Band1.382   

 神経支配:鎖骨下神経による.

 脊髄節との関係:C. (IV)V(VI).

 作用:この筋は鎖骨を胸鎖関節において固定し,鎖骨を前方および下方に引くが,また肩関節を固定しているときには肋骨挙上筋としてはたらくこともできる.

 変異(M. subclavius posticus(RosenmüllerI)の1例報告がある.(森富:解剖学雑誌,25巻,69~71,1950).鎖骨下筋の変異としてのM. scapuloclavicularis(Wood)s. coracoclavicularis(Calori)s. omoclavicularis(Schwegl)が日本人28体のうち4体について報告されている(進藤篤一:医学研究,12巻,2223~2234,1938).):この筋は全く欠けていることがある.この筋が普通にある場所に1個の靱帯がただ存在しているだけであることがある.いわゆる筋の重複は多くの場合,M. acromioclavicularis, m. omoclavicularis, M. sternoclavicularis, M. supraclavicularis, M. subclavius posterior, M. infraclavicularisのような過剰筋の存左によるのである(W. Krause, Le Double).起始の数が普通より増していることはLe Doubleが2回みている.すなわちこの筋が第1および第2肋骨から起っていたのである.この筋の停止は鎖骨に付着するほか烏口突起,烏口鎖骨靱帯,肩峰および上腕骨に付着していることもある.

4. [外]側鋸筋M. serratus lateralis. (図490, 500502, 509)

 この筋は胸郭の側面にあり,長い距離にわたって容易にたがいに分けることのできる9(10)個の尖頭をもって,第1~第8(第9)肋骨から起り,幅の広い板となって胸郭の壁と肩甲骨とのあいだを後方かつ内側に向って入り込み,肩甲骨の椎骨縁ならびに上角と下角との近くで肋骨面の一部に付着している.

 起始尖頭の数は,第2肋骨からの起始が2個に分れているので,起始をなす肋骨の数よりも普通に1個だけ多い.この筋は第1~第9肋骨から弓状に曲つた線をなして次のようにはじまる.すなわち中位にある起始尖頭は最も著しく前方に着いているが,上部および下部の尖頭は比較的後方に着いている.第1の尖頭は第1および第2肋骨から,第2の尖頭は第2肋骨から等々,以下これにならつて起る.第8の尖頭がすでに外腹斜筋と長い横の縫線によって密に結合しており,第9(最後)の尖頭はほとんど完全に外腹斜筋の中に移行している.

 神経支配:長胸神経による.

 脊髄節との関係:C. V~VII(VIII).

 作用:この筋は肩甲骨,特にその下角を前方に引く.その上部の起始尖頭は,それと隣接している肩甲挙筋のように,肩甲骨を上にあげる筋としてはたらく.その下  方の部分は,腕を水平位まで挙げる場合に肩甲骨を20°だけ回転することによって他の筋といっしょに作用する(MollierR).腕を水平位以上に挙げるときにはこの筋の下部によって肩甲骨の回転が30°もおこる.肩甲骨を固定しているときにはこの筋の全体が肋骨を上にあげて,吸気的に作用することができる.

 変異:筋の各部が欠けていることがある.起始の数が普通より減少して7個になっているもの,あるいは逆に11個にまで増加しているものが記載された.外肋間筋,外腹斜筋との結合がみられている.

 

第2群:胸壁の筋Muskeln der Brustwand

1. 肋間筋酵Mm. intercostales, Zwischenrippenmuskeln. (図492, 501504)

 体の両側にそれぞれ11対ある.これらの筋は肋間隙Spatia intercostaliaを不完全に充たしていて,内と外の両肋間筋に区別される.

a)外肋間筋Mm. intercostales externi

 この筋は肋骨結節にはじまり,腹方では[外]側鋸筋および外腹斜筋のおこるところ,すなわち肋軟骨の初まりのところにまで達している.

 すべての筋束が斜め下方に走るが,その上端は脊柱にいっそう近く付着している.それゆえこの筋束は胸壁の背部では内側上方から外側下方に向い,胸壁の前部では外側上方から内側下方に向っている.

 これらの筋は外腹斜筋の線維と同じ方向をとる,すなわち後上方から前下方に走る. その走行の途中ですでに豊富な腱性の線維束がまじっている.筋の前端を越えたところで腱性の線維がいっそう強められた形で現われ,外肋間靱帯Ligg. intercostalia internaをなしている.

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最終更新日13/02/03

 

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