915_01【Skin皮膚 Cutis】 Collective term for the epidermis and dermis. →(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)
915_02【Trigeminal nerve [V]三叉神経[脳神経V] Nervus trigeminus [V]】 Nerve innervating the first pharyngeal arch. The fifth cranial nerve, comprised of two groups of fibers exiting laterally from the pons, innervates the muscles of mastication and supplies sensory information for facial sensation. →(三叉神経は知覚部と運動部とからなる混合神経で脳神経中もっとも大きい。その知覚部は頭部および顔面の大部分に分布し、運動部は深頭筋、咀嚼筋、顎舌骨筋および顎二腹筋の前腹を支配する。その核は菱脳中に位置し、体性運動性の三叉神経運動核、知覚性の三叉神経主知覚核および三叉神経脊髄路核ならびに咬筋の筋知覚を司るといわれる三叉神経中脳路核などに分けられるが、これから出る線維のなかで、知覚神経線維は集まって知覚根[大部]を作り、運動神経線維は集まって運動根[小部]を作り、橋と中小脳脚との移行部において脳を去る。知覚根は側頭骨錐体部の三叉神経圧痕の上で大きい三叉神経節[半月神経節]を作り、これを出てから眼神経、上顎神経、下顎神経の3枝に分かれる。運動根は三叉神経節の下面の内側に沿って前進し下顎神経に合する。三叉神経は3枝に分かれた後にも各々の神経節を有し、眼神経には毛様体神経節、上顎神経には翼口蓋神経節、下顎神経には耳神経節および顎下神経節がある。これらのうち三叉神経節は脊髄神経節と同じ構造で体性神経系に属するが、他の神経節はその構造上から自律神経系に属するものである。)
915_03【Cervical plexus; Cervical nerve plexus頚神経叢 Plexus nervosus cervicalis; Plexus cervicalis】 Nerve plexus formed by the anterior rami of the first four spinal nerves. It supplies the skin and muscles of the neck. →(第1~4頚神経の前枝が互いにワナをつくる(吻合する)ことにより形成される神経の網目を頚神経叢という。頚神経叢からは頚神経ワナ、横隔神経などの筋枝と、小後頭神経、大耳介神経、頚横神経、鎖骨上神経などの皮枝が出てそれぞれ末梢側におもむく。すなわち頚神経ワナは第1~2頚髄の前角に細胞体をもつ運動ニューロンの神経突起を含み、舌骨下筋群に分布する枝を有している。横隔神経は横隔膜に分布する。一方、皮枝の中に含まれるのは頚神経後根の脊髄神経節に細胞体を有する知覚ニューロンの末梢側突起、すなわち樹状突起にほかならず、これらは後頭部、頚部、および肩の部分の皮膚に分布してそこからの知覚を頚髄に伝える。鎖骨上神経は分布領域のちがいから内側[前]鎖骨上神経、中間鎖骨上神経、および外側[後]鎖骨上神経の三者に区別される。)
915_04【Ophthalmic nerve; Ophthalmic division [Va; V1]眼神経 [三叉神経第1枝] Nervus ophthalmicus [Va; V1]】 First division of the trigeminal nerve, which passes through the superior orbital fissure. →(眼神経は第五脳神経の第一枝(CN V1)。蝶形骨体上の海綿静脈洞の外側に沿って前方にすすみ、上眼窩裂を通って眼窩に入る。つぎの枝(①涙腺神経、②前頭神経、③鼻毛様体神経)に分かれる。また眼筋にいたる動眼、滑車、外転の3神経および交感神経との間に交通がある。)
915_05【Maxillary nerve; Maxillary division [Vb; V2]上顎神経[三叉神経第2枝] Nervus maxillaris [Vb; V2]】 Second division of the trigeminal nerve. It passes though the foramen rotundum to the pterygopalatine fossa and continues through the orbital fissure into the orbit. →(三叉神経の第2枝で蝶形骨大翼の正円孔を通って頭蓋腔を去り、翼口蓋窩で頬骨神経および翼口蓋神経を出した後、眼窩下神経となって眼窩下裂を経て眼窩に入り、顔面まで達する。知覚枝は下眼瞼の皮膚と結膜、上唇と頬の皮膚と粘膜、口蓋、上顎歯と歯肉、上顎洞、鼻翼および鼻腔の後下部に分布する)
915_06【Mandibular nerve; Mandibular division of trigeminal nerve [Vc; V3]下顎神経[三叉神経第3枝] Nervus mandibularis [Vc; V3]】 Third division of the trigeminal nerve that passes through the foramen ovale into the infratemporal fossa. It contains sensory fibers and motor fibers for the muscles of mastication. →(三叉神経節からの感覚線維と運動根が卵円孔で結合してできる三叉神経の第三枝で最も太く、この神経は三叉神経節から出てただちに蝶形骨大翼の卵円孔を通って側頭下窩に出て硬膜、咀嚼筋、頬粘膜、耳介、外耳道付近その他へ枝を与えた後、舌神経、下歯槽神経の2終枝に分かれる。)