Band1.152   

β)蝶形骨Os sphenoides, Keilbein (図216218)

 蝶形骨は概して左右の方向に伸びて頭蓋底のほぼ中央に位置している.Corpusと3対の翼すなわち大翼Alae magnae,小翼Alae parvae,および翼状突起Processus pterygoidesからなる.

 にはサイコロの様に6面が区別される.上面の中央部には下垂体窩Fossa hypohyseosという左右に伸びた卵円形の深いくぼみがあって,ここに下垂体がはいっている.下垂体窩とその前およびうしろの部分との形は鞍によく似ているので,この構造全体をトルコ鞍Sella turcica, Türkensattelと呼んでいる.下垂体窩の前上縁には横走する角の鋭い稜があり,これを鞍結節Tuberculum sellaeという.その側方には中鞍突起Processus sellae mediusという小さい突起があり,これはあるかないかの程度のことがしばしばであるが,多少長くなっていることも少なくはない.これらの部分の前にあって横走する,浅いけれども広い溝は視神経溝Sulcus fasciculi opticiであって,視神経管Canalis fasciculi opticiにつづいている.視神経溝の前には蝶形骨平面Planum sphenoideumという平らな場所があって,蝶形骨縁Limbus sphenoideusという低い骨の高まりによって,視神経溝とのあいだの仕切りをされている.下垂体窩をうしろの境するものは,ななめに突出している骨板すなわち鞍背Dorsum sellaeで,そのうしろは斜面をなして斜台Clivusの最上部を形成している鞍背の上の隅には前外側方へ伸びる小さい棘があり,これを鞍背突起Processus dorsi sellaeという.

 体の背面には頚動脈溝Sulcus caroticusという幅の広いS状にまがって溝が,後下方から前上方へ走っており,これは内頚動脈の通るところである.頚動脈溝はその始まりのところで蝶形骨小舌Lingula sphenoideaという内側へそりかえった骨小板によって外側の境をされている.

 体の後面は粗面をなし,ここは若い人では軟骨によって(蝶形後頭軟骨結合Synchondrosis sphenooccipitalis),成人では骨性に後頭骨の体と結合している.

 体の前面と下面:蝶形骨の体には蝶形骨洞Sinus sphenoideiという2つの大きな内腔があり,これは蝶形[]洞中隔Septum sinuum sphenoideorumという1枚の正中部の隔壁によって左右に分けられている.左右の蝶形骨洞はそれぞれ蝶形骨甲介concha ossis sphenoidisとう,上方へ弯曲した三辺形の薄い骨板によって,前下方から部分的にふたをされている.それで蝶形[]洞口Apertura sinus sphenoideiというまるい前方の口が開いたまま残ることになる.蝶形骨洞はこれによって鼻腔に開口するのである.

 蝶形骨洞の大きさの変動する範囲ははなはだ広い.蝶形骨甲介は成人では蝶形骨とかたく結合している.

 体の前面では,蝶形骨洞中隔が蝶形骨稜Crista sphenoideaという稜線をなして骨表面に高まりをなしている.これは下方へ蝶形骨吻Rostrum sphenoideumというトサカのように突出した稜線に移行する.

 体の下面は前面と同じく鼻腔に向かっている.後部では正中部に1本の溝があり,前方では正中部が高くなって突出し,その先は蝶形骨吻に続く.下面の外側部には内側に比あいた溝が左右1本ずつ矢状方向に走っており,鞘状突起Processus vaginalisがこの溝の形成にあずかっている.

 小翼Alae parvaeはほとんど水平に伸びている.体の前上方の隅から2根をもって起こり,この2根の間に視神経管を抱いている.小翼の外側端は細くなってとがっており,大翼が前頭骨と接するところにまで伸びているが,大翼と癒合してはいない.小翼の上面は前頭蓋窩の形成に参加している.下面は上眼窩裂Fissura orbitalis cerebralisと眼窩の最後部との天井をなしている.まっすぐ張った前縁Margo frontalisは薄くてギザギザがあり,前頭骨の眼窩板に接している.後縁は軽く弯入する弧をえがき,自由縁をもって頭蓋腔へ突出し,ここが前後の頭蓋窩の境をなしている.後縁の内側部は肥厚して,とがった自由端をなして後方へ突き出している.これが小翼突起Processus alae parvaeである.

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最終更新日13/02/03

 

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