Band1.450   

下肢の筋Musculi extremitatis pelvinae, Muskeln der unteren Extremität

a)寛骨部の筋群Muskeln der Hüfte
α. 内部の寛骨筋群innere Hüftmuskeln

 内部の寛骨筋群としては大腰筋,小腰筋および腸骨筋よりなる腸腰筋M. iliopsoasがある.

1. 大腰筋M. psoas major. (図505, 562, 563)

 この筋は第12胸椎体および第1~第4腰椎体およびそれらの間にある椎間円板から起る浅層oberflächliche Schichtならびに全腰椎の肋骨突起から起る深層tiefe Schichtとをもって始まる.深,浅の両層のあいだには腰神経叢の一部がある.大腰筋の腱は腸骨筋の腱と合して大腿骨の小転子に停止している.

2. 小腰筋M. psoas minor.

 この筋は人では存在が不定で,第12胸椎および第1腰椎の前面から起り,その終腱は腸骨筋膜の中に広がり,この筋膜によって腸恥隆起に停止している.

3. 腸骨筋M. ilicus. (図505, 562, 563)

 寛骨の腸骨窩の中に始まり,大腰筋と合して大腿骨の小転子に固着する.--腸腰筋は小転子に向う途中で,筋裂孔Lacuna musculorum(筋膜の項参照)を通り抜けている.

 腸腰筋と股関節包との間には1つの大きい粘液嚢があって,これは腸恥包Bursa iliopectinea(図557, 563, 565)とよばれ,成人では15%において(Kessel, Morph. Jahrb.1927)股関節腔と続いている.この筋の停止腱と小転子とのあいだにも腸骨腱下包Bursa ilica subtendineaという1つの粘液嚢がある(図557).

 神経支配:腰神経叢の枝および大腿神経による.

 脊髄節との関係:大,小両腰筋は(Th. XII), L.1, II, III(IV),腸骨筋はL. II, III, IV.

 作用:大腿骨を上方にあげ,これを内転し且つ足尖が外側になるように回す.また脊柱の腰部と骨盤を左右の股関節を結ぷ軸のまわりに前下方に引く.

 変異:大腰筋の起始はときに第12肋骨の小頭,腸腰靱帯,前仙腸靱帯の上に及んでいる.第5腰椎からの起始尖頭はしばしば欠けている.横隔膜との結合はすでに横隔膜の項で述べた.独立した1つの筋束,すなわちM. psoas accessorius(副腰筋)が腰椎の肋骨突起から起り,大腰筋の外側の縁に接していることがあるが,これは大腰筋とはたいてい大腿神経によって分けられている.腸骨筋はときどき腸腰靱帯ならびに前仙腸靱帯,分界線および仙骨から起っている.前腸骨棘から起る筋束は独立することがあり,これをM. ilicus minor(小腸骨筋)という.大腰筋も腸骨筋もいくつかの筋束に分れていることがある.この両筋が完全に2分していることはまれである.小腰筋は全例の半数以上において欠如している(日本人における小腰筋の欠如は男212体側のうち106体側(50.0%).女94体側のうち51体側(54.3%) (小金井),また154体側のうち90㈱(58・4%) (松島).80体側のうち52.5・%(五十嵐)であった(小金井良精,新井春次郎,敷波重次郎:東京医学会雑誌,17巻,127~131,1903;松島伯一:実地医家と臨床,4巻,749~750,1927;五十嵐信一,保志場守一:金沢医科大学解剖学教室業績,22巻,47~61,1936).).この筋が重複していることがある.この筋はたいてい腸骨筋膜に停止して,この筋膜によって腸恥隆起に終るが,また大腿骨あるいは小転子にも停止している.

β. 外部の寛骨筋群äußere Hüftmuskeln

1. 大臀筋M. glutaeus maximus. (図556, 558560, 572)

 この筋は寛骨では後臀線より後方の小部分,腰背筋膜の腱膜部,仙骨および尾骨の外側縁,仙結節靱帯から起っている.そして太い筋束よりなっていて,斜めに下方および外側へと大転子を越えて走り,その一部(筋の下方1/3)は臀筋粗面(第3転子Trochanter tertius)に,一部(筋の上方2/3)は大腿筋膜に停止している(図572).

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最終更新日13/02/03

 

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