
→(蝸牛神経腹側核は発育がよく、下小脳脚の腹外側で、蝸牛神経の根の外側にある。蝸牛神経腹側核はその部位と細胞構築によって、前腹側核と後腹側核の2亜核に分けられる。蝸牛神経腹側前核anteroventral cochlear nucleusは吻側で卵円形細胞が密につまっており、また蝸牛神経腹側後核posteroventral cochlear nucleusは蝸牛神経の脳内侵入部近くにあって種々の形の神経細胞よりなるが、そのうちの主な物は多極性である。これらの亜核には音階的配列があり、音階に応じて連続的に対応している。蝸牛神経の線維は脳幹内に入ったのち、規則正しく順番に分岐して蝸牛神経背側核および腹側核の両方に音快的配列をもって終止する。蝸牛神経核内で線維が次々と規則正しく分岐と分布を行うので全ての亜核内で重なりあった周波数配列が認められる。蝸牛神経核では高い周波数に反応する細胞が背側に、低い周波数に反応する細胞が腹側に位置するが、これは蝸牛とは反対の配列である。)
Varolius, Pons of
- 866_21Varolius, Pons of【Pons橋 Pons】 Part of the brain situated between the interpeduncular fossa and the pyramids. It surrounds the anterior part of the fourth ventricle and consists mainly of descending tracts from the cerebrum that travel to nuclei, synapse, cross, and continue to the cerebellum.
→(Ponsとは、橋(ハシ)という意味である。腹側から見ると左右の小脳半球の間に架かった太鼓橋の様に見えるところから橋という名前が付けられた。比較解剖学的には、橋が延髄から区別されるのは哺乳類に限られ、橋は人類で最もよく発達している。後脳の腹側部にあたる。すなわち、小脳の腹側に位置しており、延髄と中脳の間に介在する。橋の腹側面は横走する幅広い神経線維束(横橋線維)によっておおわれる。この神経線維束はさらに橋の外側面において、橋と小脳を連結する中小脳脚を形成しており、左右の小脳半球の間にかかる「橋」のようにみえる。橋は既にユースタキウスEustachius (1524-1574)の図に載っているというが、この図は1714年まで出版されなかったので、Ponsという名称は、このような外見に基づいて、イタリアの解剖学者であり外科医でもあったC.Varolio (1543-1573)が用いたものである(ヴォロイオ橋)。橋は横断面では橋腹側部または橋底部と橋背部または橋被蓋とに区分される。両者の境界は橋被蓋の腹側部を上行する内側毛帯の腹側縁にあたる。橋底部の神経線維群には、上記の横橋線維のほかに、橋底部の中心部を縦走する橋縦束があり、神経細胞としては橋縦束を取り囲んで橋核が存在する。橋縦束の線維はその大部分が大脳皮質からの下行神経線維であり、橋核に連絡する皮質橋核路を含む。橋核は大脳皮質からおこる求心性神経線維のほか、小脳核や上丘からおこる求心性神経線維を受けることが知られている。橋核からおこる遠心性神経線維は横橋線維、ついで中小脳脚を形成して、主として反対側の小脳半球の皮質に連絡する。また、その際、小脳核、とくに歯状核に側枝を送る可能性が大きい。このように、橋縦束・橋核・橋横線維は大脳皮質や小脳半球など、系統発生的に新しい部位との関係が深く、哺乳動物ではじめて出現する構造であって、高等な哺乳類において良好な発育を示す。 一方、橋被蓋は系統発生的に古い構造であり、脳幹網様体の基本構造を示す部位がもっとも広い領域を占める。脳神経核としては、三叉神経核(主感覚核・脊髄路核・中脳路核・運動核)・顔面神経核・内耳神経核(蝸牛神経核と前庭神経核)が存在する。また、橋被蓋の外側部を上行する外側毛帯、および橋被蓋の腹側部を横走する台形体の線維は聴覚路を形成する神経線維群であり、聴覚神経路の中継核として、外側毛帯核および台形体核が存在する。その他の線維群としては、第四脳室底の腹側において正中線背側部の両側を内側縦束が縦走し、上小脳脚が第四脳室蓋の外側部を形成している。また、神経細胞群としては、橋被蓋の背外側部に青斑核が、上小脳脚の周辺部には結合腕傍核が存在する。)
- 866_22【Cochlear nerve蝸牛神経;聴神経;蝸牛神経根 Nervus cochlearis; Nervus acusticus; Nervus octavi; Pars cochlearis; Radix nervi cochlearis; Radix nervi cochlearis】 Collection of fibers passing from the cochlea to the cochlear ganglion.
→(蝸牛神経は内耳神経の一部をなす神経で、内耳道を通り蝸牛に達すると神経細胞体の集団(ラセン神経節、時に蝸牛神経節ともよばれる)を含むようになる。蝸牛神経の末梢枝は蝸牛内のラセン器に達する。ラセン神経節の神経細胞体から出る授受突起が蝸牛神経末梢枝の中を走行し、神経突起が蝸牛神経本幹および蝸牛根を経て中枢の蝸牛神経核に向かう。すなわち蝸牛神経は聴覚を伝える神経であるということができる。なお球形嚢に分布する神経として球形嚢神経があるが、これも聴覚の一部を伝えるする説が有力である。)
- 866_23【Spinal nucleus of trigeminal nerve三叉神経脊髄路核;三叉神経脊髄核 Nucleus spinalis nervi trigeminalis】 Long column of cells in the cervical spinal cord that is bounded rostrally by the principal sensory nucleus, and extends caudally into laminae I-V of the posterior horn of the spinal cord. It constitutes a termination site for protopathic afferents.
→(三叉神経脊髄路核は三叉神経脊髄路の内側にそってあり、橋の三叉神経根のレベルから第二頚髄まで存在する。三叉神経脊髄路の線維は全域にわたってこの神経核の細胞に終止する。細胞構築上三叉神経脊髄核は①吻側部、②中間部、尾側部に分けられる。)
Gower's tract
- 866_24Gower's tract【Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路;ガワース路 Tractus spinocerebellaris anterior】 Some of its fibers cross from the posterior horns to the contralateral side, ascend to the superior border of the pons, and bend around to the superior cerebellar peduncle. It transmits information from afferent nerves in the lower half of the body about muscle tone and limb position for coordination of lower limb movement.
→(ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。)
Flechsig's tract
- 866_25Flechsig's tract【Posterior spinocerebellar tract; Dorsal spinocerebellar tract後脊髄小脳路;背側脊髄小脳路;フレヒシッヒ路 Tractus spinocerebellaris posterior】 Uncrossed fibers traveling to the inferior cerebellar peduncle. Its function is similar to that of the anterior spinocerebellar tract.
→(後脊髄小脳路は胸髄核から出て交叉せずにすぐ側索周辺部の背側部を上行し、下小脳脚を通って同側の小脳の前葉、一部は虫部錐体、虫部垂などの皮膚に達する。脊髄の側索後外側辺縁部を上行するこの非交叉性の伝導路は胸髄核の大細胞から起始する。後根の求心性線維は直接に、または後索を上下行した後に胸髄核に終わる。胸髄核の大細胞は太い線維を出し、これは側索の後外側部(すなわち皮質脊髄路の外側)に入り、上行する。延髄にあってはこの伝導路の線維は下小脳脚に組み込まれ、小脳に入って同側性に虫部の吻側と尾側に終わる。虫部全部では線維は第Ⅰ小葉から第Ⅳ小葉に終わり、後部では主として虫部錐体と正中傍小葉に終わる。胸髄核は第三胸髄から尾方には存在しないから、尾方の髄節からの後根線維はまず後索内を上位の胸髄まで伝達され、それから胸髄核の細胞へ伝えられる。後脊髄小脳路を経由して小脳へ中継されるインパルスは伸展受容器である筋紡錘やGolgi腱器官および触圧覚受容器から起こる。胸髄核のニューロンは主としてⅠa群、Ⅰb群およびⅡ群の求心線維を経由する単シナプス性興奮を受ける。Ⅰ群の求心性線維と胸髄核の間のシナプス結合では高頻度のインパルスの伝達が行われる。一部の外受容器由来のインパルスもまた後脊髄小脳路を経由して伝達される。これらは皮膚の触覚と圧覚の受容器およびゆっくり反応する圧受容器に関係する。後脊髄小脳路は脊髄レベルおよび小脳の終始部において体部位局在性に配列されている。伝導路によって伝達されるインパルスは意識のレベルに達することはない。これらの伝導路によって伝達されるインパルスは姿勢とここの四肢筋の運動の細かい協調作用に役立っている。)
- 866_26【Posterior accessory olivary nucleus; Dorsal accessory olivary nucleus後副オリーブ核;背側副オリーブ核 Nucleus olivaris accessorius posterior; Nucleus olivaris accessorius dorsalis】 Accessory nucleus located between the inferior olive and the reticular formation.
→(背側副オリーブ核は主オリーブ核の背側にある下オリーブ核の副核。)
- 866_27【Hilum of inferior olivary nucleus下オリーブ核門;オリーブ核門 Hilum nuclei olivaris inferioris; Hilus nuclei olivaris】 Medially directed opening of the principal olivary nucleus.
→(下オリーブ核はヒダの多い袋のような形状を示し、袋の口にあたるところは内側に向かい下オリーブ核門と呼ばれる。)
- 866_28【Inferior olivary complex下オリーブ核群;下オリーブ複合体;オリーブ核 Complexus olivaris inferior; Nuclei olivares inferiores; Nucleus olivaris】 Nuclear complex of the inferior olive.
→(下オリーブ核は延髄腹側部にあり、①主オリーブ核(主核)、②内側副オリーブ核(内側副核)、③背側副オリーブ核(背側副核)の三つの部分から成る。主オリーブ核は系統発生的に新しく、ヒトおよびサルなどの高等哺乳類では発育がよい。その形はしわのある袋状をなし、その内側に向けられた袋の口はオリーブ核門とよばれる。そこにはオリーブ核の細胞の軸索が集まって出るところである。オリーブ核からの遠心路はオリーブ小脳路となる。主オリーブ核は系統発生的に新しい小脳の半球皮質と結合し、副オリーブ核は虫部および中位核(栓状核、球状核)と結合する。オリーブ核は非常に広汎な領域からの求心線維を受け、その終枝には局在性が認められる。その起源は大脳皮質運動野、赤核、視蓋前域、不確帯、Cajal間質核、後索核、三叉神経脊髄路核、小脳核(歯状核と中位核)および脊髄などである。)
- 866_29【Medial accessory olivary nucleus内側副オリーブ核 Nucleus olivaris accessorius medialis】 Accessory nucleus located anterior to the hilum of inferior olivary nucleus.
→(内側副オリーブ核は内側毛帯の外側縁に沿って存在する下オリーブ核の副核。)
- 866_30【Pyramid of medulla延髄錐体;錐体(延髄の) Pyramis medullae oblongatae; Pyramis bulbi】 Longitudinal prominence consisting of fibers from the pyramidal tract on both sides of the anterior median fissure. It ends at the decussation of pyramids.
→(延髄錐体は前正中裂両側にある隆起。第一脊髄神経根を越え、錐体交叉で終わる。皮質脊髄路が通る。皮質脊髄路は延髄下端で、外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路に分かれる。錐体路の線維の85%以上は錐体交叉により外側皮質脊髄路に入る。)