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4. 腎上体動脈Arteria suprarenalis (図662)

 この動脈は上腸間膜動脈のすぐ下で大動脈から始まり,ほとんど真横にすすみ横隔膜腰椎部の脚を越えて腎上体にいたる.

 腎上体では多数の小枝に分れて広がっており,また他の腎上体の動脈,すなわち下横隔動脈の腎上体枝と腎動脈の腎上体枝とにつながっている.

5. 腎動脈Arteria renalis(図662)

 これは太い動脈で上腸間膜動脈の起始より約1~2cm下方で発するがそのさい左右の腎動脈のうちで右のものがしばしば左のよりも上方で起こっている(Heidsieck).また大動脈の位置が左によっているため右腎動脈の方が左よりもいくぶん長い.

 左右の腎動脈はほとんど直角をなして大動脈を出て腎臓に向かっている.そのさい右の腎動脈は下大静脈の後を通る.しかし左右の腎動脈はそれに平行する腎静脈によって前方から被われている.腎門にはいる前に左右それぞれ4本ないし5本の枝に分れ,これらの枝の多くは静脈と腎盂のあいだにある.

 腎動脈が腎臓にはいる前に1本ないしそれ以上の小枝を腎上体にあたえるが,これを腎上体枝Rr. suprarenalesという.また腎臓の脂肪嚢にも同じく若干の小枝を送っている.

 変異:腎動脈が最初から1本の幹として出ないでまちまちな数の枝でおきかえられていることがある.その場合,同一の個体で左右爾腎動脈が大きな非対称性を示すことがまれでない.多くの起始をもっている場合にそれらがたがいに1列をなして並んでいるのが普通である.腎臓が下方にある場合には腎動脈はたいてい大動脈の下部からでており,総腸骨動脈からでていることさえもある.腎臓の位置が異常でなくても総腸骨動脈が腎動脈の1つを出していることが時としてある.また左右の腎動脈が大動脈の前がわから1本の共通の幹をもって始まっていたり,1本の腎動脈が内腸骨動脈から始まっているような例が少数ながら観察されている.しばしば腎動脈の少数の枝が腎門以外の場所で腎実質中にはいっている.

6. 精巣動脈Arteria Spermatica (=testicularis) (図662, 666, 669)

 これは細くて長い動脈で,腎動脈よりやや下方でたいてい大動脈の前壁の正中線のすぐそばで始まる.腰筋の前を下外側にすすみ,尿管と斜めに交叉し,最後に外腸骨動脈と交叉して鼡径管に達し,そこで下腹壁動脈の枝である挙睾筋動脈A. musculi cremasterisと吻合して精管に達し,ほかの精索の要素とともに陰嚢にいたる.ついで精巣の間膜縁で1群の枝に分れて精巣の線維性被膜を貫き精巣実質中にはいる.

 これらの枝のうちの1本は精巣上体の尾部にいたり,内腸骨動脈から来ている精管動脈A. deferentialisと吻合する.

 ではこの動脈が卵巣動脈A, ovaricaである.男の場合まりはるかに短くて腹腔中で留まる(図668).骨盤縁から内側に向い,うねりながら子宮広籔襞の両葉のあいだを卵巣の付着縁にすすみ,ここで3本の枝に分れる.そのうちの1本は卵巣の卵管端で卵巣の中にはいる.第2の枝は外側に向かって卵管の膨大部に伴っている.第3の枝が最も強くて,内側に向い子宮動脈のかなり太い1枝とともに卵巣の付着縁で卵巣の動脈弓Eierstockarkadeを作り,その凸側縁から太い動脈が卵巣門にはいってゆく.また比較的小さい枝が子宮黒径索とともに鼡径管にはいる.

 発生の途中で精巣と卵巣がまだ腰部にあるあいだは精巣(卵巣)動脈は短いのである.その後に生殖腺が下降してその位置が変化するのに伴って動脈は次第に著しく長くなる.

 変異:ときとして左右の精巣動脈が1本の共通な幹をもって始まっている.あるいは1側または両側に2本の精巣動脈があり,これが2本とも大動脈から出ていたり,そのうちの1本が大動脈から,ほかの1本が腎動脈から出ていたりする.

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最終更新日13/02/03

 

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