Rauber Kopsch Band2. 223   

子宮は正中をはずれた位置にあることが多く,その場合にはたいてい右側にかたよっている.これはS状結腸が小骨盤において左側に位置をしめることによって起るのである.一骨盤筋の緊張の程度や,体位がやはり女性の内部生殖器の位置に影響する.

b)外部すなわち女性外陰[部]Pudendum femininum, weibliche Scham(女性の外部生殖器)

 外陰部(Cunnus, Vulva)は女性生殖器のうち外から見える部分,すなわち恥丘大,小陰唇,および陰核処女膜からなりたっている.

 外部生殖器と腔は交接器官Begattungsorganeであって,これらに対してそれ以外の生殖器は産生器官Zeugungsorganeということができる.

1. 恥丘と大陰唇Mons pubis et Labia majora pudendi, Schamberg und große Schamlippen

 恥丘Mons pubisは恥骨結合の前にあって,毛を持つ皮膚の部分であり,皮下脂肪がきわめてよく発達しているので,ひときわ目立って高まっている.恥丘は下後方で大陰唇Labia majora pudendiに移行する(図276, 285, 292, ~ 294).

 大陰唇はかなりふくらんで円みをおびた2つの皮膚のひだでその間に裂け目ないしは楕円の形をした空所,すなわち陰裂Rima pudendi, Schamspalteをはさんでいる.成熟した女では大陰唇の外表面は恥毛Pubes, Schamhaareで被われている.恥毛は腋からほぼ1手掌の幅だけ下方の水平線上から始まっている.大陰唇は内側に向かってだんだんその乾き方が変わっている.すなわち次第に赤みを増し,しめつてきて,むしろ粘膜の観を呈するようになる.しかし完全に粘膜と同じ構造とはならない.大陰唇の内部には脂肪に富む結合組織,神経,脈管,腺があり,なおそのほか平滑筋線維の束をもっている.左右の大陰唇は前方と後方において前,後陰唇交連Commissurae labiorum ventralis et dorsalisという皮膚のたかまりによってたがいにつながっている.前方のたかまりはいっそう幅がせまく,後方のものはそれより幅が広い.後陰唇交連は約3cmの長さの会陰Perineum, Dammによって肛門と境されている.後陰唇交連のすぐ前方で陰唇は陰唇小帯Frenulum labiorum pudendiという皮膚のひだに移行する.これは鋭い縁をなし,前上方に向かって凹の弓を画いて横走しており,最初の出産のときにしばしば裂ける.陰唇小帯の内方にはすでに腟前庭の後部をなすところの浅いくぼみがあり,これを舟状窩Fossa navicularis(vestibuli vaginae)という.

2. 陰核と小陰唇Clitoris et Labia minora pudendi, Kitzler und kleine Schamlippen

 前陰唇交連の後方には大陰唇に囲まれて,側方からやや圧平された形の低い突出物があって,これは粘膜で包まれており,陰核の先端,すなわち陰核亀頭Glans clitoridisである(図292294).

 陰核Clitorisはいっそう大きな男性の陰茎とよく似た形と性状をもっているが,尿道はその中にない.陰核は3~4 cmの長さの陰核海綿体Corpus cavernosum clitoridis, Schaft des Kitzlers(陰核体)からできている.陰核体は左右各側で恥骨枝の結合部から長い陰核脚Crus clitoridisをもって起こっている(図293).左右の陰核脚は骨と平行して前方にすすみ,合して陰核体となる.ついで円みをおびた鋭角を作って後方にまがる.陰核体の正中面には不完全ながら隔壁があり,櫛状中隔Septum pectiniformeという.陰核体を被う結合組織の被膜を陰核筋膜Fascia clitoridisと名づける.恥骨結合から弾性に富む結合組織性の索が陰核の背面にきている.これを陰核提靱帯Lig. suspensorium clitoridisという.左右の陰核脚は坐骨海綿体筋(会陰の項を参照)で包まれている.

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最終更新日13/02/03

 

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