Rauber Kopsch Band2.626   

 涙腺の徴細構造は耳下腺のそれとはなはだよく似ている(図659).涙腺は複合管状腺に属し,その導管は2層の円柱上皮で被われている.導管は長い介在部Schaltstückにつづく.これは背の低い上皮で被われた細い管である.介在部につづいて分泌を行なうところの終末部がある.これは漿液性の腺細胞でできた厚い壁によって囲まれた部分である.その腺細胞は顆粒をもつ円柱状のもので,長いあいだ分泌をつづけると小さくなり,またいっそう顆粒状になって濁ってきて,鮮明な境界がみえなくなる.基礎膜には核をふくむ星状の肥厚部があって,たがいに吻合しあって1種の「かご状の骨ぐみ(Korbgerüst)」をつくっている.かごの目は基礎膜のうすい部分によって完全にふさがれている.唾液腺の導管で非常に目立っている小棒構造の上皮Stäbchenepithelは,涙腺の導管には全くない.また比較的太い導管では,結合組織性の基底層が外側の輪走線維と内側の縦走線維からできている.ここに筋線維はない.

 神経: 涙腺の(副交感性)神経は橋唾液分泌核Nucleus originis salivatorius pontisからおこり,まず大浅錐体神経を通って翼口蓋神経節にいたる.ここから発する節後線維は頬骨神経および(涙腺神経の)頬骨神経との交通枝Ramus communicans(n. lacrimalis)cum n. zygomaticoを通って涙腺神経にはいり,この神経を介して涙腺に分布する(図499).涙腺にくる神経線維は大部分が無髄であって,腺房の基底膜の上で叢をつくり,それからごく細い小枝や線維がでて基底膜を貫き,細胞上網Überzellennetzをつくる.ここからさらに神経糸が涙腺細胞のあいだに侵入し,細胞間網Zwischenzellennetzをつくっている(図584586).

[図659]ヒトの涙腺の切片

b) 涙小管 Ductuli lacrimales, Tränenkanälchen(図658)

 上下2つの涙小管があって,相寄りながら内側へ走る.両涙小管の内側端が合して長さ0.8~2.2mmの短い共通の集合管をなし,これが涙嚢に注ぐ場合(図658)と,両涙小管が涙嚢の小さい陥凹部に別々に注ぐ場合とがある.

 涙小管の初まりの部分は特有の鉛直方向の走り方をなす.つまり上のものは上方へ,下のものは下方に走る.この鉛直の部分とこれに続く水平方向の部分とは成人では弓状に移行しあっているが,胎児では両部分の境が鋭い折れ曲りを示している.涙小管は涙点で広い開口をもってはじまり,ついで著しく狭くなり,従ってロート状をしているわけである.ロートの狭くなった部分をすぎると,凸側に憩室形成を伴なって著しく広くなった部分がある.ここを涙小管膨大Ampulla ductuli lacrimalisといい,1mmの内径がある.次に続く水平方向の部分は長さが6~7mmあって,内側へ次第に狭くなり,ついに集合管(または直接に涙嚢)に注ぐところでは0.3mmの太さとなっている.内眼角から下の涙乳頭までの距離は6.5mm,上の涙乳頭までの距離は6mmであって,下涙小管の方がいくらか長い.眼瞼をとじると下涙乳頭は上涙乳頭の外側に位置する.両乳頭の先はいくらか後方に向き,同時に上のものは下方を,下のものは上方を向いている.

 微細構造:涙小管の上皮は10~12層の細胞からなる重層扁平上皮で,その厚さは120µである.その最深層は円柱状の細胞で,浅層の細胞は扁平である.

S.626   

最終更新日13/02/03

 

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