Band1.187   

 

c)頭蓋の外面

 頭蓋の表面は説明の都合上, 上部・下部・前部・後部および左右2つの外側部に分けられる.

α)上部すなわち頭蓋冠Calvaria, Schädeldach(262, 263, 272274)

 この部分は上眼窩縁から分界項線にまで伸び,側方では頭頂骨の側頭線で境されている.この部分は平滑で,矢状方向を長軸とする卵円形で,頭頂部では前頭部におけるよりも幅が広く,前の方ではかなり平らであるが,うしろの方には1つの小さい突出がある.この円蓋の中央部は頭頂Vertex, Scheitelとよばれ,前方の平たいひたい方の部分が前頭またはFrons, Stirn,後方の垂直に近い部分が後頭Occiput, Hinterhauptである.

β)前部すなわち骨性顔面Facies[ossea], knöchernes Gesicht(図273, 274)

 骨性顔面は額よりも下方の部分であって,左右の眼窩Orbitae, Augenhöhlenの開口がある.眼窩が前方に開くところが眼窩口Aditus orbitaeで,その縁を囲んでいる骨が前頭骨・頬骨・上顎骨であって,眼窩口縁Margo aditusの3部分すなわち前頭部Parsfrontalis, 頬骨部Parszygomatica, 上顎部Parsmaxillarisを成している.両眼窩のあいだには前下方へ傾斜した鼻背が出ており,これを成しているのは左右の鼻骨と,左右の上顎骨の前頭突起とである.その下方には正中部に,骨鼻腔が頭蓋の前面に開く口があり,梨状口Apertura piriformisとよばれて,さかさまのハート形または西洋ナシのかたちをしている.梨状口の薄くて鋭い縁は鼻軟骨の付着するところであり,また下方では前鼻棘Spina nasalis anteriorをつくっている.梨状口の下には上顎骨の鼻前窩Fossae praenasalesがあり,眼窩口の下には犬歯窩Fossa caninaがあり,さらにその外側には頬骨の前・下部と上顎骨の頬骨突起とによってつくられる頬の突出がある.眼面骨格は下方で下顎骨と舌骨が参加することによって,はじめて完全なものとなる.ここでヒトに特有の表徴として,突出したオトガイ隆起Protuberantia mentalisがあることを述べておく.顔面部のさらにこまかい点については,すでに述べたのであるが,ただ眼窩と鼻腔はここで特別に観察する必要がある.

1. 眼窩Orbita, Augenhöhle(図268, 273)

 眼窩は不規則な4面をもつ錐体形のくぼみで,その底面にあたるところは前方やや外側方に向き,頂点は後内側にある.左右の眼窩の軸をうしろへ延長すると内後頭隆起のところで交わる.

 眼窩の内側壁Paries nasalisは正中面とほぼ平行である.外側壁Paries temporalisは強く外方へ開いているので両側の外側壁がほとんど直角をなしており,うしろへ延長すると下垂体窩のあたりで相交わる.眼窩の天井すなわち上壁Paries superiorは前の方で内外両側壁に弓状に移行している.外前方へ傾斜した底すなわち下壁Paries inferiorは,少しずつもちあがって内側壁に続いている.

 7つの骨が集まって眼窩壁をつくっている.1. 上顎骨の眼窩面と前頭突起.2. 口蓋骨の眼窩突起.3. 涙骨.4.篩骨の眼窩板(紙様板).5. 蝶形骨の小翼と大翼.6. 前頭骨の眼窩面.7. 頬骨の眼窩面.またこれらの骨のあいだの縫合は,内側では[][]縫合Sutura sphenoethmoidea, [][]縫合S. lacrimoethmoidea, []上顎縫合S. lacrimomaxillaris, []上顎縫合S. ethmoldeomaxillaris, 前頭篩骨縫合S. frontoethmoidea, 前頭涙骨縫合S. frontolacrimalis, 前頭上顎縫合S. frontomaxillarisである.外側壁には[][]縫合S. sphenozygomatica, []前頭縫合S. zygomaticofrontalis, []前頭縫合S. sphenofrontalisがある.上壁には[]前頭縫合S. sphenofrontalisがあり,下壁には眼窩下縫合S. infraorbitalisと[]上顎縫合S. zygomaticomaxillarisがある.

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最終更新日13/02/03

 

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