920
- 920_01【Trochlear nerve [IV]滑車神経[脳神経IV] Nervus trochlearis [IV]】 Nerve exiting on the dorsal side, caudal to the tectal plate. It supplies the superior oblique muscle.
→(滑車神経は脳神経中最少のもので、滑車神経核からでて上斜筋を支配する鈍体性運動性神経である。この神経は脳の背側から脳をでる唯一の脳神経で、下丘のすぐ後方で、上小脳脚と上髄帆小帯との間から出て、大脳脚をめぐり、(側頭骨)錐体尖の近くで硬膜を貫いて海綿静脈洞の上壁に達し、動眼神経の外側から上側に向かって前進し、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上直筋、上眼瞼挙筋起始部の上を前内側にすすんで、上斜筋に分布する。)
- 920_02【Cerebral peduncle大脳脚[広義の] Pedunculus cerebri】
→(広義の大脳脚は中脳の腹側部で、背側の中脳蓋(四丘体)および中心灰白質背側部を除いた中脳水道水平中央断面より腹側の部分を総称する。さらにこれは背側の中脳被蓋と狭義の大脳脚に分かれる。中脳被蓋には著明な構造物として、動眼神経核群、中脳網様体、赤核、黒質、内側毛帯などが存在する。もともとは全脳と後脳を連結するやや細くなった首状部分である中脳の両半分の部分をさす名称であったが、その後、様々な意味で用いられるようになった。Crus cerebriとよばれる皮質投射線維の大きな束のみをさしたり、これに被蓋を加えたものをさしたりするが、後者の方が好ましい、脚底にある黒質は被蓋とcrus cerebriとを境する構造とみなされている。)
- 920_03【Tectum of midbrain中脳蓋;四丘体 Tectum mesencephali; Corpora quadrigemina】 Part of the mesencephaIon lying on the tegmentum of midbrain.
→(中脳蓋は中脳水道が通り、屋根状になった脳背側部。上丘と下丘が含まれる。)
- 920_04【Middle cerebellar peduncle中小脳脚;橋腕;橋小脳脚 Pedunculus cerebellaris medius; Brachium pontis】 Part conveying the transverse fibers of the pons, mainly neencephalic tracts, to the cerebellum.
→(中小脳脚(橋腕)は3対ある小脳脚のうち最大のもので、主として橋核から起始する線維からなり、橋底の正中線を越えて対側の背側に移り太い束となって橋被蓋の外側を乗り越えて小脳にはいる。少数の対側へ移らない線維もある。少数の側副線維が小脳核に達している以外ほとんどが橋小脳路線維からできている。)
- 920_05【Superior cerebellar peduncle (Brachium conjunctivum)上小脳脚;結合腕;小脳大脳脚 Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum; Crus cerebellocerebrale】
→(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)
- 920_06【Cochlear nerve蝸牛神経;聴神経;蝸牛神経根 Nervus cochlearis; Nervus acusticus; Nervus octavi; Pars cochlearis; Radix nervi cochlearis; Radix nervi cochlearis】 Collection of fibers passing from the cochlea to the cochlear ganglion.
→(蝸牛神経は内耳神経の一部をなす神経で、内耳道を通り蝸牛に達すると神経細胞体の集団(ラセン神経節、時に蝸牛神経節ともよばれる)を含むようになる。蝸牛神経の末梢枝は蝸牛内のラセン器に達する。ラセン神経節の神経細胞体から出る授受突起が蝸牛神経末梢枝の中を走行し、神経突起が蝸牛神経本幹および蝸牛根を経て中枢の蝸牛神経核に向かう。すなわち蝸牛神経は聴覚を伝える神経であるということができる。なお球形嚢に分布する神経として球形嚢神経があるが、これも聴覚の一部を伝えるする説が有力である。)
Ehrenritter's ganglion
- 920_07Ehrenritter's ganglion【Superior ganglion of glossopharyngeal nerve上神経節(舌咽神経の) Ganglion superius (Nervus glossopharyngeus)】 Upper, small sensory ganglion situated either in or above the jugular foramen.
→(頚静脈孔中にある求心性線維の小神経節。 (Feneis))
- 920_08【Superior ganglion of vagus nerve上神経節;頚静脈神経節(迷走神経の) Ganglion superius; Ganglion jugulare (Nervus vagus)】 Small, upper sensory ganglion situated in the jugular foramen.
→(頚動脈孔にある知覚性の小神経節。 (Feneis))
Willis' nerve
- 920_09Willis' nerve【Accessory nerve [XI]副神経[脳神経XI] Nervus accessorius [XI]】 Nerve arising with two roots forming a single trunk that emerges through the jugular foramen along with CN IX and CN X, before dividing into two branches again.
→(副神経は第十一脳神経である。鈍運動神経で、その起始核は延髄から頚髄の上半におよぶ。したがってその神経根を延髄根と脊髄根とに分ける。前者は3~6本の根をなし迷走神経の下で延髄の後外側溝から出、脊髄根は6~7本の根をなして頚神経の前後両根の間から出て上行して延髄根と合して副神経の幹を作り、舌咽迷走両神経とともに頚静脈孔の前部を通って頭蓋底の外に出、内枝と外枝とに分かれる。内枝は延髄根の延長で、迷走神経下神経節の上端で迷走神経に合し、外枝は脊髄根の延長で下外方に走って胸鎖乳突筋および僧帽筋に分布する。また外枝はその経過中に第3および第4頚神経と交通する。)
- 920_10【Internal branch of accessory nerve内枝(副神経の) Ramus internus (Nervus accessorius)】 Branch formed by united cranial root fibers that joins the vagus nerve.
→(副神経幹の内枝は副神経延髄根から出て頚静脈孔の中で迷走神経に合流する。)
- 920_11【External branch of accessory nerve; Spinal accessory nerve外枝(副神経の);脊髄副神経 Ramus externus (Nervus accessorius)】 United spinal root fibers. They supply the sternocleidomastoid and trapezius.
→(副神経幹の外枝は頚静脈孔から離れた部分で副神経脊髄根からの繊維を胸鎖乳突筋や僧帽筋に送る。)
- 920_12【Glossopharyngeal nerve [IX]舌咽神経[脳神経IX] Nervus glossopharyngeus [IX]】 Nerve arising from the third pharyngeal arch. It emerges from the medulla oblongata via the retro-olivary groove, passes through the jugular foramen, and descends obliquely behind the stylopharyngeus. It supplies motor fibers innervating the constrictor muscles of the pharynx and stylopharyngeus; sensory fibers innervating the pharyngeal mucosa, tonsils, and posterior one-third of the tongue (taste fibers); and parasympathetic fibers via the tympanic nerve and lesser petrosal nerve to the otic ganglion.
→(舌咽神経は第九脳神経で以下の3つの主な神経線維束からなる。①咽頭筋層に分布する運動神経線維、②舌の後3分の1の味覚および咽頭粘膜に分布する知覚線維、③耳神経節におもむく副交感神経節前線維、などを含む。混合神経で知覚、運動、味覚の3種の神経線維を含む。その核は延髄中に存し、大部分迷走神経核と共通である。この神経は数根をもって延髄の後外側溝の最上部から出て硬膜に小枝を与えた後、迷走神経とともに頚静脈孔の前部に至り上神経節を作り、頚静脈孔を出て再び膨大して下神経節を作る。とともに脊髄神経節と同じ構造でそのなかの神経細胞が知覚神経線維の起始である。その後しばらく垂直に走り内頚静脈の間、つぎに内頚動脈と茎突咽頭筋の間を下り、この筋の外側を経て前方に曲がり、舌根に分布する。)
- 920_13【Pharyngeal branches of glossopharyngeal nerve咽頭枝(舌咽神経の) Rami pharyngei (Nervus glossopharyngei)】 Three or four branches passing to the pharyngeal plexus.
→(舌咽神経の咽頭枝は2~3本あって種々の高さで舌咽神経から出て咽頭側壁に至り、迷走神経および交感神経の因頭枝と結合して咽頭神経叢を作る。)
- 920_14【Pharyngeal branches of recurrent laryngeal nerve咽頭枝(反回神経の) Rami pharyngei nervus laryngei recurrentis】 Branches to the inferior pharyngeal constrictor.
→(反回神経の咽頭枝は下神経節から出て舌咽神経および交感神経の枝と結合し、咽頭側壁で咽頭神経叢を作り、これから咽頭の諸筋に筋枝を、咽頭粘膜に知覚枝と分泌枝を与える。 下神経節から出て咽頭の側壁から後壁に至り、舌咽神経・交感神経とともに咽頭神経叢をつくっている。咽頭神経叢は、咽頭の諸筋に遠心性線維を、咽頭と舌根部の粘膜に求心性線維を送っている。咽頭筋のうち、茎突咽頭筋だけは咽頭神経から直接の運動枝を受けており、また口蓋筋のうち、口蓋帆張筋以外のものはすべて咽頭神経叢から運動枝をうけている。舌咽神経と迷走神経とは神経叢においてだけでなく、もっと基部においても吻合しているから、末梢の枝が咽頭神経から起こっているか、また迷走神経から起こっているかを解剖学的に識別することは不可能である。)
- 920_15【Anterior branch of 1st cervical nerve; Ventral branch of 1st cervical nerve前枝;腹側枝(第1頚神経の) Ramus anterior; Ramus ventralis (Nervus cervicalis I)】
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- 920_15a【Anterior ramus of spinal nerve; Ventral ramus of spinal nerve前枝;腹側枝(脊髄神経の) Ramus anterior nervus spinalis】 Larger anterior branch of a spinal nerve, which ca. form a plexus with adjacent fibers. In the thoracic region it supplies branches to the intercostal nerves.
→(脊髄神経の太い枝。周囲のものと合し大きい神経叢をつくる。胸郭では肋間神経となる。 (Feneis))
- 920_16【Hypoglossal nerve [XII]舌下神経[脳神経XII] Nervus hypoglossus [XII]】 Motor nerve supplying the tongue. It emerges from the brain between the medulla oblongata and inferior olive with numerous roots. Traveling in the hypoglossal canal, it curves anteriorly between the internal jugular vein and internal carotid artery and continues over the posterior border of the floor of the mouth into the tongue.
→(舌下神経は第12脳神経である。舌筋に分布する鈍運動神経で、その起始核である舌下神経核は延髄の下部にあり、これから出る神経は10~15の線維束に分かれて延髄の前オリーブ溝から出て、後頭骨の舌下神経管内で一幹となってこの管をでる。初めは迷走神経および内頚静脈の後外側にあるが、ついでその後をめぐって迷走神経の外側に現れ、つぎに茎突舌骨筋および顎二腹筋後腹の内側で弓状をなして前下方にすすみ、舌骨舌筋の外側に至って多くの枝、すなわち舌筋枝に分かれて舌筋に分布する。)
- 920_17【Pharyngeal plexus; Pharyngeal nerve plexus咽頭神経叢 Plexus pharyngealis】 Nerve plexus lying beneath the middle constrictor muscle of the pharynx. It is formed by the glossopharyngeal and vagus nerves as well as the cervical portion of the sympathetic trunk.
→(咽頭神経叢は舌咽神経、迷走神経および副神経(延髄根)の枝を含み、咽頭の後壁に沿って走る神経叢。)
- 920_18【Superior cervical ganglion; Superior cervical sympathetic ganglion上頚神経節 Ganglion cervicale superius】 Uppermost ganglion of the sympathetic trunk, measuring about 2.5 cm in length. It lies directly beneath the cranial base between the longus capitis and posterior belly of digastric.
→(上頚神経節は最上部にある最も大きい神経節で下顎角の高さで、第二・第三頚椎の横突起の前にある。長さ約2cmの扁平紡錘状の神経節である。節前線維は第八頚髄、第一、第二胸髄からきて、節後ニューロンに交代し、節後線維は内頚動脈神経、外頚動脈神経、上頚心臓神経、交通枝となって出る。)
- 920_19【Vagus nerve [X]迷走神経[脳神経X] Nervus vagus [X]】 Nerve arising from the fourth and fifth pharyngeal arches. It emerges from the medulla oblongata together with CN IX in the posterolateral sulcus and passes through the jugular foramen. Its distribution area extends into the thoracic and abdominal cavities.
→(迷走神経は第10脳神経で、上方の舌咽神経、下方の副神経の間で延髄の外側から多数の小根によって起こる混合神経で胸腹部の諸内臓に分布する副交感神経節前神経線維(延髄迷走神経背側核に細胞体をもつニューロンの神経突起)を主成分としている。これらの線維が胸腹部を走行するあいだに、きわめてしばしば自律神経叢を形成してどこに神経の本幹が存在するか不明瞭となるため、迷走神経の名がつけられた。また迷走神経には胸腹部の内臓の知覚を伝える神経線維(その細胞体は迷走神経の下神経節内に存在する)、咽頭下部および後頭の筋への運動線維(延髄疑核に発し、咽頭に分布するものは舌咽神経からの枝とともに咽頭壁において咽頭神経叢を形成したのち筋に分布する)、咽頭下部および後頭の粘膜への知覚神経線維、などが含まれる。後頭に分布する運動および知覚神経線維は下神経節の直下で後頭に向かう上喉頭神経となるか、あるいは胸腔内で迷走神経本幹から下喉頭神経として分かれて頚部を反回神経として上行するかして目的の器官に達する。)
- 920_20【Superior laryngeal nerve上喉頭神経 Nervus laryngeus superior】 Nerve arising form the inferior ganglion and descending medial to the internal carotid artery to supply the larynx.
→(下神経節から起こり甲状舌骨膜へ向かって下行する。そして数本の小枝からなる運動性の外枝と、知覚性の内枝に分かれる。外枝は、甲状軟骨の外側を上まで被う下咽頭収縮筋と輪状甲状筋を支配する。また内枝は、甲状舌骨膜を貫いて喉頭上半分の粘膜に分布する。さらに交通枝によって下喉頭神経と交通する。)
- 920_21【Internal branch of superior laryngeal nerve内枝(上喉頭神経の) Ramus internus (Nervus laryngeus superioris)】 Branch piercing the thyrohyoid membrane together with the superior laryngeal artery. It extends to beneath the mucosa of the piriform recess and supplies the mucosa of the epiglottic valleculae, epiglottis, and larynx to near the rima glottidis.
→(上喉頭神経の内枝は外枝を含む上喉頭神経の最終枝で上喉頭動脈とともに甲状舌骨膜を貫通し、梨状陥凹の粘膜下へ達す。喉頭蓋谷、喉頭蓋および後頭の粘膜を声門付近まで支配する。)
- 920_22【Fourth cervical vertebra; C4 vertebra; [CIV]第4頚椎 Vertebrae cervicalis IV; [CIV]】
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- 920_22a【Cervical vertebrae [CI-CVII]頚椎[C1-C7] Vertebrae cervicales [CI-CVII]】 The seven cervical vertebrae.
→(脊柱上部の7個の椎骨。ナマケモノ2種を除くすべての哺乳類の頚椎は7個で共通している。第1頚椎(環椎)と第2頚椎(軸椎)は特異的な形をしているが、他の5個の頚椎は共通の特徴をもつ。第3~第7頚椎は下位のものほど大きいが、椎体は小さくて丈が低く、上・下面は前後に圧平された楕円形をしている。椎弓はやや横に張り出し、椎孔の形は三角形に近く、その内径も大きい。頚椎の横突起は他の椎骨に比して著しく幅が広く、かつ短い。その前半は肋骨の遺残であり、後半は本来横突起であって、上面では両者の間に脊髄神経溝がみられる。横突起の前後両部の間を、横突孔というかなり大きな孔が貫通しており、椎骨動脈が通っている。頚椎の棘突起は台7頚椎を除いて、一般に短小であり、ほぼ水平であるが、下位のものほど斜め後下方に傾斜する。棘突起の尖端は、多くは二分しており、その間を項靱帯が上下に走る(第6頚椎では二分が不明瞭なことがあり、第7頚椎では二分していない)。第7頚椎の棘突起は長大で、尖端が結節状に肥厚しており、皮膚の上から容易に触知できるので隆椎とよばれる。頚椎の上および下関節突起は丈が低く、前者は後上方に、後者は前下方に向かっており、下位の頚椎ほど突起の傾斜が著しい。第7頚椎では横突起の前半部が遊離していることがあり、頚肋という。)
- 920_23【Fifth cervical nerves; C5 spinal nerve; [C5]第5頚神経 Nervus cervicalis V; [C5]】
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- 920_23a【Cervical nerves [C1-C8]頚神経[C1-C8] Nervi cervicales [C1-C8]】 The eight spinal nerves of the cervical vertebral column.
→(頚神経は第1~8頚神経の総称である。各々の頚神経は前枝と後枝に分かれれる。第一頚神経の後枝は深項部の筋の上部を支配する純粋の筋枝であって、後頭下神経という。また第2頚神経の後枝はとくに強大であって、大後頭神経と名づけられ、深項部の筋に筋枝を与えたのち後頭部の皮膚に分布する。第3頚神経の後枝も比較的よく発達し、第3後頭神経と呼ばれる。第1~4頚神経の前枝は互いにワナをもって連絡して頚神経叢をつくり、第5~8頚神経の前枝も同様にして腕神経叢の主体となる。)
- 920_24【Trigeminal nerve [V]三叉神経[脳神経V] Nervus trigeminus [V]】 Nerve innervating the first pharyngeal arch. The fifth cranial nerve, comprised of two groups of fibers exiting laterally from the pons, innervates the muscles of mastication and supplies sensory information for facial sensation.
→(三叉神経は知覚部と運動部とからなる混合神経で脳神経中もっとも大きい。その知覚部は頭部および顔面の大部分に分布し、運動部は深頭筋、咀嚼筋、顎舌骨筋および顎二腹筋の前腹を支配する。その核は菱脳中に位置し、体性運動性の三叉神経運動核、知覚性の三叉神経主知覚核および三叉神経脊髄路核ならびに咬筋の筋知覚を司るといわれる三叉神経中脳路核などに分けられるが、これから出る線維のなかで、知覚神経線維は集まって知覚根[大部]を作り、運動神経線維は集まって運動根[小部]を作り、橋と中小脳脚との移行部において脳を去る。知覚根は側頭骨錐体部の三叉神経圧痕の上で大きい三叉神経節[半月神経節]を作り、これを出てから眼神経、上顎神経、下顎神経の3枝に分かれる。運動根は三叉神経節の下面の内側に沿って前進し下顎神経に合する。三叉神経は3枝に分かれた後にも各々の神経節を有し、眼神経には毛様体神経節、上顎神経には翼口蓋神経節、下顎神経には耳神経節および顎下神経節がある。これらのうち三叉神経節は脊髄神経節と同じ構造で体性神経系に属するが、他の神経節はその構造上から自律神経系に属するものである。)
- 920_25【Facial nerve [VII]顔面神経[脳神経VII] Nervus facialis [VII]】 Nerve arising from the second pharyngeal arch. It emerges from the brain at the pontocerebellar angle between the pons and inferior olive and passes with the vestibulocochlear nerve to the petrous part of the temporal bone, which it exits via the stylomastoid foramen. It supplies the muscles of facial expression.
→(顔面神経は第七脳神経である。狭義の顔面神経と中間神経とを合わせたもので、混合神経である。その主部をなす狭義の顔面神経は運動神経で、起始核たる顔面神経核は延髄上部から橋背部にかけてあり、これから出る神経は橋の後縁で脳を去り、内耳神経とともに内耳道に入り、その底で内耳神経と分かれ、内耳神経と分かれ、顔面神経管孔を経て顔面神経管に入り、間もなく殆ど直角をなして後外側に曲がる。この曲がるところは鼓室前庭窓の後上で顔面神経膝といい、ここに膝神経節がある。ついで弓状に後下方へ走り、茎乳突孔を通って頭蓋底外面に出て耳下腺中に入り、耳下腺神経叢を作った後、つぎつぎに多くの枝を出して広頸筋およびこれから分化したすべての浅頭筋(表情筋)、茎突舌骨筋、顎二腹筋後腹、アブミ骨筋などに分布する。以上の運動神経線維とは別に、膝神経節中の神経細胞から出る味覚神経線維が集まって、舌下腺および顎下腺に至る副交感性の分泌線維とともに中間神経を作り、広義の顔面神経の一部をなす。膝神経節細胞は偽単極性で、神経細胞より出る一条の突起はただちに分かれて、末梢および中枢の2枝となる。中枢枝は顔面神経に密接しつつ内耳道を経て脳に入って孤束核に終わり、末梢枝は、いわゆる上唾液核から出て舌下腺、顎下腺に至る副交感性の分泌腺にとともにいわゆる鼓索神経を作り、途中で再び分泌線維と分かれて舌神経に入り、舌体に分布して味覚を司る。)
Andersch, Ganglion of
- 920_26Andersch, Ganglion of【Inferior ganglion; Petrosal ganglion of glossopharyngeal nerve下神経節;錐体神経節(舌咽神経の) Ganglion inferius; Ganglion petrosum (Nervus glossopharyngeus)】 Lower, larger, sensory ganglion below the jugular foramen.
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- 920_27【Styloglossus muscle茎突舌筋 Musculus styloglossus】 o: Styloid process, i: Radiates from posterosuperior into the lateral part of the tongue and merges with the hyoglossus. It draws the tongue backward and upward. I: Hypoglossal nerve.
→(茎突舌筋は外舌筋の1つ。茎状突起(および茎突下顎靱帯)から放射して口蓋咽頭弓のレベルで舌に至る。茎突舌筋の線維の主部は舌縁で舌尖に向かって走り(筋の縦索)、個々の線維束は内側へ曲がり、横舌筋(内舌筋)の線維に付着する。)
- 920_28【Lingual branches of glossopharyngeal nerve舌枝(舌咽神経の) Rami linguales (Nervus glossopharyngei)】 Taste fibers for the posterior one-third of the tongue including the vallate papillae, which are also supplied by the lingual nerve via the chorda tympani.
→(舌咽神経の終枝で舌骨舌筋の内側を通って舌根に入り、舌根とこれに接する舌体の一部に分布する。)
- 920_29【Tonsillar branches of glossopharyngeal nerve扁桃枝(舌咽神経の) Rami tonsillares (Nervus glossopharyngei)】 Branches supplying the mucosa of the palatine tonsil and surrounding region.
→(舌咽神経の扁桃枝は口蓋扁桃窩からの感覚神経を運ぶ枝。)
- 920_30【Hyoglossus muscle舌骨舌筋 Musculus hyoglossus】 o: Body of hyoid bone and greater horn of hyoid bone, i: It attaches from inferior to the lateral parts of the tongue and extends anteriorly to the lingual aponeurosis. It draws the postsulcal part of tongue posteriorly and inferiorly. I: Hypoglossal nerve.
→(舌骨舌筋は長方形筋板として舌骨大角、ならびに舌骨体小部、および舌腱膜の外側縁の間に広がる。舌骨舌筋は下縦舌筋(内舌筋)および(存在する場合は)小角舌筋によってオトガイ舌筋から隔てられる。外側では、舌骨舌筋は顎舌骨筋、顎二腹筋及び茎突舌骨筋によって被われている。)
- 920_31【External branch of superior laryngeal nerve外枝(上喉頭神経の);外喉頭神経 Ramus externus (Nervus laryngeus superioris)】 Part giving off branches to the inferior constrictor muscle of the pharynx. It travels covered by the infrahyoid muscles to the cricothyroid muscle.
→(上喉頭神経の外枝は下咽頭収縮筋へ枝を出し、下舌骨筋に被われ、輪状甲状筋へいたる。)
- 920_32【Cricothyroid muscle輪状甲状筋 Musculus cricothyroideus】 o: Anterior and lateral from the cricoid cartilage, i: Inferior margin of the lamina of thyroid cartilage on the inner and outer surface of the inferior horn. If the thyroid cartilage is fixed, it tilts the cricoid cartilage with the arytenoid cartilages posteriorly, thereby tensing the vocal ligaments. I: External branch of superior laryngeal nerve (only one). It is composed in 50% of the following parts.
→(輪状甲状筋は前方で輪状軟骨の弓から起こり、傾斜した内側線維束および、より水平な外側線維束となって甲状軟骨下縁とその下角前縁へ停止する。臨床的に前筋anticusといわれる。作用は甲状軟骨を前方に引き下げる。この筋の作用によって甲状軟骨が前方に傾くと、甲状軟骨正中部の後面と披裂軟骨の声帯突起との間に張る声帯靱帯はややひっぱれて緊張する。すわなち、声帯ヒダの緊張筋である。)
- 920_33【Superior cervical cardiac branches of vagus nerve上頚心臓枝;上心臓枝(迷走神経の) Rami cardiaci cervicales superiores; Rami cardiaci craniale】 Branches to the deep part of the cardiac nerve plexus. They are given off to by the right and left vagus, sometimes at a very high level.
→(遠心性(大部分は節前)線維(それとおそらく求心性の線維も?)を、心臓神経叢の深部と心臓神経節に送る。)