Rauber Kopsch Band2. 21

a)内部(女性の内部生殖器)

1. 卵巣Ovarium(Oophoron),Eierstock(図273281, 284, 285, 290)

 卵巣は左右1つずつある女の生殖腺であって,平たい長円形をしていて,子宮卵巣索Chofda uteroovarica, Eierstotkbandという3~4cmの長さの丈夫な索によって子宮の側縁の後上部に結びういている.

 卵巣を固定するのにはさらに腹膜も関与している.卵巣のまっすぐな付着縁,すなわち卵巣間膜縁Margo mesovaricusほ卵巣門Hilus ovariiをもっている.その反対側には自由縁Margo liberという凸縁がある.面の1つを内側面Facles medialisといい,もう1つの面を外側面Facles lateralisという.また1端を子宮端Extremitas uterina,他端を卵管端Extremitas tubalisという.

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 卵巣の長さは2.5~5cm,幅は1.5~3cm,厚さは0.6~1.4cmで,重さは5~8grである.(日本人の成人の卵巣の平均重量は左5. 82gr,右5.71grである(岡暁,京都医誌,38巻,昭和16年下).)

 卵巣の色は白色ないし帯紅白色である.表面は最初の月経がおこる前は平滑であるが,それ以後はデコボコがあり,小さなくぼみや疲痕が見られる.表面は無光沢で,やや透明な観を呈するが,卵巣門のまわりには光沢のある腹膜が認められる.

[図275]女の骨盤の内臓

 骨盤の右半分をそのままにして左側から剖出してある.(9/20)

 卵巣は腺組織と結合組織, それに血管と神経をもっている.外方の結合組織の層は被膜であって,ここでは線維の方向がたがいに交叉しており,つながりあった2層ないし3層の結合組織からできている.この被膜の外面は1層の丈の低い円柱形の上皮細胞,すなわちいわゆる胚上皮Keimepithelで被われている.被膜に続いて皮質Rindensubstanzがあり,そこに卵巣の腺組織Drüsengewebeがある.最後に門につづくところに髄質がある(図273).

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 髄質Marksubstanz(図273, 2)は軟かくて海綿状で疎性結合組織からできている.この結合組織は門からはいってくる多くの血管で貫かれている.

 皮質Rindensubstanzは卵巣のなかでもっとも重要な部分である.すなわちこの部分が卵巣の本来の成分である腺組織をもっている.腺組織は卵胞Folliculi ovarii, Eifollikelnからできている.卵胞は上皮性の小さな球状の袋で,そのなかにおのおの1個の卵をもっている.

[図276]女の骨盤部の正中断 (9/10) (Waldeyerの著“Becken”による).

卵胞の多数のものは顕微鏡でみる程度の小さいもので,卵巣の周辺,すなわち卵胞帯Follikelzoneにある.卵胞帯は門のところを除いて卵巣の全体にひろがっている.比較的大きい卵胞は皮質のやや深い層にある.もっとも大きい卵胞は直径が15mmないしそれ以上まで達し,卵巣の表面を球状にもりあげ,髄質から表面にまでも達している.新鮮な卵巣では,かなり大きな卵胞が表面に達しているところは透明な円い場所として認められる.

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 Ovula, . Eier(図274, 277280)は出来上がった状態では直径が0.17~0.22mmの球形の細胞である.小胞状の核が細胞の中心の近くでややかたよって存在する.その直径は30~45µで,静止期にはクロマチンの網をもち,また核の壁の近くに核小体を1個もっている.

 左右の卵巣が有する卵の数はHäggströmによると400,000を越える.そのうち50µ以下の卵胞は388,000で,100µ以上の卵胞は219だけである.

 核を2つもつ卵と核を1つもつ卵の比は1:416である(Upsala Lakare förenings förhandlingar. Ny följd., 26. Bd.,1921). Stieveによると保存し包埋した標本で人の成熟卵は透明帯をもったままで0.11~0.14mmの直径しかもっていない. Z. mikr.-anat. Forsch., 53. Bd.,1943. Warren. H. Lewis(Bull. J. Hopkins Hosp., 48. Bd.,1931)は人の卵管にあった未受精卵は保存液につけてないとき,完全な球形ではなくて,透明帯を含めたその直径は0.145と0.151mmであり,透明帯を含まぬと0.136mmであったという.

 卵の核は昔から胚小胞Vesicula germinativa, Keimbläschenとよばれ,核小体は胚斑Macula germinativa, Keimfleckと称せられてきた.卵の原形質は卵黄Vitellus, Dotterとよばれる.卵黄はある発育段階から後は,ガラスのように透明なかなり目立った透明帯Zona pellucida(卵膜Oolemmaともいう)によってとりかこまれている.その厚さは7~12µである(図280),透明帯は同心性の細かい条をもち,また密に並んだ放射状方向の小さい孔をもっている.卵黄はやや黄色をしていて,色の淡い多数の粒子が散在する原形質からできている.この粒子は副形質Deutoplasmaとして特に区別されており,原形質Protoplasmaに相対するものである.

 若い卵は卵胞帯のなかで1層の扁平な卵胞細胞Follikelzellenによってとりまかれており,それによって周囲の線維性結合組織から境されている.若い卵はそれを取りかこむ細胞とともに原始卵胞Folliculus ovarii primariusと名づけられる(図274).

 原始卵胞はこのような状態で何十年間もいおゆる“1静止期erste Ruheperiode”にとどまり得るのである. “1成長期erste Wachstumsperiode”は卵母細泡のでぎ始めから東冶卵泡の形成までである.

 “2成長期zweite Wachstumsperiode”においては原始卵胞から2次卵胞,さらに直径5~8mmの胞状卵胞ができる.このとき卵細胞は0.1~0.13mmの大きさとなる.

[図277279]いろいろの発育段階の2次卵胞

[図277]1層の卵胞上皮をもつ2次卵胞 21才の女の卵巣から.×200

[図278]多層の卵胞上皮をもつ2次卵胞 21才の女の卵巣から.×200

[図279]2次卵胞 32才の女の卵巣から.卵胞液,卵丘,放線冠.×100

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 原始卵胞がもっている1層の扁平な卵胞上皮の細胞はその数を増し,同時に層の数も次第にふえていく(図277279).こうなった卵胞を2次卵胞Folliculi ovarii secundariiという.卵胞細胞の間の1ヵ所,あるいは数ヵ所(後には融合して1つになる)に初めは小さいが,すぐ皿のような形でひろがる隙間ができる.そのときに周囲の卵胞細胞は液体を分泌し,一部の卵胞細胞は核分解の過程をへてその液体にとけこんでしまう.この液体は卵胞液Liquor folliculiといい,隙間がひろがるとともに次第に量をまし,卵は多数の卵胞細胞に包まれて卵胞の壁におしつけられ,そして卵胞細胞は増殖を続けてゆく.こうして初めは充実していた卵胞が今や大きな胞状卵胞Folliculus ovarii vesiculosus, Bldschenfolliket(グラーフ卵胞Graafscher, Follikel)となり,その直径は8mmにも達する.卵は卵胞のなかで卵巣の表面とは逆のがわにあって,卵胞細胞によって包まれている.(図273, 279).

 そのあいだに卵の発育もすすみ,その被膜である透明帯も厚くなる.同時に卵巣の支質から卵胞上皮を包む被膜ができる.これを卵胞膜Theca folliculiという.かなり発達した卵胞ではこの被膜に,内方にあって細胞と血管に富む内層Stratum internumと,それより強靱で線維に富む外方の外層Stratum externumが区別される.胞状卵胞はStieve(1943)によるとこの状態を何ヵ月も続けている.この期間を“2静止期zweite Ruheperiode”という.

 したがってグラーフ卵胞には,1. 外方の結合組織の被膜,すなわち卵胞膜Theca folliculi(その内側の部分は血管とリンパ管を豊富にもっている)2. 卵胞壁のところにある多層の卵胞上皮,すなわち卵胞顆粒層Stratum granulosum folliculi(簡単に顆粒層Granulosaとも呼ばれる),および卵をふくんで卵胞腔に突出している卵丘Cumulus oviger, Eihtigel, 3. 卵胞液Liquor folliculiがある.

 卵巣のなかで卵胞がどのように分布しているかというと,すでに述べたごとく約40µくらいの,最も小さい卵胞はその大多数が卵胞帯にある.それよりいくぶん大きいものはそれより少し深いところに散らばつている.そこには0.5~0.6mmの直径をもつ,かなり大きな卵胞もあって,たいてい1列にならんでおり,よく発達した卵巣では50から200,ないしはそれ以上存在する.

 さて次ぎにくるのが“成熟期ReifePeriode”で,これは卵胞の破裂する時までである.この時期には細胞はかなり短い期間に破裂するまでに成熟し,そのときの直径は15mmないしそれ以上である.このときに顆粒層の細胞も増殖して,8~16層をなして重なる.卵丘もいっそう細胞が豊富になる.卵巣の表面にもりあがった卵胞壁に1少部分だけ単層の上皮をもったところがある.ここは卵胞膜もきわめて薄く,卵胞の破裂がここでおこるのである.卵胞が破裂すると,卵は放線冠Corona radiataという冠状をなして密集した2層ないし3層の卵胞細胞によって包まれたまま外に押しだされる.これが排卵Ovulationであって,卵はついで卵管に達する.卵は卵管で受精をしてさらに発達してゆくかあるいは受精しないで体からすてられる.

 グラーフ卵胞の成熟は性的に成熟した女においては周期的におこる.普通は28日間,つまり1回の月経の初まりから次の月経の初まりまで,すなわち性周期Zorklusと呼ばれる間に1つの卵胞が完全に成熟する.グラーフ卵胞は完全に成熟すると破裂する.それは月経周期の第14~16日目であることがもっとも多い.しかしStieveによると何日目でも排卵は起りうるという.

 卵じしんはまず卵管にはいり,ついで子宮に達する.ところが一方,破裂した卵胞の上皮からは,その個々の細胞の容積が増大することだけによって(細胞の数はふえない)黄体Corpus luteum, Gelbkörper(図281)ができる.これには卵胞の結合組織の壁も関与している.黄体の直径はほぼ1cmに達することがある.その中心は初めは血液で充たされた腔所である.あとになって現われるヘマトイディンの結晶は初めに流出した血液が変化して生じたものである.

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 黄体は初めは赤体Corpus rubrumというが,2日目遅くとも3日目には黄体になる.それとともに大きくなった卵胞細胞の内部には多数の脂肪粒子が現われて,血液は吸収され,ついでルテイソ細胞による黄色調がはつぎりと現われてくる.これがいわゆる“開花の状態Zustand der Blüte”である.その期間がどのくらい続くかはまだ確定していない.それに続いて血管が減少して黄体が萎縮し,脂肪化が起こって退縮する.その最後の残りものとして結合組織性の白い痕ができる.これを白体Corpus albicansという.初めの出血の残りものの量が多い場合セこは,昔の解剖学では黒体corpora nigraと呼んでいた.黄体を妊娠黄体Corpus luteum graviditatisと月経黄体Corpus luteum menstruationisに分ける.妊娠黄体はちょうどその卵胞から出た卵子が受精して,子宮のなかで発育しているときに生ずるものである.月経黄体は持続が短くて,大きさもいっそう小さい.

 最終月経のときに成熟していた卵が受精したのか,あるいは最初に月経がなくなったときの卵が受精したのかという問題については今もなおいろいろの説がある.この2つの可能性があるわけであるが,婦人科手術の結果によれば後者の見解が正しい.妊娠のときの胚の発達をみると,月経の後に成熟した卵の方があてはまるのである.

 卵巣にあるすべての卵胞が成熟するのでは決してない.退縮をはじめた大小いろいろの,まだ破裂しない卵胞が左右の卵巣に見られる.卵胞の退行という重要な現象については数多くの研究がなされ,卵胞閉鎖Atresia folliculiと名づけられている.その結果として閉鎖体Corpus atreticumができる.グラーフ卵胞のあいだにある結合組織は卵巣支質Stroma ovariiといい,その結合組織細胞は体が短くて,紡錘形または円みをおびた形をしており,突起をもっていたり,もっていなかったりする.そのほか血管に伴なって線維性結合組織のかなり長い束があり,これが弾性線維をもっている.また(Ferner, Z. Gynäk.,1951)格子線維の網材がある.

 髄質はすなわち門支質Hilus-Stromaという基礎層のところでは主として線維性結合組織からできている.

[図280]透明帯と放線冠をもった成熟卵 破裂直前の卵胞のもの,38才の女.×250 (Stieve, H., Z. mikr.-anat. Forsch., 53. Bd.,1943による)

[図281]黄体 卵胞破裂後14日目=性周期28日目.×5

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この結合組織はかなり太い束をなして血管に伴ない,また動脈の周りでは平滑筋ももっている.

 卵巣門の組織のなかで,しかもたいていは神経のそばに,あるいは神経の内部のことも多いが,大きい細胞の1群があって,この細胞は形態学的には精巣の間細胞Zwischenhodenzellenの特徴をすべてそなえている.後者と同じく,この大きい細胞は大小いろいろの細胞内粒子の集りをもっており,細かい線維よりなる結合組織の膜で包まれ,またリポイド粒子や色素粒子,あるいはラインケ結晶Reinkesche Krystalleをもっている.したがってこの細胞を“extraglanduläre weibliche Zwischenzellen(女性の腺外性間細胞)”という(Endokrinologie,1. Bd. ).

卵巣の血管とリンパ管

 卵巣の動脈は大動脈から出ている卵巣動脈A. ovaricaの諸枝と,内腸骨動脈から来ている子宮動脈の卵巣枝R. ovaricusとである.動脈は卵巣門から入り,門支質で枝分れし,うねったり,ラセン状の経過を示していることが著しい.皮質ではとりわけ豊富な網を作って胞に接してひろがっている.なかでも卵胞膜の内層にそれが多く分布するのでこの層を卵胞脈管膜Tunica vasculosa folliculiといい,それに対して卵胞膜の外層を線維膜Tunica fibrosaという.

 静脈は動脈の枝に沿っていて,かなり太い口径をもち,門のところで太い小幹がたがいに合して静脈叢を作っている.

 リンパ管は卵巣の表面で密な網を作っており,また皮質のなかにも豊富にある.皮質では特に卵胞膜のなかで椀状に広がった網をなしている.門のところからはかなり太いリンパ管の幹が出て,卵巣動静脈に沿って腰リンパ節にすすんでいる.

卵巣の神経

 神経は乏しくて,太い血管に沿って走り,多くは無髄線維であるが,有髄線維をももっている.神経には血管に行くものがあり,また有髄線維で卵胞に達するものがある.近年の研究によると軸索の枝は卵胞のなかにはいり,卵胞上皮を貫いているという.

 神経は交感神経と副交感神経から来ている.前者はIV~XIIの交感神経幹神経節と,交感神経幹の下部の上方部から来ている.そして腹腔神経叢と腸間膜動脈神経叢をへて,(そこで?)迷走神経の副交感線維といっしょになり,卵巣動脈に沿って神経叢を作りながら卵巣にいたる.副交感神経は卵胞の成熟をうながし,交感神経はこれを遅らせる(R. Emanvel, Z. Geburtsh.,124. Bd.,1942).

2. 卵巣上体(副卵巣)と卵巣傍体Epoophoron et Paroophoron, Nebeneierstock und Beieierstock(図290)

 卵巣上体は子宮広ヒダの両葉のあいだにある.これがよく発達しているどきには卵管と平行に縦に走る管,すなわち卵巣上体縦管Ductus epoophori longitudinalis(ガルトナー管Gartnerscher Gang)と,横に走る横小管Ductuli transversiとからなっている.卵巣上体縦管は子宮め側壁を下方にすすみ,処女膜に達していることさえもある.横小管は卵巣門のところから始まって,縦管に開口している.これらの管から小さくて柄のある小胞が突出していることがしばしばで,これを胞状垂Appendices vesiculosaeという.これちの管は結合組織と上皮からなる粘膜でできている.上皮はたいてい線毛円柱上皮である.

 卵巣傍体は卵巣上体より小さくて,骨盤壁の近くで卵巣間膜の起始部の下外側にあり,卵巣動脈の比較的太い枝の間にある.一枝分れした何本かの小管からなっていて,円柱上皮で被われている.これもやはり退化したものでウォルフ体Wolffscher Körperの原腎部Urnierenteilのなごりである.

 卵巣上体および卵巣傍体と相同のものが男の生殖器にある.卵巣上体に相当するのが精巣上体Epididymis, Nebenhodenであり,卵巣傍体に相当するのは精巣傍体Paradidymisである.

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3. 卵管Tuba uterina, Eileiter(図275, 276, 282285, 287, 290)

 卵管は卵巣と子宮をつなぐもので,卵巣の導管である.左右の卵管は子宮とともに前額面上にある大きな腹膜のひだ,すなわち子宮広ヒダPlica lata uteriに包まれていて,ちょうどこのヒダの上縁のところに卵管が位置をしめている.

 卵管は9~16cmの長さで平均0.5 cmの太さをもち,子宮の内腔から卵管子宮口Ostium uterinum tubaeをもって始まり,子宮壁を貫いている.この部分を間質部Pars interstitialisという.ついで子宮の上外側縁のところから外に現われる.ここでは管が細くて索状をしており,峡部Isthmusという.しかしそこから外側に向かってかなり急激に太くなり,膨大部Ampullaを形づくる(図284, 290).そこでは卵管は曲がって走り,骨盤の側壁から後方かつ下方に向きをかえて卵巣に達する(図276).卵巣の近くでは卵管はロート状に広がっている.その部分を漏斗Infundibulumという(図284, 290).漏斗の縁には深い切れこみがあり,そのためにかなり多数の簡単な形の突起や,さらにいくつもの切れこみをもった複雑な突起に分れている.これをFimbriaeという.これらの突起の1つは他のものより目立って長く,漏斗の空所とつづく溝によって2つの唇Lippenに分れており,腹膜の1つのひだに包まれて卵巣に達している.これを卵巣采Fimbria ovaricaという.采によって円錐状にかこまれた漏斗の奥には円形のせまい口がある.これを腹腔口Ostium abdominaleという.卵巣を飛びだした卵はこの口を通って卵管に入り,さらに卵管を通って子宮にいたる.

 以上は卵の正常な経過であるが,ときにはこれが腹腔にはいることがある.しかもその卵が受精するとそのまま腹腔のなかで発達する(腹腔妊娠Graviditas abdominalis).あるいは卵が卵管のなかにとどまって発達することがある(卵管妊娠Graviditas tubaria).そのほか卵胞破裂の後に受精した卵が卵巣のなかにとどまっていて,卵巣妊娠Graviditas ovarialisという形で発達を続けることがある.

[図282]膨大部激髪の1つ 横断×90

卵が卵巣から卵管と子宮を通り着床部にまで運ばれることは人の場合には主として上皮の線毛運動によって行われ,それと共に卵管壁の筋の作用や血管の膨圧がある程度の役割を演じているようである.

 ときおり卵管のかたわらに1つないしそれ以上の副卵管Tubae accessoriae, Nebenöffnungenという開口部があって,卵管と同じく采でとりかこまれている.副卵管は卵管に直ぐにつづていることもあり,あるいは卵管から分れる特別な管につづいている.

 1つ,または2つ以上の采にしばしば長い柄をもった円みをおびた大小いろいろの小胞状のものがあって,これは胞状垂Appendices vesiculosae, Hydatidenとよばれる(図284).これと同じように漿液でみたされたものが卵巣上体のところにも存在する.

 層構造:卵管の壁は粘膜,筋層,漿膜の3層からできている(図287).

 粘膜は多数の縦のひだを持つており.さらにそのひだはたくさんの細かいひだに分れている.これを卵管ヒダPlicae tubae(図282)といい,そのために卵管の横断像で内腔は星状を呈している.このひだは膨大部において著しく発達し,これを膨大部ヒダPlicae ampullaresという.それに反して峡の横断面では丈の低いわずかなひだがあるだけで,これを峡部ヒダPlicae isthmicaeという.粘膜は軟かいが,かなり厚くて次のものからなりたっている.

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1. 一部は線毛をもち,一部は分泌性の(多くは)単層の円柱上皮(15~20µの高さ),でその線毛の動きは子宮の方へ向っている(図283);2. 細胞と血管に富む粘膜固有層;3. 薄い粘膜筋板.それに続いて線維性結合組織からなる粘膜下組織がある.

 筋層は2層からできている.すなわち内方にあるいっそうよく発達した輪走筋層と,それに弱い縦走筋層とである.両層とも粘膜筋板と同じく平滑筋からなりたっており,また平滑筋のあいだには血管が豊富に存在する.

 漿膜ははなはだ血管に富む厚い漿膜下組織によって筋層と境されている.

[図283]卵管上皮 卵胞破裂の時期=月経の始めから17日目.×720.

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最終更新日 13/02/03

 

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