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肋骨は面の弯曲はほかに自らの軸を中心にねじれている.このねじれTorsionskrümmungがあるために,肋骨の大部分のものは後部ではその両面がほとんど垂直に立っているのに,前方ではその外面がななめ上方に向いている.肋骨にはさらにまた稜線のまがりKantenkrümmungがある.これは第1肋骨においてはその弯曲の主体をなしている.このようなわけで,肋骨には3様のまがり方が区別される.すなわち面の弯曲ねじれ稜線のまがりである.そしてこれらの各種のまがり方は,肋骨それぞれに異なっている.

 肋骨が胸椎と接することによって,頚椎・腰椎ならびにそれらの肋骨痕跡についてすでにみた現象が問題となってくる.それは頚椎の肋横突起と相同の部分,すなわち胸椎とその肋骨とによって,肋横突起孔がつくられることである.しかしこの重要な間隙は靱帯群によってほとんど完全に充たされている.

 肋軟骨Cartilagines costales, Rippenknorpelは肋骨小頭の関節軟角とともに,肋骨の骨化せずに残っている部分である.肋軟骨は軽くまるみをもつ面と,角のとれた縁とをもっている.その長さは第1肋軟骨から第7肋軟骨へかけて次第に増し,それから第12肋軟骨へは急激に短くなっている.また肋軟骨の幅は後端から前端へ次第に狭くなる.肋軟骨の走向は非常にまちまちである.

 第1肋軟骨は胸骨に向かって少し下向きに走っているが,第2肋軟骨は水平に向かって少し下向きに走っているが,第2肋軟骨は水平に走っている.残りのすべてのものは,第11と第12肋軟骨を除いては,肋硬骨から胸骨へかけて,下位のものほど急角度をなして上方へ走っている.このさい,第5から第10までの肋軟骨には肋軟骨角Rippenknorpelwinkelという下方へ凸の強い弯曲がはっきりとしてつくられている.これは肋硬骨と同じ方向に外側ら伸びてきた肋軟骨が,方向を変えるところである.

 肋軟骨の後端は肋硬骨の凹みにはめ込まれて,それとしっかり結合している.しかし前端の状態は一定していない.第1肋軟骨は胸骨柄(図201)に特設に,たいていは関節を造らずに結合しているが,ここに小さい関節腔がみられるこtもないわけではない.第2から第7までの肋軟骨は関節をなして胸骨につながっている.第8~12肋軟骨の前端の状態については131頁を見られたい.

 第6(ときに第5も)から第9肋骨までの肋軟骨は,肋間隙において軟骨の突起すなわちおよび下関節突起kraniale und kaudale Gelenkfortsätzeをたがいに出しあって,肋軟骨間関節Articuli intercartilaginei, Rippenknorpelgelenkeという歴とした関節をつくっている.

 変異:第10肋骨は以前に考えられたよりも高い非頻度で,自由端をもって終わっている.これはチューリッヒの住民では70%に認められるが,べつに退化的現象というわけではない(Stiller)ではむしろ稀で,日本人(Bälz)ではかなり頻度が高いから,それらく人種による差異があるものと思われる.肋軟骨間関節は人類の胸郭に特有のもので,男女で同じ頻度に現われ,第6肋骨のの軟骨間が関節によって結合している例はvon Bardelebenによれば両側とも38%に存在する.胸骨に付着する肋骨の数(鈴木文太郎によれば日本人で8本のこと18.5%,7本のこと81%,6本のこと0.5%である.)が8本のことはFreyによれば10%に認められ,7本のことは77%,6本のことは0.6%に存在する(Adolphi S.143を参照せよ).肋骨の数(長谷部言人によれば日本人で13本のこと6.1%,11本のこと1.1%である.)は12本ことが94.8%,13本のことが1.6%,11本のことが3.6%である.(Frey 1929).肋骨の数の増加は男の方が男の方が女より高い頻度にみられる.第12肋骨がごく小さくなっていたり,あるいは全く欠けていることがある.しかし独立した第1腰肋骨が形成されている場合には,第12肋骨が長くなっていることもある.第1肋骨が欠けていることもないわけではない(ベルリンの解剖学標本集にそれが1つある).7頚肋骨が独立して形成されることによって,13本目の肋骨が生じうる.第10,第11(これが最も多い),あるいは第12肋骨の軟骨のつづきをなして,内腹斜筋の中に腱画が認められることがあって,この腱画には小さい棒状の軟骨が含まれることが少なくない(Frey1918).

 さらに稀には前方部で幅が非常にひろくなっていたり,分裂したりしている肋硬骨が見いだされる.とくに第4肋骨はこのような異常を示す傾向がある.2つまたはそれ異常の肋骨が,ある距離だけその縁で癒合していることも時として見られる.第1肋軟骨は成人では石灰化の傾向を示し,その他の肋軟骨も,程度はそれより少ないけれども同じ傾向をもっている.また女性では男性よりもこの傾向が少ない. -Frey, Hedwig, Vierteljahrsschrift Naturforsch. Ges., Zurich , 63. Jahrg.,1918; Morph. Jahrb., 62. Bd.,1929

β)胸骨Sternum, Brusbein (図199201)

 胸骨は胸郭の前方部で中央を占めており,ななめ下前方へ伸びている.他の骨格との結合をみると,上位7対の肋骨と,その肋軟骨によって結合し,また両側の鎖骨にもその固着部を提供している.

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最終更新日13/02/03

 

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