変化 change 最終更新日:2002年05月09日船戸和弥のホームページ

 事物におけるある状態から他の状態への移行をいう。どの事物にも量的規定性と質的規定性とがそなわっていて、事物の質の存続と結びついている量的規定性について多かれ少なかれ漸近的におこなわれる変化(量的な増大ないし減少)が蓄積され、ついに事物に固有な変化がこえられると、事物の根本的な質的変化、つまり、新しい質への移行が引き起こされる。これは、事物の合法則的発展における飛躍であり、転化といわれる。このようなものが、<量的変化から質的変化への移行>といわれるものである。一例をあげよう。トマトには、大きさ・重さなどの量的規定性がそなわっているが、トマトがトマトの質を保持してトマトでありつづけるということと結びついている量的規定性はなにかといえば、それは鮮度にほかならない。この鮮度がいくらか落ちても、トマトはまだトマトであることができるが、この過程が進行して当のトマトに固有な限度がこえられた段階では、トマトではもはやなくなって、捨てられるほかしかたがないものになる。つまり、トマトに根本的な質的変化が生じて、新しい質への移行がおこなわれたのである。また、社会生活においても、自然でと同じく、量的変化も質的変化も生じる。前者は<進化>という概念で、後者は<革命>という概念で、それぞれいいあらわされる。ところで、なにがこのような変化を引き起こすのか。よく<量的変化が質的変化をよび起こす>などといわれることがあるとしても、前者が後者の原因ではない。変化の原因は、事物の内部に存在する。事物に固有な本質をなす矛盾がそれであり、量的変化およびそれの質的変化への転化は、この矛盾の発現にほかならないのである。

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)(p432)から引用