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骨盤腔の方へ恥骨後隆起Eminentia retropubicaという1つの高まりが出ており,これは妊娠のときに大きくなるという.

 特別の装置としては恥骨靱帯Lig. pubicumと恥骨弓状靱帯Lig. arcuatum pubisがある.

 前者は恥骨結合の上縁にあって恥骨間板にかたく癒合し,側方に恥骨結節のところまで伸び,クーパーの恥骨靱帯Lig. pubicum Cooperi(図435)の中に放散している.恥骨弓状靱帯は三角柱状で,横断面で約1cmの高さがある.恥骨結合の下縁にあって,恥骨角ないし恥骨弓にまるみをつけている.それゆえこの靱帯の長さは男では2cmしかないのに,女では3~3.5cmもある.この靱帯の下縁は非常に鋭利なことがある.

 恥骨結合の可動性ははなはだ少い.ごくわずかぐらつく程度に動き,またごく少しバネの役目をするだけのものである.

 血管は下腹壁動脈・閉鎖動脈・大腿動脈の各恥骨枝から来る.

[図433] 恥骨結合(4/5) 前額断面を前方からみる

c)寛骨と胴の骨との結合
α)仙腸関節Articulus sacroilicus(図434439)

 この関節をつくっている骨は仙骨と寛骨(くわしくは腸骨)である.関節面はこれら両骨の耳状面Facies auricularesである.

 両骨の耳状面はその名前の示すように耳のかたちをしている.耳状面の大きさと形,ならびに仙椎との位置関係(146頁を参照せよ)は個体によって大いに異る.表面の状態も個体によってまちまちで,不規則なデコボコを呈している.軟骨は仙骨面(1~4mm)の方が腸骨面(0.3~0.6mm)よりもずつ,と厚い.腸骨の耳状面はほとんど線維軟骨だけで被われているのに対して,仙骨では関節腔に向く面は線維軟骨からなり,それより深層は硝子軟骨でできている.

 関節包は耳状傍溝Sulci juxtaauricularesから起っている.その後がわでは骨間仙腸靱帯Ligg. sacroilica interossea(図439)があって関節包を補つている.

 関節腔は狭くて裂隙状であり,その中へ軟骨壁からの線維状の突起や,関節包からの少数の滑膜絨毛が出ている.

 特別な装置としては次のような多数の靱帯がある.すなわち直接の補強靱帯としては前方に前仙腸靱帯Ligg. sacroilica ventralia,後方に長後仙腸靱帯Lig. sacroilicum dorsale longum,短後仙腸靱帯Lig. sacroilicum dorsale breve,骨間仙腸靱帯Ligg. sacroilica interosseaがある.

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最終更新日13/02/03

 

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