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第1中足骨(図348,349)の近位端には背側で広く掌側で細くなった1つの浅くへこんだ関節面があり,なお第1中足骨粗面Tuberositas ossis metarsei Iという底側の1結節がある.また第5中足骨の近位端には腓側に1つの突出部があって第5中足骨粗面Tuberositas ossis metatarsei quintiとよばれる(図353,354).

 第2~第4中足骨の小頭は側面から圧平されたかたちで,小さい結節で境されている.凸出した関節面はめん棒(ローラー)のような形に底側へ伸び,その先は2分した縁に終っている.骨幹はねじれており,底の背側面が体の脛側面につづいている.このねじれの大きさは非常にまちまちである(図350,351).第1中足骨の小頭の下面には中央を縦に走る1本の隆線があり,その両わきに1つずつ平らな溝があって,第1中足指節関節の種子骨がこの溝の中ですべる.

7. 足の指骨Ossa digitorum pedis (図353,354,356)

 足の指節骨Phalangesは全体的に手の指節骨と非常によく一致しているから,両者のちがうところを指摘すれば充分である.各指節骨がBasis・Corpus・滑車Trochlea・爪粗面Tuberositas unguicularisを1つずつもっている.

 第2~第5の足の4指に属する各3つの指節骨は,これと相同の手の指の指節骨よりもはるかに小さい.これに反して足の母指がもつ2つの指節骨は手の母指のそれよりもよく発達している.第2~第5の足指では基節骨Phalanx proximalisの体が中央部で両側からおされて薄くなっている.中節骨Phalanx mediaはとくに第4および第5指においてはなはだ短い,小指にいたっては中節骨と末節骨とが融合して1本の骨になってしまっていることが稀でない.末節骨Phalanx unguicularisは中節骨よりやや大きいことが多い.

 種子骨Ossa sesamoida第1中足指節関節の下面には2つの種子骨がならんでおり,これらは第1中足骨の小頭の溝の中で動く. もっと小さい種子骨がときどき,ほかの指のこれに相当する関節に認められる.また上述の母指の2つの種子骨のあいだに,さらに第3の小さい種子骨のあることが時どきある.

 指節骨の融合:中節骨と末節骨の融合が第5指ばかりでなく,第4指にも見られることが少くない(Pfitzner).いずれの指の場合でも指節の融合はすでに胎生早期に起るものらしい,しかし5の指節骨の融合も決してまだ固定した状態となっているわけではなくて,全例のやっと3分の1に認められる程度にすぎない.(第5指の指節骨の融合はPfitznerによれば37%であるが,日本入では長谷部・足立・中西などの研究を総合すると70~80%となる.第4指においてもPfitznerの1.6%に対して長谷部は7.8%,中西は5.4%としている.中西一夫,十全会雑誌47巻1号,1942. )Pfitznerのいうところによれば,足の骨格のほとんどすべての変異は,そのどれもが,存在不定の痕跡的な骨格部分の状態に関係するか,あるいは今日なお常在する骨格部分の退化に関係している.

 過剰足根骨Ossa tarsi accessoria:足の骨格の変異は手の骨格の変異にくらべてその解釈や分類がはるかに困難である.足の骨格における変異の多くのものについて,それが「系統発生のくりかえし」(Palingenese)をあらわしているのか,それとも病的な状態をあらわしているのかが分らなかったし,また或る部分や突起が或る骨に余分についている場合に,それを古い段階にとどまっている.つまり古い状態の遺残と考えるのがよいか,あるいは進化した形象と解釈するのがよいかが決まらなかったのである.そこへHasselwanderの研究がその解決をもたらした.すなわち距骨の過剰骨のうちの,たぶん全部ではないが,少くとも一部はたしかに軟骨性の独立した原基がつくられ,のちに近隣のものに同化されてしまう.ところでこの同化された過剰骨の原基のなかに,その後に出現する(不定の)骨端および突出部の骨化中心が,それらが所属すべき距骨の規準の部分("kanonishe Elemente")と骨結合しない場合には,これらの骨化中心は機械的な要因によってほぐれたり,ひきはなされたりすることがある.こんなわけでこれらの過剰骨は実は骨端が離れて残ったものである.ヒトの足において規準の骨として考えるべき足根骨および中足骨が,いかなる要素から構成されるかという概観を図328,329,355があたえている.

Dyre Trolle, Accessory bones on the human foot. Kopenhagen.-Virchow, H., Verh. physiol. Ges. Berlin.1901.-Hasselwander, Z. Morph. Anthrop.,12, Bd.,1909; Z. Konst.,8. Bd.,1921; Verh. anat. Ges.,1921;同じ著者,Morph. Jhrb.,90. Bd.,1950.

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最終更新日13/02/03

 

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