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これら内外2系の基礎層板の間に,さらに小さい層板系があり,ハヴァース管を同心性にとりまいている.これが特殊層板Speziallamellenまたはハヴァース層板Haversche Lamellenといわれるものである.またハヴァース系Haversches Systemとうのはハヴァース管と,それをかこむすべての層板とをひっくるめたもののことである.第4群の層板系は以上の層板系の間隙を埋めるもので,介在層板Schaltlamellen, interkalare oder interstitielle Lamellenなどと呼ばれる.

[図159]骨の縦断研磨標本 ヒトの大腿骨の骨幹を,長軸を腹面で縦断したところ,ハヴァース管を黒で示す.*は骨の外表面.

 ハヴァース管に似ているが,周囲に随伴する層板系を持たずに,骨質を貫いて走る管がある(図には現われていない).これをフォルクマン管Volkmansche Kanäleと呼び,その中をとおる血管を穿通血管perforierende Gefäßeという.介在層板系には真性の介在層板と仮性の介在層板の2種がある.後者はハヴァース層板系の破壊された遺残にほかならない.

 一つのハヴァース系に属する層板の数はまちまちである(3~22).しかし概して,中等大の管をとりまく層板の数が最も多く,非常に太い管でも,また非常に細い管でも,層板の数は少ない.個々の層板の厚さは断面で6~9µである.

 骨の横断面の全体が層板の集まりででているのであるから,各々の層板の微細構造が特に重要な問題となるのは当然である.骨間隙をカナダバルサムで充たした非常に薄い研磨標本,または脱灰した骨の横断標本をさらに強い拡大で検べると,非常に明瞭な縞模様の区分が認められる.この方法がはなはだうまくいった場合には,各々のハヴァース層板がまたいくつかの明暗の層によって構成されているので,暗層には微細は斑点があり,明層にはこまかい線条が見える.このような性状は層交叉する2系の骨原線維Knochenfibrillenの存在に基づくもので,その一方は横走し,他方はこれに垂直に走るのである.

 暗い斑点と細かい線条とは,それぞれ原線維系の横断と縦断の像にほかならない.以上の現象はシャーピー・エブネルの層板現象Sharpey-Ebnersches Phänomenという名で知られている.

 しかし原線維系は必ずしもいま述べた方向になっているとはかぎらないのであって,Köllikerによれば原線維が次のような走向を示すことが最も多いという.すなわち両系はたがいに直角に交わっていながら,各層板内でハヴァース管の軸と約45°をなす.また一方の線維が横走あるいはほとんど横走し,他方が管の軸と20°ないし30°の角度をなす場合もかなりある.そして一方の線維が横走し,他方のが完全に管と平行に縦走するということは最もまれであるという.

 偏光を用いて研究すると,縦断された原線維は光を単屈折し,横断された原線維は複屈折して暗く見える.骨小腔Knochenhöhlenと原線維の走向との関係は,骨小腔が明るい層にあるものもあり,暗い層にあるものもあって,しかも小腔の長軸は常に原線維の方向に一致している.同時にまた小腔じしんが層板の曲線に相当する面に沿って,わずかに沿っている.いいかえれば骨小腔の広がっている面は,各層板の表面と平行してまがっているのである.しかしこれはハヴァース層板と基礎層板とにについているのである.しかしこれはハヴァース層板と基礎層板とについての話であって,介在層板では骨小腔はすこぶる不規則に並んでいる.



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最終更新日11/02/23

 

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