脳の断面

迷走神経の高さ(延髄) Mに対する面

by 船戸和弥

片山正輝

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更新日:12/04/20

 

Anat Rec (New Anat) 269:99-106 2002に従いMRIとオリエンテーションを合わせる措置をとった。

 延髄下部は脊髄に似た構造をもつ。錐体の線維束は大部分が錐体の下部で錐体交叉となり脊髄側索の背側部を外側皮質脊髄路となって下行する。錐体の線維は一部交叉しないで、同側の脊髄前索路となって下行する。このレベルでの膠様質は、三叉神経脊髄路核の細胞群も含む。副神経脊髄根が外側にある。

延髄と脊髄の移行部(錐体交叉を通る断面) Nに対する面


01. Fasciculus gracilis(薄束)Gracile fasciculus

 →薄束はゴル束ともよばれる。楔状束(ブルダッハ束)とともに脊髄後索をなす。両側の後索は胸髄上部と頚髄において後中間中隔によって2分される。この中隔はおよそ第六胸髄の高さで認められ、薄束(内側)と楔状束(外側)を分ける。薄束は脊髄全長にわたって存在し、仙髄部、腰髄部、下位6胸髄部の後根由来の長い上行枝を含む。薄束は後索の内側部にある。体の下半分から線維を含む。触覚と深部知覚を伝える。Goll, Frindrich (1829-1903)スイスの解剖学者、チューリヒ大学の教授。脊髄後索の内側部(薄束)について1860年に記述(「Beitrage zur feineren Anatomie・・・」, Denk. Medchir. Ges. Kanton Zurich, 1860, 130-171).

 

02. Fasciculus cuneatus(楔状束)Cuneate fasciculus

 →楔状束はブルダッハ束ともよばれる。以前に同部についての報告はあったが、ブルダッハの正確な報告で知られるようになった。楔状束は最初、およそ第六胸髄の高さで出現し、上位の6胸神経と前頚神経の後根の長い上行枝を含む。薄束と楔状束の神経線維は同側を上行し、後索の延髄中継核、すなわち薄束核と楔状束核に終わる。後索系には2部があり、薄束(Goll束)および楔状束(Burdach束)として脊髄の後索を上行する。これらの線維束は太い後根線維の直接の続きであって、延髄の後索核にまで達してシナプス結合する。後索系は主として四肢から起こる線維からなり、系統発生的に新しくて、ヒトでもっとも発達している。ヒトではこの線維の長さは長いもので約150cmである。楔状束は後索の外側部。身体の上半分から起こる線維を含む。ドイツの解剖・生理学者Karl Friedrich Burdach (1776-1847)の名を冠する。

 

03. Tractus trigeminospinalis(三叉神経脊髄路)Trigeminospinal tract

 →三叉神経脊髄路は延髄から橋の横断面上にコンマ状に明確に認められる線維束。脊髄路核の各部の第Ⅰ層と第Ⅲ層細胞から起こる。これらのうち、下部と中間部からの線維は同側性であるが、上部からのものは両側性に下行し、後柱に入る感覚性上方を調節し、種々の反射に関係し、さらに三叉神経支配の受容器と脊髄の体性および内臓性効果器を連絡している。

 

04. Nucleus tractus spinalis tractus nervi trigeminalis; Nucleus spinalis nervi trigeminalis(三叉神経脊髄路核;三叉神経脊髄核)Spinal tract nucleus of trigeminal nerve; Spinal nucleus of trigeminal nerve; Spinal tract nucleus of CN V

 →三叉神経脊髄路核は三叉神経脊髄路の内側に沿ってあり、橋の三叉神経根のレベルから第二頚髄まで存在する知覚性神経核 。三叉神経脊髄路の線維は全域にわたってこの神経核の細胞に終止する。細胞構築上三叉神経脊髄核は①吻側部、②中間部、③尾側部に分けられる。

 

05. Tractus corticospinalis lateralis; Tractus pyramidalis lateralis(外側皮質脊髄路;錐体側索路)Lateral corticospinal tract; Lateral pyramidal tract

 →錐体側索路 錐体路線維のうち、錐体交叉で交叉する線維で構成される神経路をいう。反対側の脊髄側索後部(後側索ないし背側索)を下行し、途中で漸次脊髄灰白質に線維を出しながら、次第に小さな線維束となり脊髄下端まで達する。通常、9割以上の錐体路線維が交叉性で錐体側索を通ると考えられているが、これら交叉性の錐体路線維と錐体前索路を通る非交叉性のものとの割合は、特にヒトでは個体差が著しい。[医学大辞典:高田昌彦] 外側皮質脊髄路は脊髄全長にわたって下行し、全髄節の灰白質に線維を送り、尾方へ行くに従って徐々に小さくなる。下位腰髄と仙髄で後脊髄小脳路の下方では、外側皮質脊髄の線維が脊髄の背外側表面に達する。交叉性外側皮質脊髄路音線維は中間部で脊髄灰白質に入り、第Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の部分に分布する。サルでは少数の線維が直接前角細胞あるいは第Ⅸ層内のその突起に終わる。

 

06. Formatio reticularis(網様体)Reticular formation

 →網様体は延髄、橋、中脳においてその中心をなす構造で、系統発生的に古く、あまり境界の明瞭でない細胞群(核)からなっている。核を構成する細胞は多極性で、その形、大きさも変化に富んでいる。樹状突起は長く、広汎にに分岐し、そこに多種類の入力が収束する。軸索は上行枝と下行しに二分し、豊富な側枝により複雑な結合を行う。細胞構築学的には次の三つのあての細胞柱が区別される。①縫線核と正中傍網様体核群、②内側核群(腹側網様体核、正中網様体核、巨大細胞網様体核、橋被蓋網様体核)、③外側群(外側網様体核、小細胞網様体核、楔状核、脚橋被蓋核)。これらの核は種々の経路を介して非常に広汎な領域と関係している。入力は脊髄(脊髄網様体路、脊髄視床路)、脳神経(Ⅴ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ、Ⅹ脳神経の中枢枝)、大脳皮質(皮質網様体路)、小脳(室頂核網様体路、歯状核網様体路)、辺縁系(内側前脳束、背側縦束)、中脳(視蓋網様体路)に由来する。出力は視床(網様体視床路[中心被蓋路])、小脳(外側、正中傍、橋被蓋網様体核からの網様体小脳路)、脊髄(網様体脊髄路)などにいたる。また網様体にはモノアミン含有細胞が多数存在し、中枢神経系内で広汎な結合を行っている。縫線核群は世路と飲を含有する。核により結合は異なるが、脊髄脳神経核(Ⅴ-Ⅷ脳神経核、迷走神経背側核、弧束核)、オリーブ核、中心灰白質、小脳、四丘体、黒質、間質核、Darkschewitsch核、視床、視床下部、前頭葉、扁桃核、梨状葉、嗅球、嗅結節、大脳基底核などに線維を送る。アドレナリン含有細胞は青斑核のほかに弧延髄被蓋の腹側部や背内側部(孤束核の腹内側)に存在する。これらの細胞も広く、脊髄、脳神経核(ⅩⅡ、Ⅶ、Ⅴ脳神経核、迷走神経背側核、孤束核、蝸牛神経核)、オリーブ核、中心灰白質、四丘体、視床、視床下部、海馬、レンズ核、大脳皮質などに線維を送っている。

 

07. Nucleus supraspinalis(脊髄上核)Supraspinal nucleus

 →脊髄上核とは脊髄の前角内にあった運動核は下部延髄の背内方に続き脊髄上核と呼ばれている。さらに吻方に追っていくと延髄の中心管のすぐ腹外側にある舌下神経核に続いている。

 

08. Fasciculus longitudinalis medialis(内側縦束)Medial longitudinal fasciculus

 →前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、肥厚性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。

 

09. Tractus spinocerebellaris posterior(後脊髄小脳路;背側脊髄小脳路;フレヒシッヒ束)Posterior spinocerebellar tract; Dorsal spinocerebellar tract

 →後脊髄小脳路は胸髄核から出て交叉せずにすぐ側索周辺部の背側部を上行し、下小脳脚を通って同側の小脳の前葉、一部は虫部錐体、虫部垂などの皮膚に達する。脊髄の側索後外側辺縁部を上行するこの非交叉性の伝導路は胸髄核の大細胞から起始する。後根の求心性線維は直接に、または後索を上下行した後に胸髄核に終わる。胸髄核の大細胞は太い線維を出し、これは側索の後外側部(すなわち皮質脊髄路の外側)に入り、上行する。延髄にあってはこの伝導路の線維は下小脳脚に組み込まれ、小脳に入って同側性に虫部の吻側と尾側に終わる。虫部全部では線維は第Ⅰ小葉から第Ⅳ小葉に終わり、後部では主として虫部錐体と正中傍小葉に終わる。胸髄核は第三胸髄から尾方には存在しないから、尾方の髄節からの後根線維はまず後索内を上位の胸髄まで伝達され、それから胸髄核の細胞へ伝えられる。後脊髄小脳路を経由して小脳へ中継されるインパルスは伸展受容器である筋紡錘やGolgi腱器官および触圧覚受容器から起こる。胸髄核のニューロンは主としてⅠa群、Ⅰb群およびⅡ群の求心線維を経由する単シナプス性興奮を受ける。Ⅰ群の求心性線維と胸髄核の間のシナプス結合では高頻度のインパルスの伝達が行われる。一部の外受容器由来のインパルスもまた後脊髄小脳路を経由して伝達される。これらは皮膚の触覚と圧覚の受容器およびゆっくり反応する圧受容器に関係する。後脊髄小脳路は脊髄レベルおよび小脳の終始部において体部位局在性に配列されている。伝導路によって伝達されるインパルスは意識のレベルに達することはない。これらの伝導路によって伝達されるインパルスは姿勢とここの四肢筋の運動の細かい協調作用に役立っている。

 

10. Radix spinalis nervi accessorius; Pars spinalis nervi accessorius(脊髄根(副神経の))Spinal root of accessory nerve; Spinal part of accessory nerve

 →副神経の脊髄根は第1から第5(又は第6頚髄前角の細胞柱より起こる。この細胞から出た根線維には後外側方に弧を描き、脊髄外側面を後根と前根の間から出る。副神経脊髄根の各根線維は集まって1本の神経幹となり歯状靱帯の後方を上行し、大(後頭)孔を通って頭蓋腔に入り、最後は頚静脈孔を通って迷走神経、舌咽神経と共に頭蓋から外に出る。副神経脊髄根の線維は同側の胸鎖乳突筋と僧帽筋の上部を支配する。1側の胸鎖乳突筋の収縮は頭を反対側に向けるが、1側の副神経脊髄根の損傷は通常頭部の位置になんら異常を起こさない。しかし、外力に逆らって反対側に頭部を向ける力は著明に弱くなる。僧帽筋上部の麻痺は次の症状でわかる。すなわち①肩甲骨が下外方へ回る。②傷害側の肩が中等度下がる。

 

11. Tractus spinocerebellaris anterior(前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路;ガワース路)Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract

 →ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。

 

12. Fasciculus anterolateralis(前外側束;前外束)Anterolateral fascicle

 →前外側束は前外側索系の表層部にあたる。前外側は脳幹では網様体よりも外方に位置する。

 

13. Nucleus retroambiguus(疑核後核)Retro-ambiguus nucleus

 →疑核後核はOlszewski and Baxterの外側巨大細胞性網様体傍核lateral paragigantocellular nucleusの尾側部にあたる。疑核後核はおそらく咽頭筋支配運動ニューロンの集合領域である。

 

14. Nucleus supraspinalis(脊髄上核)Supraspinal nucleus

 →脊髄上核とは脊髄の前角内にあった運動核は下部延髄の背内方に続き脊髄上核と呼ばれている。さらに吻方に追っていくと延髄の中心管のすぐ腹外側にある舌下神経核に続いている。

 

15. Fasciculus longitudinalis medialis(内側縦束)Medial longitudinal fasciculus

 →前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、肥厚性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。

 

16. Tractus pyramidalis(錐体路)Pyramidal tract

 →錐体路本来の定義に従えば、起始領域、終枝部位に関係なく延髄の錐体(pyramis)を通るすべての神経線維群をいう。鳥類以下には見られず、哺乳類とくにヒトでよく発達しており意識的運動を司る。これらの大部分の線維は大脳皮質からおこり脊髄におわる皮質脊髄線維(または路)からなるが、若干の線維は錐体の経過中またはそれよりも前方のレベルでの神経路から離れて脳幹にある反対側の運動性の脳神経核および付近の毛様体(皮質網様体線維)におわる。これらの皮質核線維とよばれるものは厳密には錐体路に含まれないが、しばしば両者(皮質脊髄線維と皮質核線維)を一緒にして錐体路とよばれる。錐体路の起始細胞は、昔からの考えによれば起始細胞は、運動領皮質(4野)の第5層の巨大錐体細胞(Betz)で、その経路は、終脳の内包、中脳の大脳脚、橋の橋縦束、さらに延髄の錐体を下行し、脊髄前角にいたる有髄線維の集まりの長下行路である。その経路中、橋核、脳幹の網様体や運動核、またおそらく大脳基底核などに一部側枝を与え、延髄下端で大部分(91~97%)の線維が交叉し(これを錐体交叉という)これらは対側の脊髄側索(錐体側索路、外側皮質脊髄路)を下るが、小部分はそのまま同側の前索(錐体前索路、前皮質脊髄路)を下行する。しかし、錐体路の大脳皮質の起始領野をみれば、運動領(4野)のみでなく知覚領や連合領を含む他の領野まで包括される。起始ニューロンもBetzの巨大細胞のみならず、第5層に、みられる中型・小型の錐体細胞も証明されている。さらに脊髄の終枝部位についても前角の運動ニューロンに直接おわるものは動物による実験的研究で判明した限りではむしろ少なく、大部分は中間帯や後核基部におわり、介在ニューロンを介して運動ニューロンに影響を与えると思われる(間接皮質運動路)。錐体路の起始・終枝の問題だけでなく、錐体を構成する軸索には、古典的な錐体路以外の錐体外路系の線維も少量ながら含まれており、厳密には、延髄の錐体を通る線維群(錐体路)とそれ以外の運動系(錐体外路)とに分けることはむずかしい。

 

17. Radix anterior; Radix ventralis (Nervus cervicalis I)(前根;腹側根(第一頚神経の))Ventral root of 1st cervical nerve; Ventral root of first thoracic nerve

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