Rauber Kopsch Band1. 27

V. 上肢骨の連結Juncturae ossium extremitatis thoracicae

A. 上肢帯骨の連結Juncturae sssium cinguli extremitatum thoracicarum

 上肢帯はただ1つの揚所で胴の骨格と関節結合している.すなわち胸鎖関節Articulus sternoclavicularisで胸郭と結合しているのである.また鎖骨の外側端は肩甲骨と結合している.そのほかさらに肩甲骨固有の靱帯が区別される.

 a)肩甲骨の固有の靱帯

 α) 肩甲横靱帯Lig. transversum scapqlaeは肩甲切痕を橋わたしてこれを孔にしている.この孔の中を肩甲上神経が通っているが,肩甲上動静脈の方はたいていこの靱帯の上を走っている.この靱帯は骨化することもある(図409, 411, 413, 414).

 β)烏口肩峰靱帯Lig. coracoacromialeは幅のひろい強大な靱帯で,肩峰の前縁かち烏口突起にいたる(図410).

 この靱帯は肩関節を上方から保護し,また肩関節包の下壁とともに腕が水平よりも高く挙上されるのを妨げている.

 b)上肢帯と胴との結合すなわち胸鎖関節Articulus sternoclavicularis (図408).

 この関節をつくっている骨は胸骨と鎖骨である.

 関節面は胸骨の鎖骨切痕Incisura clavicularisと鎖骨の胸骨関節面Facies articularis sternalisである.

 これら両関節面は形がはなはだしく食い違っており,またその形が個体によって非常にまちまちである.

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鎖骨の胸骨関節面は鞍形で,胸骨の鎖骨切痕の関節面から前方・上方および後方にはみ出ている.鎖骨切痕の関節面も同様に鞍形で後方に向いている.両関節面は線維軟骨で被われており,その厚さは胸骨の関節窩では一様で1~1.5 mm,鎖骨では不均等で上内側部で2.5mm, 下外側部で0.5 mmある.

 関節包はゆるくて,厚く丈夫である.そして前下方の隅を除いてほとんどどこでも特別の線維束で補強されている.

 特別の装置として,ぐるりと全周で関節包と癒着した線維軟骨性の関節円板がある.これは両関節面の形の不一致を均らすとともに,関節腔を2室に分けている.

 関節円板はしばしば明瞭に一面が凸, 他面が凹の弯曲を示すが,またしばしば不規則な形の板をなすこともある.,一番厚いところは後上部(3~5mm)で,ここは鎖骨の関節軟骨も最も厚い場所に当っている.

 この場所では3つの軟骨層(鎖骨および胸骨の関節軟骨と関節円板)の全体の厚さが13mmにも達することがある.このクッションの層が腕のはたらきに対して大きな意義をもつことは,説明するまでもなく明かであろう.

[図408] 鎖骨・胸骨・第1肋骨のあいだの靱帯 前面(4/5)

 補強靱帯胸鎖靱帯Lig. sternocIaviculare,鎖骨間靱帯Lig. interclaviculare,肋鎖靱帯Lig. costoclaviculareである.

 胸鎖靱帯は関節包の前面を被い.鎖骨の胸骨端から起って胸骨に付く.鎖骨間靱帯は鎖骨端から起って,胸骨に付く.鎖骨間靱帯は鎖骨の内側端の上縁から起って,他側の鎖骨の同じ場所に終る.肋鎖靱帯は鎖骨の上縁から第1肋軟骨にいたる強い線維束である.

 力学:この関節では全く任意の運動が可能である.すなわち関節の中央を通る無数の軸を中心にして運動しうるのである.強いて名づけるならば,不正球関節とでもいうべきものである.ただ生体でこの関節において特定な回旋運動だけを意識的に行なうことは不可能である(R. Fick).

 胸鎖関節の血管は内胸動静脈から来る.また神経は内側の2つの鎖骨上神経から来る.

 c)上肢帯の各骨のあいだの結合は肩鎖関節Articulus acromioclavicularis, Schultereckgelenkである(図411, 413).この関節をつくる骨は肩甲骨と鎖骨である.

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[図409]右の肩関節(4/5)前額断面を後方からみる.

[図410]右の肩関節(4/5)関節窩と関節唇・関節包を切断し,上腕骨を除いてある.

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 関節面は鎖骨の肩峰関節面Facies articularis acromialisと肩峰の関節面Facies articularis aclomiiである.

 両関節面の形と大きさは個体によって非常にまちまちである.両関節面の輪郭はほぼ楕円形である.鎖骨の関節面は後外側に両き,肩峰の関節面は前内側に面している.同時に前者はやや下方に,後者はやや上方に向いている.

 関節包はゆるやかで,前方では後方よりも厚い.

 特別な装置としては関節円板があるが,これはたいてい不完全で,形や構造湊非常にまちまちであって,時どき欠けていることもある.関節腔がこの関節円板によって完全に2室に分けられることは全例の1%にしかない(Krause).補強靱帯としては2~4 mmの厚さの肩鎖靱帯Lig. acromioclaviculareがあって,ことの関節を上方から保護している.

 力学:肩鎖関節はこの関節自身を貫く軸,あるいはそれから遠くないところを通る軸による任意の運動を肩甲骨にゆるしている.それでこの関節はごく単純に球関節とみなすことができる(R. Fick).

 血管は肩峰動静脈網から来る.神経は前胸神経の1つ・鎖骨上神経・腋窩神経から来る.

 鎖骨は烏口突起の上方を走る間に2つの強大な補強靱帯によって烏口突起と結ばれる.これはいっしょにして烏口鎖骨靱帯Lig. coracoclaviculareとよばれる(図413).両者はたがいにつながり合っていて,そのうち前方の靱帯は菱形部Pars trapezoides,後方のものは円錐部Pars conoidesと名づけられている.両者のあいだに時どき滑液包がみられる.

 鎖骨と烏口突起のあいだに(その頻度はあまり高くないが)真の関節が認められることがある(E. Miessen, Anat. Anz.,83. Bd.,1937を参照).

[図411]右の肩鎖関節 肩甲骨と肩関節の靱帯(4/5,上からみる)

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最終更新日 13/02/04

 

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