Rauber Kopsch Band2. 381   

7.脳の脈管

A. 動脈Arterien

 脳の動脈についてはすでに第I巻,559563頁に記したが,脳動脈のそれより先の分枝についてDuretとHeubnerの研究により知られたことを次に迫加しておこう:

I. 延髄と小脳の動脈

1. 神経根動脈Aa. radiculares(Duret).これは椎骨動脈,脳底動脈あるいは(前と後の)両下小脳動脈からの枝であって,いろいろな神経根へと走り,神経根が脳から出るところのすぐ前に達して,そこで各1本の末梢に向う下行枝と中枢に向う上行枝とに分れ,上行枝は神経根に沿ってその核にまで達する.

2. 神経核動脈Aa. nucleorumは多数の細い動脈であって,延髄の縫線のなかを上行して,第四脳室の底に達する.Duretはこれに4群を区別した:すなわち,第1群のものは前脊髄動脈から出て舌下神経核と副神経核とに逮する;第2群のもの(3~4本)は両側の椎骨動脈が合して脳底動脈になるところから出て,迷走神経・舌咽神経・内耳神経の諸核に分布する;第3群のもの(4~6本)は脳底動脈から出て,特に顔面神経・外転神経・三叉神経の諸核に分布する;最後に第4群のもの(若干数の細い枝)は脳底動脈の分岐部から出て,脚間穿孔質の孔を通って被蓋に,また中脳の諸核に達している.

3. オリーブ,錐体および索状体に達する諸枝と第四脳室脈絡組織と第四脳室脈絡叢に達する諸枝.この脈絡組織と脈絡叢とに分布するものは後下小脳動脈から出る.

 小脳の各半分に分布す3本の動脈(上小脳動脈・前下小脳動脈,後下小脳動脈)は互いの間に太い吻合をもっている.なおまた,これらの血管の主な枝は,溝および回転の方向にほぼ直角に走っている.最も密な毛細管網を有つのは顆粒層である.

II. 中脳の動脈

1. 後大脳動脈から出て脚間穿孔質Substantia perforata intercruralisと被蓋Tegmentumとにいたる諸枝.これらの枝に脳底動脈の分岐部から起るもの(1の項で,2の第4群で述べた枝)も属している.

2. 大脳脚Crura cerebriにいたる諸枝.これには内側および外側脚動脈Aa. pedunculares mediales et lateralesがある.内側脚動脈については,上方のものは後交通動脈から,下方のものは後大脳動脈の初まりの部から出ている.匿のなかの若干の枝が黒核に入る.外側脚動脈は主に後大脳動脈から出るが,一部は脈絡叢動脈から出ている.

3. 四丘体にいたる諸枝前髄帆と結合腕に向かって比較的細い動脈が上小脳動脈から達している.四丘板そのものにゆく主要血管(外側丘動脈A. collicularis lateralis)は後大脳動脈から出て,大脳脚を回って,横丘間溝Sulcus intercollicularis transversusに達し,こ,から広がっている.後大脳動脈,あるいはその視床に喚く枝の1つからは,しばしば四丘体り上部に分布する1本の血管が出ていう(前丘動脈A. collicularis anterior).

III. 間脳の動脈

1. 松果体Corpus pineale,第三脳室脈絡組織Tela chorioidea ventriculi tertiiおよび第三脳室脈絡叢Plexus chorioideus ventriculi tertiiに向かって,各側とも後大脳動脈から始まる血管が来ている.これが内側後脈絡叢動脈A. chorioidea posterior medialisであって,これは脈絡組織に達する内側の1枝と脈絡叢に達する外側の1枝とに分れる.

2. 視床にゆく多くの血管はみな終動脈Endarterien(脈管学参照)であって,これに次のものが区別される:

a)内側視床動脈Aa. thalamicae mediales,これには各1本の前および後内側視床動脈Aa. thalamicae mediales anterior et posteriorがあって,後者は後大脳動脈あるいは後交通動脈から起る.前内側視床動脈は後交通動脈から起こって,灰白隆起と乳頭体との間で脳底灰白交連を貫いて,第三脳室壁の前部および視床前結節に達する.後内側視床動脈は脚間穿孔質を貫いて視床の内側面と中間質とに達する.

b)背側視床動脈Aa. thalamicae dorsales.これは後大脳動脈の1枝である外側後脈絡叢動脈A. chorioidea posterior lateralisから来る.外側後脈絡叢動脈は第三脳室脈絡組織と側脳室脈絡叢との一部に分布するものである.

S.381   

最終更新日13/02/03

 

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