歴史的な偉大な解剖学書
裂隙状のせまい関節腔がたいてい第2~第5肋骨の胸肋関節Articuli sternocostalesにのみ存在している.なぜなら第1肋骨の軟骨はほとんど常に[第1肋骨の]胸肋軟骨結合Synchondrosis sternocostalis costae primaeによって,また第6および第7肋骨はしばしば軟骨結合によって,直接に胸骨と結合しているからである.
特殊な装置として関節内胸肋靱帯Lig. sternocostale intraarticulare(図402,408)が挙げられる.
この靱帯は線維軟骨板として,第2胸肋関節にはほとんど常に,第3胸肋関節にはわずか1/5例に,第4胸肋関節には1/10例に,ほかの関節にはいっそう稀に存在する.また補強靱帯として放線状胸肋靱帯Ligg. sternocostalis radiataがある.これは軟骨端から胸骨の前面へ放射状にひろがり,その下層および表層の線維ならびに他側のものと交叉し編み合って,胸骨膜Membrana sterniを形成している.
これを前胸骨膜Membrana sterni ventralisと呼んで,胸骨後面にあって同じようにして構成されている後胸骨膜Membrana sterni dorsalisと対立させることがある.
第6~第7肋骨の軟骨からは,これに相当するものとして肋剣靱帯Ligamenta costoensiformiaとよばれる補強靱帯が,剣状突起に向って内側下方へ伸びている.
第5または第6から第9までの肋軟骨は,たがいに関節突起を伸ばし合っていて,そこに関節をつくっており,その裂隙をまたぐようにして伸びだした軟骨膜が関節包をなしている.
肋硬骨とその肋軟骨とのあいだの結合である.成人ではその結合部で軟骨が石灰化している.となりの肋骨とのあいだには肋間靱帯Ligg. intercostalia(図400,402)が張っている.これには外および内肋間靱帯Ligamenta intercostalia externa et internaが区別される.
外肋間靱帯は最下の1つあるいは2つの肋間隙(ときに第1肋間隙も)には欠如する.この靱帯は外肋間筋のつづきにあり,いろいろ違ったぐあいに胸骨縁にまで伸びている.内肋間靱帯は同様に平らな, しかし存在の不定な線条として,内肋間筋の前部と外肋間筋の後部とを被っている.
なお肋間靱帯の項でいうべぎことは,この靱帯がしばしば広く延びて,下部の肋骨から腰椎の肋骨突起の端や腸骨稜にまで張られていることである.肋骨突起からこの膜へ放射状の線維束が出ている.この膜を腰腱膜Aponeurosis lumbalisという.その中を比較的強い1つの線維束が,第1腰椎の肋骨突起から第12肋骨に達している.これが腰肋靱帯Ligamentum lumbocostaleである.
胸骨結合Symphysis sterni.胸骨の柄と体のたがいに向き合った端は成入では表面を硝子軟骨層で被われ,両者の間にさらに軟かい線維軟骨層をはさんでおり,それも含めると全軟骨層の厚さは6mmに達する.この線維軟骨層の中に,裂隙状の関節腔ができていることもある.骨結合になっていることはむしろ稀である.
これと似た線維軟骨性結合が胸骨体と剣状突起とのあいだにある.年をとると柄と体のあいだも,体と剣状突起のあいだも骨結合をするようになる.
呼吸に役だつところの肋骨運動は挙上と下制にある.肋骨の挙上とともに肋軟骨が伸び,それによって胸骨が前方へ動かされる.肋骨の挙上と胸骨の前方移動の両者が胸郭をひろげるのである.
肋骨の挙上は,小頭関節と肋横突関節に共通の1本の軸を中心にして,肋骨が回転することによって起る.つまりこれら両関節は一種の複合関節をなしており,力学的には肋骨後端の1個の回旋関節を構成するのである.
最終更新日13/02/03