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T1-7a.jpg (18152 バイト)

嗅索の後端部の高さ(前頭断面) Dに対する面

 大脳縦裂によって分けられた両半球の断面では、灰白質すなわち大脳皮質と核が、白質すなわち髄質から区別される。脳梁の左右の半球を結んでいる。脳梁の上には帯状回がみえる。外側面では外側溝が深く入り込んでいる。その背側には、上前頭回、中前頭回および下前頭回からなる前頭葉がある。これらの回は互いに上前頭溝および下前頭溝によって分けられている。外側溝の腹側には側頭葉があり、ここには上側頭回、中側頭回および下側頭回がみられる。これらの側頭回は上側頭溝と下側頭溝によって分けられている。外側溝は深部では拡がって大脳外側窩(シルヴィウス窩)となり、その内面には島がある。島皮質は底側ではほとんど嗅索の後端部にまで達している。この島皮質は古皮質と新皮質との移行領域である。半球の深部には線条体があり、これは内包によって尾状核と被殻とに分けられている。側脳室については前角がみえている。側脳室の外側壁を作るのは尾状核、その内側壁をつくるのは透明中隔である。この透明中隔は透明中下腔という腔隙を含んでいる。被殻の外側面には狭く細長い殻状の灰白質があり、これを前障という。この前障は被殻とは外包によって、また島皮質とは最外包によって隔てられている。

01:大脳縦裂、02:上前頭回、03:上前頭溝、04:中前頭回、05:透明中隔、06:下前頭溝、07:下前頭回、08:大脳外側窩、09:上側頭回、10:上側頭溝、11:中側頭回、12:下側頭溝、13:下側頭回、14:嗅索、15:前障、16:外包、17:最外包、18:側頭弁蓋、19:外側溝、20:前頭弁蓋、21:被殻、22:内包、23:尾状核、24:前角、前頭角、25:透明中隔腔、26:脳梁、27:帯状回、28:前交連、29:視交叉、30:古皮質、旧皮質、31:淡蒼球


01. Fissura longitudinalis cerebri(大脳縦裂)Longitudinal cerebral fissure

 →左右大脳半球は大脳縦裂によって不完全に分けられており、生体ではこの部分に大脳鎌が入り込んでいる。前頭部と後頭部では大脳半球は完全に分かれているが、中央部では大脳縦裂が幅広い半球間の交連線維群である脳梁までしか達していない。

02. Gyrus frontalis superior(上前頭回)Superior frontal gyrus

 →上前頭回は上前頭溝の上にある。上前頭回および中前頭回の後部には運動性皮質中枢の続き(運動前野)があるが、これらの回の前部および下前頭回は連合中枢(前頭連合野)と考えられれる。

03. Sulcus frontalis superior(上前頭溝)Superior frontal sulcus

 →上前頭溝は中心前溝から始まり大脳半球上縁と平行に走る。

04. Gyrus frontalis medius(中前頭回)Middle frontal gyrus

 →中前頭回は上前頭溝と下前頭溝の間にあり、中前頭回および下前頭回は人脳では特に発育が良い。

05. Septum pellucidum(透明中隔)Septum pellucidum

 →脳梁と脳弓との間に2枚張っている中隔。側脳室の前角を互いにへだてる。

06. Sulcus frontalis inferior(下前頭溝)Inferior frontal sulcus

 →透明中隔は左右の側脳室前角を分離する一対の薄板である透明中隔板と、その間の狭い間隙である透明中隔腔からなる。透明中隔腔は成人ではしばしば閉鎖し、左右の透明中隔板が密着する。透明中隔腔は脳室ではなく、その内面には上皮細胞層が証明されない。透明中隔板は脳梁と脳弓の間に張られているが、発生学的には終脳胞の内側面の一部が脳梁の発達のため前頭葉から分離されたもので、痕跡的な大脳皮質の構造を示す。透明中隔は元来の中隔野の後部の一部で、中隔野には透明中隔のほか、前交連と終板の前にある終板傍回、梁下野、中隔核などが含まれる。

07. Gyrus frontalis inferior(下前頭回)Inferior frontal gyrus

 →下前頭回は外側溝の前枝と上行枝によって3つの部分に分けられる。すなわち、①眼窩部、②三角部、③弁蓋部である。優位大脳半球(通常は、右利きの人では左側にある)の三角部と弁蓋部は運動性言語中枢motor speech center(ブローカ中枢Broca's area)があり、言語活動に必要な微妙な運動支配を支配すると言われる。前頭葉下面は前頭骨眼窩部の上面にのっておりわずかに凹んでいる。ブローカ中枢は、右利きの人では左半球に、左利きの人では右半球にあるという説がある。

08. Fossa lateralis cerebri(大脳外側窩)Lateral cerebral fossa

 →外側溝深部にある腔所。外側溝は下面における陥凹である大脳外側窩の外側端ではじまり、しばらく上外側方に走って外側面に現れ、ここで3つの枝に分かれる。

09. Gyrus temporalis superior(上側頭回)Superior temporal gyrus

 →上側頭回は外側溝と上側頭溝の間にある。上側頭回の後部付近には感覚性言語中枢sensory speech center(ウェルニッケ中枢Wernicke's area)があり、これは聞いた言葉を理解する中枢であるという。一次聴覚野は聴覚の中枢で、側頭葉の上側頭回の上面(Brodmannの41野)にある。二次聴覚野は一次聴覚野の周囲(42、22野)にある。一次聴覚野で聞く音の意味はこの皮質領域で理解される。臨床的側面としてウェルニッケ中枢の障害時には、言語の理解ができない。ちょうどしらない外国語を聞くのに似ている。また、自己の発する言語音を聞きながら発声をすることができないので、理解できるような言語を発することもできなくなる。乳児のようにチンプンカンプンの発語となる(jargon aphasia)。このように感覚性言語野の障害で起こる失語を感覚性失語症sensory aphasiaまたは言語聾word deafnessという。感覚性言語中枢と聴覚領のすぐ下の上側側頭溝には、眼で見た物の動きを総合して認識する神経細胞が存在する。一側の一次聴覚野の障害では、反対側の聴力に障害が起こるが、聴力が完全に失われることはない。一側の聴覚器からの入力は両側の聴覚野に達するためである。二次聴覚野の障害が起こると、聞く音の意味を理解することができない。これを聴覚失認auditory agnosiaという。

10. Sulcus temporalis superior(上側頭溝)Superior temporal sulcus

 →上および中側頭回の間にある。

11. Gyrus temporalis medius(中側頭回)Middle temporal gyrus

 →側頭葉には大脳回が3列に並んでいる。つまり中央の上側頭溝と下側頭溝に挟まれた脳回が中側頭回である。

12. Sulcus temporalis inferior(下側頭溝)Inferior temporal sulcus

 →中および下側頭回の間にある。

13. Gyrus temporalis inferior(下側頭回)Inferior temporal gyrus

 →下側頭回は下側頭溝の下方にある。

14. Tractus olfactorius(嗅索)Olfactory tract

 →嗅索は前有孔質に向かい、そこではっきり区別できる外側および内側嗅条に分かれる。嗅条の表面には薄い灰白質があってそれぞれ外側、内側嗅回とよばれる。外側嗅条と外側嗅回は前有孔質の外側縁を通って皮質の梨状葉皮質にいたり、その部分と、扁桃体の皮質内側核に終止する。

15. Claustrum(前障)Claustrum

 →前障はレンズ核と島との間にある、内側が凹面をなす板状の核で、腹側方に厚くなる。この核とレンズ核との間には外包があり、また島の皮質との間には最外包がある。これらは狭い白質で、大部分は連合線維から、一部は交連および投射線維からなる。前障は種々の視床核、扁桃体などから線維を受け、大脳皮質に広く投射する。前障は以前は線条体とともにいわゆる基底核に数えられたり、あるいは皮質層の付け足しとして島皮質に属するものとされた。しかしながら、発生学的ならびに比較解剖学的研究によって、前障は発生の途中で位置がずれた古皮質の細胞群であることが証明されている。前障はその広い底の所で古皮質の領域へ移行する(すなわち梨状前野や扁桃体の外側核へ)。頭頂葉、側頭葉および後頭葉の皮質からの、無髄線維が局在的配列をなして前障に終わると言われている。前障の機能についてはわかっていない。

16. Capsula externa(外包)External capsule

 →前障と被殻の外表面とのあいだには幅の狭い白質の層があり、大脳皮質から被殻に達する神経線維はこの線維層を通る。

17. Capsula extrema(最外包)Extreme capsule

 →前障の外側方には幅の狭い線維層があって、島の皮質と前障を隔てている。これらの線維の連絡関係は知られていない。

18. Operculum temporale(側頭弁蓋)Temporal operculum

 →側頭弁蓋は上側頭回の島を被う部分。

19. Sulcus lateralis(外側溝)Lateral sulcus

 →『シルビウス裂溝Sylvian fissure』ともよばれる。外側口はぢあの右半球の底面における陥凹である大脳外側窩に始まり、外包にすすんで半球外側面に現れ、その主部は後枝として後上方にすすみ、一方は前頭葉および頭頂葉と他方は側頭葉との境をなす深い溝である。半球外側面に現れたところで2小枝、すなわち前に向かう前枝と、上行する上行枝を出す。外側溝の奥には島がある。オランダの医学者Francis Sylvius (1614-1672)による。ちなみに中脳水道のシルビウスは別人である。

20. Operculum frontale(前頭弁蓋) Frontal operculum

 →外側溝上行枝の後方にある下前頭回の部分。島を被っている。

21. Putamen(被殻)Putamen

 →レンズ核の外側部。終脳から発生した部分。被殻はレンズ核の外側部を形成し、外側髄板によって淡蒼球の外節とへだてられている。島皮質とは最外包、前障、外包によってわけられる。被殻の構造は尾状核とまったく同様で、太い有髄線維をほとんど含まず、主として小さい神経細胞からなるが、散在性の大細胞を含む。被殻と尾状核は発生学的にみると、同一の細胞群が内包の発達によって隔てられたもので、両者の間には互いに結合する灰白質の線条が多数見られる。そのため、両者をあわせて線条体または新線条体と呼ぶ。線維連絡も尾状核と原則的に等しい。霊長類において動物が高等になると、相対的な意味で尾状核の体積が減少し、被殻の体積が増大するといわれている。

22. Capsula interna(内包)Internal capsule

 →内包は外側のレンズ核と内側の尾状核および視床との間にある、大きい線維束の集団で、その大部分は下方に集まって大脳脚に移行する。内包は大脳半球の水平断でみると、内包前脚と内方後脚からなり、これらは鈍角をなして交わり、内包膝の名で知られる接合部を形成する。内包前脚はレンズ核と尾状核の間にあり、また内包後脚(レンズ核視床部)はレンズ核と視床の間にある。内包のレンズ後部は尾方に、レンズ核の少し後ろにまで伸びる。この尾方の領域にはレンズ核の下を通って側頭葉に達する一群の線維があり、これらはまとまって内包のレンズ下部sublenticular portionを形成する。

23. Nucleus caudatus(尾状核)Caudate nucleus

 →尾状核は全体として弓状の大きな灰白質である。の吻側部は視床の吻側に位置し、側脳室前角のなかに隆起してその外側壁をなし、尾状核頭とよばれる。後方で細くなって尾状核尾とよばれ、視床の背外側縁に沿って側脳室の中心部の底面の外側縁を走り、やがて側脳室の弯曲に沿って下方にまがり、側脳室下核の上壁に達し、扁桃体との後端部のレベルでその外側部に接しておわる。尾状核頭と尾状核尾の中間部を尾状核体という。神経細胞には、大きく分けて、大小2種類(1:20)のものがみられる。求心性神経線維の起始部の主なものは、大脳皮質・視床髄板内核・視床正中中心核・黒質である。黒質(とくに緻密部)からはドパミン作働性の神経線維を受ける。尾状核からの遠心性神経線維の主な分布域は淡蒼球と黒質(とくに網様部)であり、これらの多くのものはGABA作働性である。

24. Cornu frontale; Cornu anterius(前角、前頭角)Frontal horn; Anterior horn

 →側脳室の前角は室間孔より前方の部分、内側壁は透明中隔、外側壁は尾状核頭、前壁及び上下壁は脳梁によってつくられる。

25. Cavum septi pellucidi(透明中隔腔)Cavity of septum pellucidum

 →透明中隔の一対の板。透明中隔腔の側壁をなす。

26. Corpus callosum(脳梁)Corpus callosum

 →脳梁は左右の大脳皮質、ことに新皮質を結合する線維の集合したもので、系統発生的には最も新しく、ヒトでは非常に発育がよい。その前後経はほぼ7.7cmである。脳梁は正中断では全体としては釣針状で、4つの部分が区別される。後端部は膨大し、脳梁膨大といい、その前方に続いて水平に走る部分を脳梁幹とよぶ脳梁はその前端では強く屈曲し、脳梁膝をつくる。これはさらに後下方にくちばしのように尖って脳梁吻となり、しだいに薄くなって終板に続く。

27. Gyrus cinguli(帯状回)Cingulate gyrus

 →帯状回は、脳梁の前端から始まり、脳梁の上を回って、その後端まで達する。帯状回と脳梁の間には脳梁溝があり、帯状回と上前頭回との間には帯状溝がある。嗅脳に属する。

28. Commissura rostralis(前交連)Anterior commissure

 →間脳の前交連は第三脳室の前壁をつくる終板の後ろにある横走線維束である。前部は小線維束で、左右の両側の嗅脳系を結び、後部は大きな線維束で、左右両側の側頭葉に連絡する。

29. Chiasma opticum(視神経交叉、視交叉)Optic chiasm; Optic chiasma

 →視(神経)交叉は視床下部の漏斗の吻側にある扁平な線維板で、X形を呈する。視交叉の背側から両側に開いて出る線維束は視索である。第三脳室の終板と灰白隆起の間で視交叉は第三脳室の底の一部を成す(視交叉陥凹)。視交叉はその上面で(終板の前方)前交連動脈と接し、下面はトルコ鞍の鞍隔膜の上に乗っている。したがって下垂体前葉から発生する腫瘍が視交叉を圧迫することがある。

30. Paleocortex(古皮質、旧皮質)Paleocortex

 →古皮質の原基は半球胞の底面で線条体に隣接する領域にある。古皮質の範囲については異論があるが、梨状葉前野や扁桃体周囲野等のいわゆる一次嗅皮質といわれる領域が古皮質であると一般に考えられている。発生学的にみると、古皮質の特徴は皮質板が欠如していることである。すなわち、古皮質は系統発せ的にもっとも古い皮質であって、同皮質とは明らかに違っている。古皮質は円口類以上のすべての脊椎動物において存在し、狭義の嗅脳(梨状葉を含む)に局在する。嗅脳のうち嗅球は多少とも層構造を示すが、他の領域では層構造は不明瞭である。嗅球はヒトでは退化的で下等動物におけるような明瞭な層構造を示さないが、原則的にはそれと同様である。嗅球の最表面には嗅球に入った嗅神経の軸索からなる層がある。その内方には嗅神経の終末と僧帽細胞の樹状突起は嗅糸球で嗅神経の終末と結合し、その軸索は有髄性で、集まって嗅索をなして後走する。僧帽細胞層の内方には広い顆粒層があり、その細胞は僧帽細胞と連絡し、嗅覚刺激を増強する装置と考えられている。

31. Pallidum(淡蒼球、古線条体、旧線条体)Pallidum; Paleostriatum

 →淡蒼球は薄い内側髄板によってさらに内節と外節に分けられるが、両部は構造上の差異はなく、いずれも散在性の大きい細胞からなり、有髄線維に富み、肉眼的にやや白く見える。

 

最終更新日: 19/02/05

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