Rauber Kopsch Band2. 155   

右肺は概して左肺より大きい--先に述べた葉間裂のほかにいつも存在するとは限らない裂け目がみられることがあり,そんなときには肺葉の数がふえている.しばしば左肺の上葉で(Beckmann, R., Morph. Jahrb.,89. Bd.,1943)右肺の中葉に相当する部分が,右肺の副裂に相当する痕跡的な裂け目とそれに続く結合組織の隔壁によって区切られている.その部分には特別の気管支枝があって小舌部Portio lingularisと呼ばれる.

 重量:肺の重量は変動がはなはだしく,含まれる血液の量や漿液の浸潤する程度などによって著しく変る.右肺と左肺の重量比は11:10である.両側の肺は絶対的にも相対的にも男の方が重いが,それは呼吸の需要が男ではいっそう大きいからである.平均重量はKrauseによれば男1350gr,女1050grである.

 本質的な変化をしていない,つまり正常と思われる肺についてReidとHutchinsonが男29例,女21例において,またHoffmannが男21例,女16例において計つた平均値は次の通りである.

ReidとHutchinson  Hoffmann

男{

 右肺 720gr                       645gr

 左肺 630gr                       548gr

     1350gr           1193gr

女{

 右肺 510gr                      476gr

 左肺 450gr                      395gr

      960gr                      871gr

 なおReidとHutchinsonによると男の右肺と左肺の重量比は8:7で,女は17:15である.またHoffmannの計算では男は7:6の比であり,女は29:24であるという.

 ReidとHutchinsonによると男25例, . 女13例で,肺の重量の体重に対する比は男1:37,女1:43である.

 容量:普通の状態で行われている呼吸はごく浅いものであって,容量の変化は400~500ccmくらいである.この価を呼吸[]Respirationsluftという.そして出来るだけ吸気を深くするときはその上に1600ccmも吸いこめる(補気Komplementärluft).また出来るだけ呼気を強くするとなお1600ccm吐きだすことができる(蓄気Reserveluft).したがって深い呼気の後に深い吸気をするさいにはいってくる空気の量は3700ccmとなる(肺活量Vitalkapaxität).最も深い吸気の後にもなお残っている空気は約1000ccmあり,これを残気Restluft, Residualluftという.胸郭を開いたときに排出される空気の量を萎縮気Kollapsluftといい,萎縮した後になお残存する空気を最小残気Minimalluftという(Hermann).肺活量は人によって趣めてさまざまで,体の大きさ,職業,性別などに関係する.

 胎児が産れでて最初の吸気をするまでは,肺のなかにも,またすべての呼吸道にも空気は含まれていない.そこにはただ少量の液が存在して,これが羊水とつづいている.気管も気管支も矢状方向に多少とも圧縮されていて.ごく小さな内鰓しかもっていない.

 :若いときに肺は白っぽいバラ色を呈していて,血液の泡と同じような色合である.年令が進むとともに次第に色が暗くなり,灰青色の暗い斑点や条で被われる.時としてこの斑点や条がその大きさや色の濃さを増して,肺の表面全体が黒青色の外観を呈するようになる.この暗い色調を示すものは小さい色素の粒子ないしその集団で,小葉間結合組織のなかで特に表面に近いところに集まっていて,深層にはそれほど多く見られないものである.これは年令とともに増加するが,女では一般に比較的少ない.炭礦で働く人々では肺を着色する物質が極めて多量であって,それには色素と炭粉とがまざつている.色素は肋骨の走行に一致して列をしていることが多い.また気管支リンパ節にも黒い色がついている.着色する物質が肺のリンパ管をへてリンパ節に運ばれるのである.

 比重:肺の組織は多孔質で軽く海綿状を呈していて水に浮ぶ.それに反して胎児の肺,あるいはある種の変化をあたえて(圧縮したり,液体を注入して空気を追いだしたりして)正常でなくなった場合は成人の肺も水中にしずむ.健康な肺の比重は0.345と0.746の間を変動する.強く膨脹した肺の比重はわずかに0.126である.それに対して空気を全くふくまない肺の比重はKrauseによると1.045~1.056であるという.指の間ではさむと捻髪感crepitierendes Gefühlがあり捻髪音knisterndes Geräuschを出すが,これは空気が外に出ていくためである.肺を切ると肺は縮んでそのとき上と同じような音を出す.そのさい泡をもっている赤みをおびた粘液性の漿液が出てくる.

 弾性:肺の組織は著しい弾性をもっている.したがって胸膜嚢を開くと肺の容量はおよそ1/3に減少する.

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最終更新日13/02/03

 

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