Rauber Kopsch Band2. 271   

 胸膜頂と胸骨および脊柱のところでは肺の界は呼気と吸気のあいだも胸膜線と一致している.ただ左肺の心切痕のところでは肺の鋭い前縁が胸膜線に達しないのが普通である.つよく空気をはきだした状態,および死体においては肺の下界はだいたいに直線を画いていて,右は第6肋骨の胸骨付着点,左は第6肋軟骨の中央から始まり,後方は第11肋骨の付着部,すなわち第10胸椎の棘突起の高さで終わっている.この線は脊柱から遠くない所で第11肋骨をよぎつている.肺の下界も肋膜下線のばあいと同じで,左がいつも右よりやや下方にある.

[図344, 345]胸膜と肺の境界線

 胸膜線は赤,肺の輪郭と肺葉の境は黒. 図344は胸郭を前方から, 図345は後方からみたところ.(1/5) 後胸膜線はHeissによる.

 生体において打診をしてみると,右の肺の下界は,胸骨労線では第6肋骨,乳頭線では第7肋骨の上縁,腋窩線では第7肋骨の下縁,肩甲線では第9肋骨,椎骨労線では第11肋骨であるという.左側ではこの境が肋骨1つの幅だけ下方にある.吸気のさいにはこの境が数センチメートルも下方に移動する.肺の後方の内側界が後方の下界に移行するところは弓状の線を画いている.後方の内側界の上端もやはり弓を画いて,次第に脊柱から遠ざかるのである(図344345).

 肺の上葉と下葉の境は第4肋横突関節から(左は少し上方で第3胸椎の棘突起, 右は第4胸椎の肋横突起),あるいは肩甲骨との関係では肩甲棘の底から斜めに下前方にすすんで第6肋骨の軟骨部と骨部との境に達している.(右肺の)中葉の上界は第4肋骨の前部に沿って腋窩線まで達している(図344345).

 下胸膜線は肺の下界をかなり大きく越えている.それゆえ胸膜嚢の下部と前部には帯状の部分があって,呼気のさいにはこの部分に沿って肋椎部と横隔部,ならびに肋椎部と縦隔部とが相接していて,そこには相当する肺の縁が含まれていない.この部分を胸膜洞Sinus pleurae という.

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最終更新日13/02/03

 

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