Rauber Kopsch Band2. 396   

 髄条Striae medullares(図421, 422参照)(髄条Striae medullares Piccolomini, Bodenstriaeは蝸牛神経の中心経路の一部である聴条Striae acusticae Monakowとしばしば混同されるが,本書もそれを混同している.ピッコロミニ髄条は動物脳には見られず,人脳にのみあって,その走行によって肉眼的に3型が分類されているが.その本態は小脳と延髄および橋の網様体や縫線とを結ぶものであって,聴神経とは直接の関係がない.モナコフ聴条は聴覚路の一部であって,人のみならず,何れの哺乳動物にも存在する.本図では後者は左右とも索状体と蝸牛神経背側核とのあいだに縦断された線維群としてみられるが,特に名称を付してない.(小川鼎三:脳の解剖学,32~39,127,1956;小川鼎三,細川宏:日本人の脳,222~223,1953).)はこの断面の両側にみられる.これは蝸牛神経背側核の神経突起よりなり,この線維群が縫線に達してここで交叉する.

9. 橋Pons,横断面I(図463)

 この断面は橋のすぐ近くで延髄の腹側面を切り,側方ではすでに橋腕が現われている.索状体の(内側部の)線維が背方に曲り,次いで縦断されて斜めに背方かつ外側に走っているのがわかる.

 この部分は核小脳路Tractus nucleocerebellaresと小脳前庭[]Tractus cerebellonuclearesであって,前者は三叉神経・前庭神経・舌咽神経.迷走神経の終止核から出て室頂核と小脳虫部とに達するものであり,後者は小脳皮質から出て室頂核をへて前庭神経外側核に達する.索状体の外側部に含まれる線維については 452頁を参照せよ.

 索状体の腹方には内耳神経の線維と蝸牛神経腹側核Nucleus terminalis ventralis n. cochleaeが見られる.特に前庭神経の走り方がよく分るが,その線維は索状体と三叉神経脊髄路とのあいだを背方にすすみ,そこにある終止核に達する.ここには大細胞性の前庭神経外側核Nucleus terminalis lateralis n. vestibuli,すなわちダイデルス核Deitersscher Kernあり,さらにその内側には前庭神経内側核があり,また背方には前庭神経背側核Nucleus terminalis dorsalis n. vestibuli, すなわちペヒテレフ核Bechterewscher Kernがある.

 三叉神経脊髄路の内側に大緬胞性の大きな核が現われる.これが顔面神経核Nucleus originis nervi facialisである.その細胞の神経突起(以前はPars prima radicis nervi facialisと呼ばれた)は斜め内側背方に菱形窩正中溝の方向に走る.

 この線維群のその後の走行については 423頁を参照せよ.脳室の底のすぐ下には外転神経核Nucleus originis n. abducentisがある.白網様質Substantia reticularis albaはその中央部にかなり多量の灰白質と多数の神経細胞とを有っている.この神経細胞は被蓋網様核Nucleus reticularis tegmentiであり,その神経突起は網様体脊髄路(320頁参照)を作る.この核によって内側縦束Tractus longitudinalis medialisと内側絨体Lemniscus medialisとがたがいに隔てられている.オリーブ核Nucleus olivaeはこのあたりにその上端がある.両側の錐体はつよく腹方に突出し,前外弓状線維と弓状核とに囲まれている.

10. 橋Pons,横断面II(図464)

 次の断面は橋の下部を通る.この断面の外側部を占めている密な線維の集りは橋腕である.橋腕は内側腹方に走って,橋の領域でばらばらの線維束に分れる.この線維束の一部は浅橋線維Fibrae pontis superficialesとなって,錐体の腹方を越えて横に走り,錐体は表面からかくされる.錐体じしんは橋の範囲では橋縦束Fasciculi longitudinalesと呼ばれる.橋腕の線維の一部は深橋線維Fibrae pontis profundaeとなって錐体とその背方にある部分とのあいだた入りこむ.橋の横走線維束は正中線で交叉している.これらの線維束のあいだには灰白質の大きな集りがあって,これが橋核Nuclei pontisである.橋縦束と橋核と橋線維とがいっしょになって橋底部Pars basialis pontisをなし,橋背部Pars dorsalis pontis(橋被蓋Brückenhaube)は錐体を除いた延髄の続きをなしている.

 橋核には同側の皮質橋核路Tractus corticopontini, Großhirn-Brückenbahnen渉終る.橋核の細胞の神経突起は橋の横走線維束となって縫線で交叉し,他側の橋腕を作り,[]小脳路Tractus pontocerebellaresとなって小脳皮質に達する.

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最終更新日13/02/03

 

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