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4. 梨状筋M. piriformis. (図558, 559, 565, 572)

 これは第2~第4前仙骨孔の縁で仙骨の前面から起って,だいたいに横の方向に大坐骨孔を通り,その孔の周縁から2,3の筋束が加わっていて,大転子の尖端に停止するのである.

 梨状筋包Bursa m. piriformisという1つの粘液嚢がこの筋の腱と大転子とのあいだにある.

 神経支配:仙骨神経叢から直接に出る1枝による.

 脊髄節との関係:S.I, II.

 作用:大腿を後方に引き,これを外転し且つ外方にまわす.

 変異(梨状筋が坐骨神経に貫かれるものは日本人において102体側のうち11体側(10.8%) (松島).306体側のうち106体側(34.6%) (福元).シナ人では48.13±3.95%(橋本).また坐骨神経が2分して梨状筋の上下を通るものは226体側のうち78体側(34.5%) (福元).シナ人では6.88±2.00%(橋本)である(松島伯一:実地医家と臨床, 4巻,67~69, 751,1927;福元登:福岡医科大学雑誌, 28巻,756~763,1935;橋本正武, 外山清:解剖学雑誌,19巻,171~184,1942).):この筋が完全に,あるいはその一部が欠けていることがあり,ときに仙骨神経叢の束に貫かれて,2つあるいは3つの筋腹に分れていることがある.す でにのべた中臀筋および小臀筋との結合のほかに上双子筋,内閉鎖筋との癒合がみられることがある.この筋の起始が第1仙椎あるいは第5仙椎, さらに尾骨にまで達することもあるが,一方この筋が2つの仙推(第2と第3, あるいは第3と第4)だけから起ってい ることがある.

5. 内閉鎖筋M. obturator internus. (図489, 558, 559, 561, 563, 564, 572)

 この筋は寛骨の内面で弓状線より下方の部分,ならびに閉鎖膜から起り,小坐骨孔を通って骨盤の外に出る.このとき内閉鎖筋の腱は坐骨枝の寛骨臼部をまわって鋭いかど角をなして曲り(図489).転子窩の中に停止している.

 小坐骨孔から外に出たときに両双子筋がこの筋に加わる.内閉鎖筋の腱は4つ~5つの束よりなっていて,この腱束が筋肉質の中にかなり長く入りこんでいる.

6. 上双子筋M. gemellus spinalis, oberer Zwillingsmuskel. (図558, 559)

この筋は坐骨棘から起る.

7. 下双子筋M. gemellus tuberalis, unterer Zwillingsmuskel. (図558, 559)

 この筋は坐骨結節から起り,両双子筋の腱は内閉鎖筋の腱と合している.

 軟骨に被われた坐骨切痕とこの腱とのあいだに内閉鎖筋嚢Bursa m. obturatoris interniという1つの粘液嚢がある.

 神経支配:仙骨神経叢からの枝による.

 脊髄節との関係:内閉鎖筋はL. V, S.1, II, 上双子筋はL(IV)V, S. I(II).下双子筋はL. IV, V, S.I.

 作用:これら3つの筋は大腿を外方に回す.

 変異:内閉鎖筋は隣接する骨のいろいろな部分ならびに靱帯から過剰の筋束をうける.閉鎖膜から起る部分は全部あるいはその一部が,骨に始まる部分から分れていることがある.上双子筋はしばしば欠けているが,また重複していることもあり,まれに梨状筋といっしょになって停止し,あるいは股関節の関節包に停止している.下双子筋の欠如は上双子筋のそれよりもいっそうまれである.結節,棘両双子筋がそろって欠けていることはそれよりもさらにまれである.下双子筋は大腿方形筋と結合していることがある.

[図561] 右大腿骨の上部の後面における筋の起始と停止

8. 大腿方形筋M. quadratus femoris. (図558, 559, 566, 569)

 これは平らな,四角形の厚い筋で坐骨結節からおこって,大転子の下部およびこれに続く転子間稜に停止している.

 神経支配:仙骨神経叢による.

 脊髄節との関係:L. IV, V, S.I.

 作用:大腿を外方に回す.

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最終更新日13/02/03

 

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