視神経[II]

 

 

 視神経は眼球網膜の第8層である神経細胞層中にある多極神経細胞から出る神経線維が集まって出来る神経である。すなわち杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。

 網膜が眼胚から発達するので経路に相応する。ヒトの視神経は眼球網膜の神経細胞層中にある多極神経細胞から出る100万本以上の神経線維からなる。すなわち、杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。

 

Stratum limitans internum内境界膜 inner limiting membrane

Stratum neurofibratum神経線維層 nerve fiber layer

Stratum ganglionare[視]神経節細胞層 ganglion(ic) cell layer

Stratum pelxiforme internum内網状層 inner plexiform layer

Stratum nucleare internum内顆粒層 inner nuclear layer

Stratum plexifome externum外網状層 outer plexiform layer

Stratum nucleare externum外顆粒層 outer nuclear layer

Stratum limitans externum外境界膜 outer limiting membrane (膜に小孔)

Conus錐[状]体 cones(Stabchen)

Bacillus杆[状]体 rods(Zapfen)

Stratum pigmentosum色素[上皮]層 pigment epithelium

 

 

A.視覚伝導路

 視覚伝導路は神経系の緒経路のなかで最も重要なものに属している。視覚伝導路に損傷を来す頻度も高いので、医師はその伝導路についての知識と理解を完全なものとしておくべきある。

 物体から眼球内に進んだ光線は水晶体の屈折作用(逆転像形成をもたらす)を受けた後に、眼球の神経層、すなわち網膜にぶつかる。網膜には何種類かのニューロン(それには光受容性の桿体細胞、錐体細胞が含まれる)の層状配列がみられる。おのおのの眼に耳側と鼻側の両視野が存在するが、水晶体の像逆転作用のために耳側視野は網膜の鼻側半に投射され、鼻側視野は網膜の耳側半に投射される。患者の部分的な視野欠如を記載するときには、網膜野ではなく視野で表現する方法が常に用いられる。異常の点を学生は最初、非常に紛らわしく感じるかも知れないが、どうか注意深くゆっくりと読み返して欲しい。

 眼球内の視神経細胞から伸びた軸索は、視神経のなかを後方に向かって走り、視神経交叉のところでは鼻側半網膜からの軸索が交叉し、耳側半網膜からの軸索(非交叉性に)と合流して視索を形成する。視索のなかをさらに後方に走る軸索は、やがて外側膝状体(間脳の一部分に)に達し、ここで次のニューロンへの信号伝達がシナプスを介し行われる。非交叉性に走るものは外側膝状体の第2,3,5層に終わり、交叉性に走行するものは外側膝状体の1,4,6層におわる。外側膝状体から始まるニューロンの軸索は、外側膝状体の第3層~6層の小細胞層から始まる。視放線を形成しつつ大脳表面に次第に近づき、後頭極の視覚領皮質に達して終わる。視覚領皮質は後頭極より始まり、楔部と舌状回(二者の境が鳥距溝)にかけての広がりを示す。また、左右の眼球の左視野情報が右の後頭葉皮質に伝えられる(左右眼球からの右視野情報は左の後頭葉皮質へ伝えられる)点に、十分注意されたい。水晶体の像逆転作用のために、上方視野上方が網膜の下半に、下方視野上方はその逆すなわち網膜の上半に、それぞれ到達することも忘れては成らない。このような上・下視野の区別は視覚伝導路の全体で維持されており、鳥距溝より上に位置している楔部が下方視野上方を同溝よりも下に位置している舌状回が上方視野上方をそれぞれ受ける。最後に、黄斑と呼ばれる網膜の中で最も鋭敏な視覚の得られる部位からの神経信号は、後頭極に送られる。

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B.視覚反射

 視覚反射には、大脳皮質の関与しない皮質下反射と、大脳皮質が関与している皮質性反射がある。皮質下反射は、眼球の位置の調節と視覚器の調整をするもので、求心性線維は視神経、前庭神経、聴神経、脊髄からの上行性線維などを採っている。眼球の位置の調整は、主に上丘により行われている。視覚器の調整には、光の強さにより瞳孔の大きさを調節する対光反射がある。この反射は視蓋前域である。

 皮質性視覚反射には、眼球の位置を固定する反射と、調節反射とがある。眼球の位置の固定には後頭葉が関与している。調節反射は、みようとする物体が、遠いところにあるか、近いところにあるかによって、眼球の位置を変え、瞳孔の大きさを変化させ、水晶体や角膜の小節をして焦点を合わせる反射である。

 

①対光反射

 万年筆型の発光装置などを用いて眼の近くから光の小束を一眼に入射させるとき、両眼に反射的な瞳孔縮小(すなわち共感性対光反射)が起きる。視索線維は外側膝状体に終わる。しかし、視索線維のうち約1%は、外側膝状体に達する直前に向きを転じて中脳の視蓋前核に終わる。この核から始まる短いニューロンが副交感性のエディンガー・ウェストファル核Edinger-Westphal nucleusに達していて、後者は光刺激に応じた瞳孔括約筋収縮信号を自動的に出すので、その結果縮瞳がもたらせる。これが対光反射である。対光反射には、光が当たった瞳孔が収縮する直接反射と、反対側の動向が収縮する交感性反射とがある。対光反射の求心路は視神経を通り、上丘腕を経由して視蓋前域に到達する。視蓋前域からはの情報は両側の動眼神経副核に至り、毛様体神経節で中継している。毛様体神経節の細胞の軸索は、短毛様体神経を通って眼球にはいり、瞳孔括約筋に達している。一眼からの光刺激が両眼の縮瞳反射を起こす道筋には、以下の3通りが考えられる。

 

1.光を受けた眼球の鼻側半網膜からの線維が視神経交叉経由で、反対側の視蓋前核に達する。

 

2.左右の視蓋前核をつなぐ交連ニューロン(その線維が後交連を通過)が存在するので、一側核に達した刺激は反対核へも容易に伝達される。

 

3.右または左視蓋前核から発し左右のエディンガー・ウェストファル核に至る神経路が存在する。

 暗いところで、瞳孔が大きくなる反射経路は複雑である。求心路は視神経を経て、毛様体脊髄中枢とよばれる。第一胸髄の中間外側核に到達する。ここから、第一胸神経を通って交感神経管に入り、上頚神経節で中継する。上頚神経節を構成する神経細胞の軸索は、長毛様体神経を通って眼球に入り、瞳孔散大筋に終止している。

 

②瞳孔調節のための神経反射路

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 各動物の眼球の調節機構は、それぞれの動物の生活様式を反映している。魚類では、近くの物体に焦点が合っており、両棲類では、遠くの物体に焦点が合っている。哺乳類では、遠くの物体に焦点が合っている。このため、哺乳里では、近くの物体を見るときは、眼球を内転させ、瞳孔を収縮させ、さらに近くの物体に焦点を合わせることが必要になる。このうちで最も重要なものは焦点を合わせることである。焦点を合わせるには、水晶体を変化させて焦点を合わせる水晶体性調節と、角膜の形を変えることにより行う角膜性調節とがある。水晶体性調節には、水晶体の位置を替えることにより焦点を合わせる外的水晶体性調節と、水晶体の屈折率を変えることにより行う内的水晶体性調節とがある。角膜性調節は、角膜の弯曲の都合を変えることにより行うもので、毛様体筋の輪状線維が収縮すると角膜の弯曲が大きくなり、屈折が増加する。

 角膜の屈折率は、水の屈折率とほとんど同じであるので、水中で生活している魚類や多くの両生類では、角膜性調節は行われず、もっぱら水晶体性調節、特に外的水晶体性調節が行われる。しかしながら魚類と両生類とでは、外的水晶体性調節の機序が異なっている。魚類では遠方の物体を見る際に、水晶体を後ろに引いて焦点を合わせるのに対して、両棲類では近くの物体をみるときに、水晶体を前方に移動させて調節している。これ以外の動物では、内的水晶体性調節と角膜性調節の両方が行われており、進化が進にしたがって、角膜性調節の役割が大きくなる傾向がある。内的水晶体性調節の方法は、爬虫類や鳥類と、哺乳類とでは異なっている。爬虫類や鳥類では、毛様体筋が水晶体の周囲を取り巻いているので、毛様体筋が収縮して水晶体を周囲から圧縮して厚みを増しているのに対し、哺乳類では、毛様体筋のうちの輪状筋が収縮し、毛様体小帯が弛んで、水晶体の弾性で厚みを増している。哺乳類では、水晶体の弾性がなくなると毛様体筋が収縮しても水晶体が厚く成らず、焦点が合いにくい老眼となる。

 調節反射の求心路は、視神経を通り、外側膝状体を経由して視覚野に到達する。遠心路は視覚野から視蓋前域に至り、ここから動眼神経副核に到達し、動眼神経を通って毛様体神経節で中継する。毛様体神経節にある神経細胞の軸索は、短毛様体神経を通って眼球に入り、毛様体筋と瞳孔括約筋に終止している。

 神経梅毒では、対光反射が消失するが、調節反射は残っている。このような症状を、アーガイルロバートソンの瞳孔とよんでいる。両反射が個別に障害されることから、視蓋前域で、この両反射に関与する細胞は、個別の細胞であると考えられている。

 

C.視覚伝導路の臨床的側面

 一眼または両眼における完全あるいは部分的視力障害が、神経膠腫、髄膜腫、卒中、動脈瘤、感染、脱髄性疾患などが原因となって生じる。これらの病変は、視覚伝導路のどの部分でも起きうるものである。視神経の病変は、患者眼だけの視力障害、瞳孔の対光反射(直接反射)消失を招く。下垂体腺腫が視神経のける交叉線維群を圧迫・変性させるときは両眼視野の耳側半が損なわれ、視交叉の右へり(または左へり)を走る非交叉線維群を圧迫・変性させるときは右眼(または左眼視野)の鼻側半が損なわれる。視放線をなす線維群には、鳥距溝の上唇(楔部皮質)に向かって比較的まっすぐに後走するものと、前方へのアーチ(マイヤー曲部、マイヤー・アルシャンボー曲部)を側頭葉のなかで描いてから鳥距溝の下唇(舌状回皮質)に向かい構想するものなどがある。側頭葉病変でマイヤー曲部がおかされた場合、あるいは舌状回に進む線維に影響が及んだ場合には、両眼視やの上半における同側性1/4欠損を来す。両眼視野の下半における同側性1/4欠損を来す。両眼視野の下半における同側性1/4欠損は、視放線の上部線維(頭頂葉のなかを走るもの)や楔部皮質に進む線維の病変によりもたらせる。鳥距溝沿いの視覚領皮質が丸ごと病変に陥ったとき(後大動脈末梢枝の閉塞など)は、両眼視野における右半分または左半分の欠損、ただし黄斑回避を伴うものが起こる。これと同じ視野欠損(ただし黄斑回避なし)は、一側視索の障害でも起きる。外側延髄症候群をもたらす血管病変、脳幹神経膠腫、延髄空洞症などが、視床下部や中脳から下行し上位胸髄の中間質外側部に至る神経路を遮断することがある。これは遮断部位と同じ体側に出現するホルネル症候群(眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥凹、無汗)をもたらす。

 

①視神経反射の臨床的側面

 光刺激に対する瞳孔反射は、臨床的分野での最も有用かつ重要なものの1つである。この反射は意識を失っている患者でも起こすことができる。もしも、この反射の消失を認めれば、それは中枢神経系、とくに脳幹部分に重大な変化が起きていることを指し示している。さらに、一側眼に対光反射を示さない散瞳状態があれば、それは脳ヘルニアのための中脳と動眼神経が圧迫を受けている可能性を示す重篤な状態であり、ただちに脳神経外科医に伝えなければならない。

 脳の損傷または頭蓋内圧亢進を有する患者には、モルヒネを投与しないようにすべきである。その理由は2つあり、第一はモルヒネが持続性の頑固な縮瞳をもたらすために、医師による対光反射の検査(患者の頭蓋内で今何が起きているのかを知る手がかりを与える)が不可能になると言う理由、第2はモルヒネが脳浮腫をもたらし、患者の脳をさらに危険にさらす恐れがあるという理由である。

 瞳孔反射がもたらす散瞳あるいは縮瞳の状態は、全身麻酔を行う際の重要な指針にもなる。すなわち、麻酔医は患者が示す散瞳や縮瞳の程度により(もちろん、他の徴候所見とも併せてい、麻酔の深さを非常に正確に判断するのである。

 エディンガー・ウェストファル核は眼の調節反射(注視物の距離に合わせて水晶体の厚さが無意識のうちに変わる現象を主体とするもの)にもかかわっている。すなわち、この核より発した運動信号が節前・節後ニューロンを経て毛様体筋に達し、この筋の収縮が水晶体前後径の変化をもたらす。眼の調節反射は大脳皮質の諸領域、さらにはペルリア核(両眼のより目状態をつくるのに関与)などをも巻き込んだ、複合性反射である。

 眼球内をのぞき込むための窓、すなわち瞳孔をより大きくするためにアトロピン溶液(アトロピンは使用後の長時間にわたる眼の調節麻痺を来す。作用時間の短いアトロピン誘導体薬物が今日では多く使われている)の点眼法が用いられること、およびその際には被検眼に緑内障が存在しないことを確認する必要があること(緑内障眼では散瞳が急激な眼球内圧上昇につながり網膜損傷を来す恐れが高いため)。

 緑内障とは、眼球内圧の上昇を伴うような急性、あるいは慢性の眼疾患のことであり、これを放置すれば失明を招きやすい(たとえ検出されて治療が施された場合でも、緑内障が米国内での失明主因をなしている)。緑内障患者は、しばしば光源のまわりにかさのようなものがみえると訴えるので、これが病既発見のための参考となる。しかしすべての緑内障患者がそのような経験をするわけではなく、自覚症状を欠く初期緑内障の例も存在する。緑内障の検査に当たっては、被験者の角膜表面に眼圧計を装着し眼球内圧(正常値:13~29mmHg)の値を読みとる。

 

解剖学用語(視神経)

1. 視神経 [II] ラ:Nervus opticus [II] 英:Optic nerve [II]

 →第二脳神経で眼球の内側下方の極よりでて、視交叉まで。