Band1.627   

c)弓状動脈A. arcuata.この動脈は腓側足根動脈に近いこともあり,またかなり離れていることもあるが,足根骨の遠位端のところで発して,腓側足根動脈と同じく短指伸筋の下を外側かつ遠位の方向にすすむ.この動脈は重複していることがあり,また腓側足根動脈と合して出ていることもある.足背動脈網Rete dorsale pedisの形成にあずかり,この網の遠位部から第2,第3,第4背側中足動脈が出る.これらの背側中足動脈は細くてまっすぐに走り,弓状動脈がよく発達しているときには弓状動脈から.そうでない場合には足背動脈網の遠位縁から始まり,外側の3つの骨間隙において骨間筋の上を通り足の指の方に走っている.

 外側の3本の背側中足動脈,および内側の第1背側中足動脈がみなそれぞれ2本の背側指動脈Aa. digitales dorsalesという枝に分れ,足の指のたがいに向き合った背側縁に沿って遠位方向に走っている.

 腓側第5背側指動脈A. dorsalis digiti V. fibularisは腓側足根動脈か,あるいは足背動脈網から出て足の小指の背側外縁を走っている.

d)1背側中足動脈A. metatarsea dorsalis I. は足背動脈の終枝の1つである.第1骨間隙をすすんで背側指動脈を足の母指にあたえ,また第2指の内側の背側指動脈を出している.

 変異:脛側背側母指動脈A. dorsalis hallucis tibialisは図678に示す例のように足底から来ていることがある.

e)穿通中足動脈A. metatarsea perforansは第1背側骨間筋の両頭のあいだで第1骨間隙の近位部を通って足底にいたり足底動脈弓Arcus plantarisの形成にあずかる.

 骨間隙の遠位部および近位部で背側中足動脈が穿通枝Rami perforantesによって足底の動脈とつながっている.

 前脛骨動脈の変異:膝窩動脈が高いところで分岐している場合には前脛骨動脈の初めの部が膝窩筋の前面か後面にある.このような場合の何例かにおいて,腓骨動脈が前脛骨動脈から出ている. 多くの例では前脛骨動脈が下腿の前外側面に沿って腓骨のそばを下方に走り,十字靱帯のうしろで足関節を越えるところでやっと正常の位置をとる.ほかの例では下腿の中央から下方では全く表面を走っているのが見られた.--前脛骨動脈は普通よりずっと細くなっていることがまれではない.普通より太いことはまれである.普通より細い場合はその程度にあらゆる段階がある.母指の動脈だけが欠けていることがあり,その時には足底からの枝がその代りをしている.ほかの例では前脛骨動脈が足背の近位部かまたは下腿の下端部で終わっている.そのさい足背動脈は腓骨動脈の穿通枝R. perforansから出ていて,前脛骨動脈とのつながりはあることもあり,ないこともある.ほかの例では前脛骨動脈が完全に欠けていて,下腿では後脛骨動脈の穿通枝が,足では腓骨動脈の穿通枝がその代りをしている. 足底動脈弓の発達がわるい場合にはしばしば足背の諸動脈とその穿通枝が太くなっている.

 弓状動脈はヨーロッパ人で68.5%,日本人で79.1%において欠けている(Adachi).

後脛骨動脈Arteria tibialis posterior(図677, 679)

 この動脈は下腿の後面を下方に破裂靱帯のところまですすみ,そこでこの靱帯と母指外転筋の起始で被われて,内側足底動脈A. plantaris tibialisと腓側足底動脈A. plantaris fibularisに分れる.

 局所解剖:上方では後脛骨動脈は脛骨と腓骨のほぼ中間にあるが. 下方ではいっそう内側にかたより,下腿の深層にある3つの屈筋と下腿筋膜の深層によって作られる管のなかにいたる.上方でははなはだ深いところにあって,後方からヒラメ筋・足底筋・腓腹筋によって被われている.下方ではずっと表層にあって,脛骨踝のうしろでは2枚の筋膜葉と皮膚がその上を被っているだけである.しかしアキレス腱の下端部とのあいだは下腿筋膜の両葉の間にある豊富な脂肪組織によって隔てられている.

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最終更新日13/02/03

 

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