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- 892_01【Pyramidal tract錐体路 Tractus pyramidalis】 Tract arising from the cerebral cortex, especially from regions in the frontal and parietal lobes. It transmits activating and inhibiting impulses for voluntary motor function.
→(錐体路本来の定義に従えば、起始領域、終枝部位に関係なく延髄の錐体(pyramis)を通るすべての神経線維群をいう。鳥類以下には見られず、哺乳類とくにヒトでよく発達しており意識的運動を司る。これらの大部分の線維は大脳皮質からおこり脊髄におわる皮質脊髄線維(または路)からなるが、若干の線維は錐体の経過中またはそれよりも前方のレベルでの神経路から離れて脳幹にある反対側の運動性の脳神経核および付近の毛様体(皮質網様体線維)におわる。これらの皮質核線維とよばれるものは厳密には錐体路に含まれないが、しばしば両者(皮質脊髄線維と皮質核線維)を一緒にして錐体路とよばれる。錐体路の起始細胞は、昔からの考えによれば起始細胞は、運動領皮質(4野)の第5層の巨大錐体細胞(Betz)で、その経路は、終脳の内包、中脳の大脳脚、橋の橋縦束、さらに延髄の錐体を下行し、脊髄前角にいたる有髄線維の集まりの長下行路である。その経路中、橋核、脳幹の網様体や運動核、またおそらく大脳基底核などに一部側枝を与え、延髄下端で大部分(91~97%)の線維が交叉し(これを錐体交叉という)これらは対側の脊髄側索(錐体側索路、外側皮質脊髄路)を下るが、小部分はそのまま同側の前索(錐体前索路、前皮質脊髄路)を下行する。しかし、錐体路の大脳皮質の起始領野をみれば、運動領(4野)のみでなく知覚領や連合領を含む他の領野まで包括される。起始ニューロンもBetzの巨大細胞のみならず、第5層に、みられる中型・小型の錐体細胞も証明されている。さらに脊髄の終枝部位についても前角の運動ニューロンに直接おわるものは動物による実験的研究で判明した限りではむしろ少なく、大部分は中間帯や後核基部におわり、介在ニューロンを介して運動ニューロンに影響を与えると思われる(間接皮質運動路)。錐体路の起始・終枝の問題だけでなく、錐体を構成する軸索には、古典的な錐体路以外の錐体外路系の線維も少量ながら含まれており、厳密には、延髄の錐体を通る線維群(錐体路)とそれ以外の運動系(錐体外路)とに分けることはむずかしい。)
- 892_02【Cerebral peduncle大脳脚[広義の] Pedunculus cerebri】
→(広義の大脳脚は中脳の腹側部で、背側の中脳蓋(四丘体)および中心灰白質背側部を除いた中脳水道水平中央断面より腹側の部分を総称する。さらにこれは背側の中脳被蓋と狭義の大脳脚に分かれる。中脳被蓋には著明な構造物として、動眼神経核群、中脳網様体、赤核、黒質、内側毛帯などが存在する。もともとは全脳と後脳を連結するやや細くなった首状部分である中脳の両半分の部分をさす名称であったが、その後、様々な意味で用いられるようになった。Crus cerebriとよばれる皮質投射線維の大きな束のみをさしたり、これに被蓋を加えたものをさしたりするが、後者の方が好ましい、脚底にある黒質は被蓋とcrus cerebriとを境する構造とみなされている。)
- 892_03【Temporopontine fibres; Temporopontine tract側頭橋線維;側頭橋核線維;側頭橋路;側頭橋核路;側頭部(皮質橋核路の) Fibrae temporopontinae; Tractus temporopontinus】 Fibers from the temporal lobe lying in the lateral part of the cerebral crura.
→(頭頂、後頭および側頭橋線維で、頭頂葉、後頭葉および側頭葉をなどから出て内方を通って下行し、大脳脚をへて同側の橋核終わる。)
- 892_04【Frontopontine fibres前頭橋線維;前頭橋核線維 Fibrae frontopontinae】 Fibers from the frontal lobe lying in the medial part of the cerebral cms.
→(前頭橋核線維は大脳脚の内側1/6のところにある。前頭葉と橋をむすぶ線維。)
- 892_05【Auditory cortex; Auditory area聴覚皮質;聴覚野 】
→(聴覚皮質は延髄の蝸牛神経核から上行する聴覚神経投射を受けている視床の細胞群すなわち内側膝状体から聴放線を受ける大脳皮質の部分。ほぼBrodmannの第41・第42野に相当し、その局在は音に対応している。)
- 892_06【Anterior radiation of thalamus前視床脚;前視床放線 Radiatio anterior thalami】
→(前視床放線は視床ならびに前頭葉および帯状回の間の線維群。内包前脚を通る。)
- 892_07【Ventral lateral complex of thalamus; VL外側腹側核群(視床の) Nuclei ventrales laterales thalami】 Ventrolateral nuclear complex situated between the reticular nucleus of thalamus and the dorsomedial nucleus.
→(VL核とも呼ばれる。外側腹側核は前腹側核の尾方にあり、大、小のニューロンから成る。これらのニューロンは、この核の中における部位によって著しく異なる。この核は、これまでに更に、主要な次の2部に分けられていた。すなわち、①吻側部(VLo)、②尾側部(VLc)である。この中で最も大きな吻側部(VLo)には多数の濃宣する細胞が集塊をなして配列する。尾側部(VLc)には、細胞は少ないが、大型の細胞が散在する。サルで、前腹側核の大細胞部の尾方で外側腹側核の吻側部の内側方にある三日月形の視床領域は、”X野”と名づけられていて、線維結合に基づいて考えると、外側腹側核群の統合部であるらしい。外側腹側核の尾側部、”X野”および後外側腹側核の前部(VPLo)は、”細胞がまばらな”苔状の部分として呼ばれ、細胞学的に外側腹側核の吻側部、後外側腹側核の尾側部および後内側腹側核とは異なるものである。淡蒼球の内節から起こる神経線維は、視床束を経て、視床の外側腹側核に投射する。淡蒼球からの投射の大部分は、この核の前部、外側腹側核の吻側部に達する。淡蒼球から出る線維はまた吻側方には、前腹側核に投射し、中心正中核(CM)に側副線維をだす。これらの投射は、部位局在的に配列している。小脳核から起こり反対側の赤核を越えて上行する遠心性線維は視床束に入り外側腹側核の”細胞がまばらな”帯状部分(外側腹側核の尾側部、後外側腹側核の前部、X野)を構成している核群に投射している。単一ニューロンの研究では小脳核内のはっきりした体部位的機構を表さなかった。これらの遠心性線維をうける視床核では視床の体性感覚中継核のものと類似の体部位的表現をもっている。体の異なる部分は、内側方に、体の尾側の部分は外側方にと、系統的に表されている、四肢は腹側に表される。歯状核視床線にと中位核視床線維は同じ部位に終止するらしいが、それらの終末は重ならずに、組合わさった形式である。室頂核視床投射路は後交連の部位と視床の髄板内核の部位の両方かあるいはどちらか一方の部位で交叉する線維で、両側性である。視床の外側腹側核は中心前回の皮質からかなり多くの線維を受ける。サルにおける研究によって、大脳皮質の4野は、外側腹側核の吻側部、外側腹側核の尾側部および後外側腹側核の前部、ならびに中心正中核、中心傍核と外側中心核に投射することが証明された。大脳皮質4野から外側腹側核の尾側部への投射は、大脳皮質6野からの投射ほど多くない。6野は”X野”にも投射する。系統的な分析によれば後外側腹側核の前部と外側腹側核の尾側部からなる視床外側腹側核の”細胞がまばらな”帯状の部分は、4野に部位局在的に踏査していることがわかる。この核の内側部分からの線維が皮質の顔面野、外側部分からの線維が下肢野、また、中間部分からの線維が下肢野、また、中間部分からの線維が上肢および体幹腹現領域に至る。かくして、歯状核、栓状核および室頂核から視床への終止域は、ほとんど同じであって、一次運動野へのインパルスを中継する。淡蒼球の内節から入力を受ける外側腹側核の吻側部への皮質投射帯は外側腹側核の吻側部が補足運動野へ投射し、また運動前野に投射するのとは異なっているらしい。視床の外側腹側領域の、細胞構築学的に分けられたそれぞれの部分は、運動機能のいろいろな面に関係した皮質野へ投射している。)
- 892_08【Superior cerebellar peduncle (Brachium conjunctivum)上小脳脚;結合腕;小脳大脳脚 Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum; Crus cerebellocerebrale】
→(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)