Band1.092   

 手の近位部は手根Carpus, Handwurzelとよばれて,幅がせまい,手根から遠位に向かって手の幅が急に増す.その増加はとくに母指側で著しい.かくして中手Metacarpus, Mittelhandとなり,これが5本の指のつけ根までのびている.手背Dorsum manus, Handrückenは両側縁の間で一様に球形に軽く高まっていて,指との浅木のところで中手の背側面は,指を曲げたときに強い突出部すなわちFingerknöchel(指の踝の意)を示す.中手の背側面の皮下には個人的にその程度が違うが,多少とも明瞭の腱性の索や静脈が透いてみえる.手掌Vola manus (Palma), Hohlhand(Handteller)の近位部には両側に1つずつの高まり,すなわち母指球Thenar, Daumenballenと小指球Hypothenar, Kleinfingerballenとがある.手掌の皮膚には若干の溝が走っていて,そのでき方が個人的にちがうので,手相術Chiromantieで重要な役目をしている.1本の溝が母指球をめぐっている.2本はむしろ横の方向に走っていて,そのうち遠位のものは指在る方に凹面をむけており,小指の側でいっそうはっきりしている.ところが近位のものは凹面を手根の方にむけていて,母子の側でいっそうよく発達している.この溝は母指側でしばしば,母指球をめぐる上述の溝の端と合する.その他にも溝がみられることがあるが,その重要性はわりに低いのである.手の表と裏で指のつけ根の具合が違っている.裏すなわち背側面では指の間の溝が中手の近くまではいりこんでいるのに反して,表すなわち手掌では5本の指の近位端が,中手の範囲から指に向かってのびたよくはったつした1つの共通の皮膚の板で被われている.

 5本の手指Digiti manusはいずれも円柱状であるが,その長さと太さがいろいろと異なる.5本のうちの4本は腕の長軸の方向に伸びているが,残りの1本すなわち母指Pollex, Daumen (1Digitus manus I)はその方向が著しく橈側へ偏している.それのみでなくこの指は他のすべての指が3節より成るのに,これだけは2節しかないという点で例外的な立場にある.しかし母指は最も力強くできており,その根本の中手部がはなはだよく運動して,一種の退行手の根本の中手分がはなはだよく運動して,一種の退行主Gegenhand古代ギリシャ人のΆνtιχειρをなしている.指が休止の状態にあるときに母指の屈側面は他の4本の指の屈側面に対して垂直になっているが,母指の運動によって,その面を平行にすることもできるし,対抗して接しさせることもできる.他の4本の指は示指Index, Zeigefinger(2Digitus manus II), 中指Digitus medius, Mittelfinger(3Digitus manus III), 薬指Digitus anularis, Ringfinger (4Digitus manus IV),小指Digitus minnimus, kleiner Finger(5Digitus manus V)である.その各々が背側面Facies dorsalis(その一部が爪部Regio unguicularis),掌側面Facies volaris, 橈側面Margo radialis, 尺側縁Margo ulnarisをもっている.

 各々の使節は屈側面では深側面よりもいっそうつよく円味を呈している.そしてどの指でも基節が最も長くて,末節が最も短い.間説では深側面と屈側面のちがいが前者に角質盤が存在することによってはなはだきわだったものとなっている.屈側面は触覚と深い関係を持ち,この感覚は何しろこの所で発達の頂点にあるのである.5本の指の中で中指が最も長い.それについで薬指である(稀に示指の方が長いことがある).つぎの示指,そのつぎに小指である.母指の先端は示指の基節の中央に達している.各指節の境の所は伸側面では弓状および横走の溝により,屈側面ではただ横走する溝によって示される.

 下肢Extremitas pelvina, untere ExtremitätはBeinともいい,その上部はやはり体幹と結合しているが,その結合が腕のそれよりもずっと密接である.下肢の役目が上肢のものとちがうので,それに応じて結合が強固となり,同時にその運動性が減じている.肩に相当する寛骨部Coxa, hüfteは機能の上では体幹の一部となっている.寛骨部Regio coxaeは上方に向かって凸の1線をもって腹部から境され,下方は平たい円い高まりである臀部Regio glutaeaに移行する.臀部の終わりのところには転子隆起Rolhügelwulstといういっそう強い高まりがある.左右の臀部を合わせたものがいわゆるNates (Clunes), Gesäß (Hinterbacken)である.その左右の間に臀裂Crena ani, Gesäßspalte (Afterspalte)という深い切れ込みがあって,ここに腸の末端が開口している.また臀を大腿の後面から境するものとそして臀溝Sulcus glutaneus, Gesäßfurcheがあり,これは軽く球形に曲がって横走する溝で,多くのばあい深い.

  大腿Femur, Oberschenkelは外から見るとき,みる方向によって違った高さにその境界がある.前面では鼡径溝まで,外側面では転子隆起まで,後面では臀溝まで達する.しかし実際には大腿の上部は臀の下にかくれている.ピラミッド形を呈する大腿が膝に向かって次第に細くなり,同時にその横断面が円形に近づく.しかし下端部はふたたび角だって横の方向にやや平たくした形になる.鼡径溝の下方に三角形のへこみがあって,これを鼡径下窩Fossa subinguinalis, Leistengrubeという.このへこみは大腿三角Trigonum femoraleとよばれるいっそう大きい三角形部分の上部をなしている.大腿三角の底辺は鼡径溝であり,比較的長い方の二辺は縫工筋と長内転筋の縁に相当している.大腿の前面Facies (femoris) ventralisの下部にGenu, Knieとう高まりがあり,これは膝蓋骨Patella, Kniescheibeの存在による高まりである.それに相当して前膝部Regio genus anteriorと膝蓋部Regio patellarisがある.その反対がわ,すなわち後面Facies (femoris) dorsalisに筋肉の隆起で境されて膝窩Fossa poplitea, Kniekehleがある.大腿の内外両側面は腓側面Facies fibularis, 脛側面Facies tibialisとよばれる.



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最終更新日11/02/22

 

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