Rauber Kopsch Band2. 039   

唾液腺には粘液をだすものと蛋白質にとんだ漿液を分泌するものと粘液と漿液の両方をだすものとある.

それによって次の区別がある.1. 漿液腺seröse Drtisen, Eiweißdrüsen:耳下腺および漿液性の舌腺唱(図72);2. 粘液腺Schleimdrüsen:口蓋腺および舌の粘液腺;3. 混合腺gemischte Drüsen,ほかの口腔の諸腺がこれである.

a)耳下腺Glandula parotis, Ohrspeicheldrüse(図60, 61)

 これは大きい唾液腺のなかでも最大のもので,頭部の側面で耳のすぐ前,また胸鎖乳突筋の前縁のすぐ前で,下顎枝および咬筋の上にのっており,1つの大きい突出部すなわち,下顎後突起Processus retromandibularisをもっていて,この突起は下顎枝の後縁と外耳道のあいだの場所を充たして深く入り,顎二腹筋・茎状突起・茎状突起からおこる諸筋・内外の両翼突筋にまで達している.

 局所解剖:耳下腺は後方は外耳道,乳様突起および胸鎖乳突筋によって境され,下方は下顎角を多少とも越えている.また上方は頬骨弓に接し,あるいはこの弓の下で塊りをなして,さらに下顎骨および咬筋の上を多少の差はあるが前方に向かって伸びている.耳下腺の垂直径は4~5cm,上方ではその幅が3~3.5cm,厚さは2~2.5cmで,重さは20~30grである.耳下腺の外面は膨んで高まって分葉状であり,かつ耳下腺咬筋膜Fascia parotideomassetericaによって被われて,その上を広頚筋の一部と皮膚が被っている.

 内頚動脈と内頚静脈は耳下腺の内面の近くにある.外頚動脈は下顎後静脈を伴なって,この腺のなかに入り,ここで2本の終枝すなわち浅側頭動脈と顎動脈に分れる.顔面神経はこの腺を貫いてすすみながら多くの枝に分岐する.また大耳介神経の枝の一部がこの腺を貫いている.

 この腺の前方部から太さ3~4mm,長さ5~6cmの導管すなわち耳下腺管Ductus parotidicusがでており,この導管に接して咬筋の上にのつて副耳下腺Glandula parotis accessoriaがしばしばみられる.耳下腺管は頬骨弓の下方およそ1cmのところを咬筋の表面をこえて前方にすすみ,この筋の前縁をまわって内側に深く入り,頬筋を貫いて,この筋と頬粘膜のあいだを少しの距離だけ前方に走ったのち,上の第2大臼歯の歯冠の高さで,頬唾液乳頭Papilla salivaria buccalisにおいて開口している.

 耳下腺に分布する動脈はこの腺を貫いてとおる血管からきている.静脈はやはり相当する静脈幹に流れこむのである.またこの腺からでるリンパ管は頚部の浅および深リンパ節に達する.少数のノンパ節がしばしばこの腺の内部にある.

 神経は交感神経と舌咽神経とからきている.舌咽神経の線維は小浅錐体神経をへて耳神経節にいたり,ついで耳介側頭神経に入り,これより耳下腺枝Rr. parotidiciとしてこの腺に達する(伝導路の項を参照ぜよ).

 はなはだまれに耳下腺およびその導管が完全に欠けていることがある (Singer, R., Anat. Anz., 60. Bd.,1925, 26).

b)顎下腺Glandula submandibularis, Unterkieferdrüse(図60, 61, 78)

 この腺は平たくて円みをおびた形をしていて,下顎骨および顎二腹筋の後腹と中間腱および茎突舌筋と舌骨舌筋に挾まれたところにあり,最後に述べた2つの筋にはこの腺の内面が接している.

 局所解剖:顎下腺は長さ2.5~3.5cm,厚さ1.5cmで,重さは10~15grである.前方は多くのばあい,少しだけ顎舌骨筋の上になっており,上方は下顎骨の内面に接している.後方は茎突下顎靱帯によって耳下腺から隔てられている.外方は浅頚筋膜,広頚筋および皮膚がこの腺の上を通る.1枚の薄い結合組織板がこの腺の内面を深部の筋から隔てている(第1巻,図511).かくしてこの腺は耳下腺と同様に,外方で強く内方で薄い結合組織の被膜で包まれているのである.

 顔面動脈は咬筋付着部の前端のところで下顎縁をこえる前に,1個あるいはそれ以上の数(多くは3個)のリンパ節といっしょに,顎下腺の後面から上縁にかけて存在する深いへこみのなかにはいる.他方,顔面静脈はこの腺の外面を通りすぎる.

 導管すなわち顎下腺管Ductus submandibularisは5~6cmの長さがあって,この腺からでて上方に顎舌骨筋の後縁をこえてすすみ,この筋の上面で前方かつ内側にすすみ,そのさい顎舌骨筋ならびに舌骨舌筋とオトガイ舌筋のあいだを通り,舌下腺の内側縁に沿って走る.そして舌小帯の側方に達して小さい口をもって舌下唾液乳頭Papilla salivaria sublingualisに開くのである(図61, 78).

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最終更新日13/02/03

 

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