Rauber Kopsch Band2.660   

前にも述べたように,最後の(第3の)半回転は第2の回転よりせり上つておらず,同じ高さに並んでいるので,それらの間の隔壁は上向きに立って,蝸牛軸とまちがえられるのも当然なのである(図692, 3).蝸牛軸板に管が通じていることはかなりしばしばであるが,これは最後の神経束が通る管ではなくて,1本の静脈がとおるのである.

骨ラセン板Lamina spiralis ossea

 蝸牛軸からこれをラセン状にとりまくようにして2枚の骨葉が出ていることは,蝸牛軸の外面を一見するとすぐわかる(図692).その1つは隔壁Zwischenwandで,もう1つは骨ラセン板である.隔壁はそれぞれの回転のあいだを仕切るものであるが,骨ラセン板の方は管の中ほどまで伸びているだけで,ラセン管の外壁には達しない.こうして骨ラセン板はラセン管を2本の相並んで走る道に不完全に分けている.これらの道は蝸牛の階Treppenという名でよばれている,骨ラセン板にそのつづきとして膜ラセン板Lamina spiralis membranaceaがつくと,両階の仕切りはたった1つの場所を除いて完全なものとなる.一方の階は前庭階Scala vestibuli, Vorhofstreppeとよばれ,広い開口をもって前庭に通じている.すなわち前庭から起こっている.もう1つの階は広い開口をもって蝸牛窓によって鼓室に開くもので,これを鼓室階Scala tympani, Paukentreppeとよぶ.しかし自然のままの状態では蝸牛窓が第二鼓膜によって閉ざされていることはすでに述べた.両階のうちで前庭階はその外側部に,蝸牛器官の全体を通じてもっとも重要な部分である蝸牛管Ductus cochlearisをもつことが特に著しいのである(図686).

 骨ラセン板は図689でみるように,後半規管の膨大部脚の開口および蝸牛窓の近くで,前庭の内側壁からはじまっている.

 骨ラセン板の初まりの部分に向いあって1枚の骨小板が出ていて,ラセン板の自由縁と外側壁とのあいだのすきまを狭くしている.この骨小板には第二ラセン板Lamina spiralis secundariaという名がつけられている.これは前庭から遠ざかるほど低くなって,最初の1回転の半分の長さのところですでに消失してしまう.骨ラセン板と第二ラセン板の出発点は,前庭の蝸牛陥凹Recessus cochlearisとよばれる場所である,この陥凹は前庭稜の下行部と球形嚢陥凹の下縁とによって囲まれる小さいくぼみで(図689),膜性の蝸牛管の前庭盲端を容れるところである.骨ラセン板と第二ラセン板とのあいだの細長いすきまは,蝸牛のそのほかの腔所と同様に膜ラセン板によって閉ざされている.

[図692]蝸牛ラセン管を開いたところの模型図×5

1, 2, 3 蝸牛軸,1 蝸牛軸底, 2 蝸牛軸, 3 蝸牛軸板, 4, 4, 4 骨ラセン板, 5 骨ラセン板鈎,6, 6, 6 隔壁, 3と3のあいだに蝸牛孔がみえる.7 鼓室階,8 前庭階.

[図693]蝸牛の中央を通る断面 ×5(Arnoldによる)

2, 2, 2 骨ラセン板, 3, 3, 3 鼓室階, 4, 4, 4 前庭階, 5 蝸牛軸をつくる多孔性の骨質.

[図694]蝸牛管の上端

dc 蝸牛管, k 頂盲端, h 骨ラセン板鈎,t 蝸牛孔--前庭階(読者に近い方にあってその上壁はとりさつてある)と鼓室階との間の開放性結合.

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最終更新日13/02/03

 

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