Rauber Kopsch Band2. 156   

3. 肺根Radix pulmonis, Lungenxvurzel(図208210, 212)

 各側の肺根は気管支・太い血管(肺動脈の左枝と右枝,左右の肺静脈,気管支動脈および静脈).リンパ管・リンパ節・神経からなりたっている.これらのものは結合組織によってまとめられて肺門から中にはいっている.

 局所解剖:右の肺根は上大静脈の後方で,右心房の一部の後方にある.また右縦胸静脈の終りの部分の下方にある.一方,左の肺根は下行する胸大動脈の前方で大動脈弓の下を左にすすんでいる.横隔神経は左右とも肺根の前方を下方にすすみ,迷走神経は肺根の後方を下行している(図223, 224).肺の横断面でみると,気管支は気管支動静脈およびリンパ管とともに肺に出入する太い血管の後方にある.肺動脈は気管支と肺静脈とのあいだにあり,肺静脈が最も前方にある.

 前額断では左右の間に差があって,右側では気管支がもっとも上にあり,その下に肺動脈がある.それに対して左側では肺動脈が上にある.左右とも肺静脈はいちばん下にある.

4. 気管支枝Rami bronchales, Bronchales verästelung(図202, 203, 204, 211)

 気管は右と左の気管支に分れ,この2つは56-90°の角度を作ってたがいに離れてゆく.その角度の平均は70.4°である.左右の気管支の幹Stammbronchusは肺底の後部を指して次第に細くなりながら走っている.つまりこの幹は肺の軸には沿っていないでそれより後方にそれている.そしてまっすぐには走らないで弧を画いている.しかも気管支の幹の弯曲のしかたが左右の間で違っている.右側の幹はかなりまっすぐで正中面からのへだたりがいっそう少なくて,わずかにC字形にまがっている.この状態とさらに右の気管支がいっそう太いことから(右2.2cm:左2cm)気管分岐部よりも奥にはいる異物がたいてい右の気管支に達することが説明できる.左の気管支の幹は明かにS字状にまがっている.大動脈弓がその上を越えて走るためにこの幹は正中面に向かって凸の弓をなしていて,これが上半分の弯曲部となっている.それより下方では心臓の位置が左にかたよっているので正中面に向かって凹の曲りをしていて,そこがこのS字の下半分の弯曲部に相当している.気管支の幹からは気管支枝Rami bronchales, Seitenbronchiが分れて出る.気管支枝は下の方から出るものほどいっそう下方に向かっている.気管支枝には前方のものと後方のものとがある.前枝の方がずっと太くて外側から前方にすすみ,後枝は後方に向かっている.

 左肺の気管支の幹は4~5cm走ってから4本の前枝と4本の後枝とを出している.第1の前枝だけが上葉に分布し,第2,第3,第4の前枝と4本の後枝がみな下葉に分布している.左の気管支枝はすべて肺動脈左枝よりも下方で出ている.それゆえ動脈下気管支hyparterielle Bronchiと呼ばれるのである.

 右肺の気管支の幹は2.5~3cm走ってから1本の太い気管支枝を出していて,これは肺動脈右枝よりも上方にある.したがって動脈上気管支枝eparterieller Bronchusと呼ばれる.そのほかのもめはすべて動脈下気管支枝である.動脈上気管支枝は右肺の上葉に分布している.それに続いて左肺と同じく4本の前枝と4本の後枝が出ていて,第1の前枝が中葉に分布し,第2ないし第4の前枝および4本の後枝がまみな下葉に分布している.右肺にはHerzbronchus(心臓気管支)という特別の気管支枝がある.これは第2の前枝の高さで始まり内側に向かって下葉の実質中にはいっている.この枝が心臓気管支と呼ばれるのは,それが少数の哺乳動物の肺において分離しているLobus infracardiacus(心下葉)に分布する気管支枝と相同のものであるからである.

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最終更新日13/02/03

 

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