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- 901_01【Sagittal suture矢状縫合 Sutura sagittalis】 Suture that joins the right and left parietal bones in the midline.
→(矢状縫合は頭蓋冠正中線で左右の頭頂骨を結ぶ。)
- 901_02【Arachnoid villusクモ膜絨毛 Villus arachnoideus】
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- 901_03【Lateral lacunae of superior sagittal sinus外側裂孔(上矢状静脈洞の) Lacunae laterales】 Small lateral spaces in the superior sagittal sinus.
→(上矢状静脈洞の外側裂孔は上矢状洞の側方への小陥凹。)
- 901_04【Parietal bone頭頂骨 Os parietale】 Bone located between the occipital, frontal, sphenoidal, and temporal bones.
→(頭頂骨は正中線で合して頭頂をつくる1対の頭蓋冠の大部分を形成するほぼ四角形の扁平骨で、4縁、4角、2面を有する。4縁のうち後方で後頭鱗接する部分を後頭縁といい人字縫合をなし、下方で側頭鱗に接する部分を鱗縁といい輪状縫合をなす。4角のうち後上角の後頭角は鈍角、後下角の乳突角は鋭角、前上角の前頭角はほぼ直角、前下角の蝶形骨角は鋭角をなす。外面は頭頂面ともよばれ凸面をなし、中央部でとくに膨隆した部分を頭頂結節という。頭頂結節は胎児および若年頭蓋で著明である。また左右両側の頭頂結節間の距離が頭蓋の幅の最も広いところ、すなわち最大脳頭蓋幅径として知られている。頭頂結節の下方に上下2本の弓状の線が認められるが、上の線を上側頭線といい側頭筋膜の着く所である。下の線を下側頭線といい側頭筋の着くところである。矢状縫合の後方部に頭頂孔という小孔があり、ここを頭頂導出静脈が通る。内面は大脳面ともよばれ凹面をなし、指圧痕、脳隆起、動脈溝などが認められ、骨の上縁に沿って幅の広い矢状溝があり、他側の頭頂骨の同名溝と合して完全な上矢状洞溝となる。この近くには多数の小窩があり、クモ膜顆粒をいれる。また乳突角の部分にはS状洞溝の上部の一部が認められる。)
- 901_05【Cranial dura mater; Pachymeninx; Dura mater脳硬膜;硬膜 Dura mater cranialis; Dura mater encephali; Pachymeninx; Dura mater】 Membrane forming a protective capsule around the brain. In the growing body it is firmly attached to the periosteum of the cranial bones. The meningeal and periosteal layers always remain divided at the dural venous sinuses. After growth stops, the periosteal layer separates slightly from the bone, remaining firmly attached at only a few sites, e.g., the crista galli.
→(脳硬膜は脊髄硬膜と異なり1枚の膜をなし、脳の被膜であると同時に頭蓋骨内面の骨膜である。これは小児では骨と密着しているが、成人では頭蓋底、頭蓋縫合以外は骨から離れている。脳硬膜は内外の2層からなり、両層は通常癒着しているが、硬膜静脈洞のある所や三叉神経節のある所などでは2層が離れている。脳硬膜の外面は頭蓋骨との間を結合する突起のために粗で、両者の間には不完全に内皮細胞でおおわれたリンパ腔隙があり、これは硬膜上腔と呼ばれる。脳硬膜の内面は平滑で、これとクモ膜との間には連続して内皮細胞で覆われた狭い硬膜下腔がある。脳硬膜は内方に向かって強靱な突起を出して、脳を固定するのを助けている。これには大脳鎌、小脳鎌、小脳テントがある。)
- 901_06【Arachnoid mater; Arachnoidea; Arachnoid membraneクモ膜 Arachnoidea mater】 Transparent fibrocollagenous membrane between the dura mater and pia mater that is covered by epithelioid cells.
→(クモ膜は硬膜直下にある薄い結合組織性の膜で、血管がなく、外表面は内皮様の神経中皮によっておおわれている。また、膜の内表面に不完全な内表の細胞が存在する。脳クモ膜は脳軟膜とは異なり大脳溝や小脳溝内に入り込むことはない。クモ膜が大脳縦裂や大脳横裂のの中に進入するのはその外側の硬膜(大脳鎌や小脳テント)によって押し込まれたものである。クモ膜の内面からは線維性結合組織性の小柱が出て軟膜につく。これらの小柱によって結ばれているクモ膜と軟膜の間の腔をクモ膜下腔という。この腔所は脳脊髄液によって満たされて脳と脊髄を液体のクッションで支えるとともに、この中を脳脊髄を養う動静脈が走っている。 脳表から脳実質内に出入りする動静脈は、毛細血管になるまでは、その周囲にクモ膜下腔を伴っており、脳脊髄液に包まれている。この腔所をWirchow-Robin腔という。この腔の内壁を作る血管外膜と、外壁にあたる軟膜は毛細血管になる前で癒合し、終末輪を作って血管周囲腔(Wirchow-Robin腔)を閉ざす、表層からこの癒合部までをその形態にちなんで軟膜漏斗という。クモ膜と軟膜との間にはクモ膜下柱梁とよばれる柱状の結合組織がクモの巣状に張っている。クモ膜は脳表面の陥凹部をとび越えて張るためにクモ膜下腔のとくに広い場所が生じる。これをクモ膜下槽とよび、大脳外側窩槽、小脳延髄層、脚間槽などがよく知られている。)
- 901_07【Cranial pia mater; Leptomeninx脳軟膜 Pia mater cranialis; Pia mater encephali】 Delicate, vascular cranial membrane. It forms a loose connective-tissue sheath lying on the surface of the brain and passing into the sulci, and thus also covering the cranial vessels.
→(脳軟膜は脳の表面をくまなくおおう薄膜で、脊髄におけるよりも密に脳に付いている。軟膜は脳室壁が上衣層のみからなる部位(上衣板)の外表面をおおい、脈絡組織を作り、上衣板と癒着している。脈絡組織から脳室内に血管に富む脈絡叢が出ており、その脳室面はやはり上皮板によっておおわれる。この部分における上衣板の上衣細胞は立方系で、単層を無し、脳脊髄液を分泌すると考えられている。脈絡組織には第四脳室脈絡組織と第三脳室脈絡組織がある。)
- 901_08【Grey matter; Grey substance; Gray matter; Gray substance灰白質 Substantia grisea】 Mass of neural cell bodies.
→(脳と脊髄では神経細胞体の集合している部分は有髄神経線維がないか、きわめて少なく灰色を呈するところからこの名称がある。脊髄では中心管を囲みH状を呈する。大脳半球と小脳では表面に神経細胞体が帯状分布するので、これをとくに皮質とよんでいる。灰白質には神経細胞の核周体、樹状突起、輪索起始部、軸索の終末やシナプス、神経膠細胞、血管が存在している。同じ機能をもつ神経細胞の細胞体の集団に区分し、これを神経核とよぶ。)
- 901_09【White matter; White substance白質 Substantia alba】 Mass of myelinated nerve fibers.
→(脳と脊髄の断面で髄鞘をもつ有髄神経線維が集合している部分は白色を呈し、この神経線維の集まった部位を白質とよぶ。大脳半球と小脳とでは白質が皮質に包まれていることから、この部位の白質はとくに大脳髄質、小脳髄質と呼ばれる。白質の中でも髄鞘の薄い神経線維の束は灰色がかっている。また、無髄神経線維が集まる部分は灰白質にみえる。白質を部位的に区分した場合には各部分を索、著明な神経線維の束を束、機能的に等質な神経線維の束を神経路または伝導路とよぶ。)
- 901_10【Corpus callosum脳梁 Corpus callosum】 Transverse nerve fibers connecting the two cerebral hemispheres at the base of the longitudinal cerebral fissure.
→(脳梁は左右の大脳皮質、ことに新皮質を結合する線維の集合したもので、系統発生的には最も新しく、ヒトでは非常に発育がよい。その前後経はほぼ7.7cmである。脳梁は正中断では全体としては釣針状で、4つの部分が区別される。後端部は膨大し、脳梁膨大といい、その前方に続いて水平に走る部分を脳梁幹とよぶ脳梁はその前端では強く屈曲し、脳梁膝をつくる。これはさらに後下方にくちばしのように尖って脳梁吻となり、しだいに薄くなって終板に続く。)
- 901_11【Superior sagittal sinus上矢状静脈洞 Sinus sagittalis superior】 It lies within the root of the falx cerebri and extends from the crista galli to the confluence of sinuses.
→(上矢状静脈洞は大脳鎌の上縁に沿って、盲孔から静脈洞交会まで縦走する。この上矢状静脈洞は尾側にいくに従い大きさを増す。またこの縦走する静脈洞の中央部には、数や大きさがさまざまな裂孔すなわち静脈裂孔がある。)
- 901_12【Arachnoid granulationsクモ膜顆粒 Granulationes arachnoideae】 Avascular, villuslike protrusions of the arachnoid mater into the sagittal sinus and diploic veins. They become increasingly prominent beginning around age 10 years and are involved in cerebrospinal fluid drainage.
→(クモ膜顆粒は記載者にちなんでパキオニ小体(顆粒)ともよばれる。脳の静脈洞付近、ことに上矢状静脈洞付近のクモ膜外面はさまざまの大きさの顆粒状突起を出し、その先端を静脈洞に入れ、あるいは脳硬膜を圧して隆起して頭蓋骨内面にクモ膜顆粒小窩を残す。脳クモ膜において特異なものは主として上矢状静脈洞の付近にクモ膜のきのこ状の突起が見られることである。この突起はクモ膜顆粒と呼ばれる。これは硬膜を圧してそれを隆起させ、一部分は上矢状静脈洞の中に入り込んでおり、また一部は上矢状洞溝の付近の骨の内部に入り込み、そこにクモ膜顆粒小窩を作っている。クモ膜顆粒はクモ膜下腔の脳脊髄液を外方、ことに硬膜静脈洞に排出するものであると考えられている。顕微鏡的にクモ膜外面は一般に小突起をもつ。これをクモ膜絨毛(Villi archnoideales)とよび、仙尾髄領域に特に多い。イタリアの解剖学者Antonio Pacchioni (1665-1726)によって、1705年に記載された。彼はこの小体を硬膜の腺と考えたという。)
Pacchionian granulations
- 901_13Pacchionian granulations【Granular foveolaeクモ膜顆粒小窩;脳膜顆粒小窩;パッキオニ小窩 Foveolae granulares】 Small pits for the arachnoid granulations.
→(パキオニ小体(顆粒)小窩ともよばれる。頭蓋冠の内面にある上矢状静脈洞溝の内および外に脳膜のクモ膜顆粒の嵌入によって生じた1~4mmの多数の小窩をいう。イタリアの解剖学者Antonio Pacchioni (1665-1726)によって、1705年に記載された。)
- 901_14【Subarachnoid space; Leptomeningeal spaceクモ膜下腔;軟膜腔;軟膜間隙 Spatium subarachnoideum; Spatium leptomeningeum; Spatium leptomeningicum】 Space between the arachnoid mater and pia mater that contains arachnoid connectivetissue fibers and cerebrospinal fluid.
→(クモ膜下腔はクモ膜と軟膜の間の空間で、繊細な線維性の柱が縦走し脳脊髄液で満たされている。軟膜は脳および脊髄の表面に直接付着するため、脳表面が深く陥凹する所(大脳皮質の深溝など)ではこの空間は非常に広がる。部位によってその広さが異なり、特に広くなっている部分をクモ膜下層という。その主なものは、延髄背側面と小脳下面の間にある小脳延髄層、大脳外側窩にある大脳外側窩槽、視交叉の周囲にある交叉槽、両側の大脳脚の間にある脚間槽、大脳横裂中で大大脳静脈槽に続く迂回槽、橋の腹側にある橋槽などがある。これらのうち、小脳延髄層は最も大きく、大槽ともいわれ、ここへ第四脳室正中口および外側口が開く。脳脊髄液採取のため大後頭孔の下からこの槽が穿刺される(後頭下穿刺)。クモ膜下腔には脳に出入りする血管・神経が走る。)
- 901_15【Falx cerebri; Cerebral falx大脳鎌 Falx cerebri】 Crescent-shaped portion of the dura mater projecting into the longitudinal cerebral fissure.
→(大脳鎌は大脳縦裂の中に入り、下方に刃の部を向けた鎌状をなし、前方は鶏冠にはじまり、上縁は前頭稜および上矢状洞溝に沿って後走し、内後頭隆起に付く。上縁はその中に上矢状静脈洞を含む。下縁は自由縁で、大脳縦裂の中で脳梁のやや上方を走り、その中に狭い下矢状静脈洞を含む。大脳鎌の後下縁は小脳テントの上面と癒着し、その癒着縁は直静脈洞を含む。)
- 901_16【Subdural space硬膜下腔;硬膜下隙 Spatium subdurale】 Cleft between the dura mater and arachnoid mater containing a capillary layer. It is not considered a naturallyoccurring space.
→(硬膜とクモ膜の間の脳脊髄液の満ちた狭い腔所と考えられていたが、現在では外傷などの病的過程で出現するものと見なされている。健康な状態ではクモ膜は脳脊髄液減圧のため硬膜と軽く接触しており、硬膜下腔は自然の状態では出現しない。)
- 901_17【Longitudinal cerebral fissure; Longitudinal fissure of hemisphere大脳縦裂;半球間裂 Fissura longitudinalis cerebri; Fissura interhemisphaerica】 Deep longitudinal cleft that divides the cerebral hemispheres and houses the falx cerebri.
→(大脳縦裂は左右大脳半球の深い縦裂である。左右大脳半球は大脳縦裂によって不完全に分けられており、生体ではこの部分に大脳鎌が入り込んでいる。前頭部と後頭部では大脳半球は完全に分かれているが、中央部では大脳縦裂が幅広い半球間の交連線維群である脳梁までしか達していない。)