歴史的な偉大な解剖学書
若干の神経糸は基底膜を貫いて筋層にいたる.しかし腺細胞まで達するかどうかは,最新の染色法をもってしてもまだ確定されていない(Boeke 1934).汗腺に分布する神経は大きい神経に伴って走っているが,おそらくはその大部分が交感神経をへて来るものであろう.
α)腱毛[汗]腺Glandulae sudoriferae ciliares
この腺はモル腺Mollsche Drüsenとして知られており,PeterおよびHorn(Z. mikr.-anat. Forsch., Bd. 38)によれば,まっすぐな短い導管をもち,この導管は捷毛の毛包に開口し,分泌部へ移行する直前のところで著しく広くなっている.分泌部は枝分れしておらず,コルク栓ぬきのように巻いていて,つよく拡張した部分とごく狭い部分とがある.行きづまりの端のところがはなはだしく広がっている.
β)耳道腺Glandulae ceruminosae, Ohrschmalzdrüsen
耳道腺は軟骨性外耳道を被う皮膚にあって,皮下組織の中で,毛に付属する脂腺の層の下に,ほとんどひと続きになった1層をつくっている.腺体はふつうの汗腺よりもゆるい糸球をなしている.この腺はたいてい毛包内に開く.その分泌物は苦い味がして耳脂(耳垢)Cerumenとよばれ,耳道の保護に役だっている.
耳脂はしばしば剥離した上皮細胞および脱落した毛といっしょになって,かなり濃縮されて暗褐色ないし黒色の栓となり,それが外耳道をふさいで耳のきこえを悪くすることがある.
γ)鼻翼[汗]腺Glandulae sudoriferae nasales
この腺はAlverdes(Z. mikr.-anat. Forsch.,1932,1934)によれば鼻前庭内で,鼻毛の内方の生えぎわのところにあり,毛包の前がわに開口する.その数はわずかで,各側に平均35個しかない.(この腺は日本人にも谷口虎年によって認められた.また加藤信一(Fol. anat. Jap,14,1936)によれば鼻翼外面の皮膚にもアポクリン腺が33例中12例に認められた.)
δ)腋窩[汗]腺Glandulae sudoriferae axillares, Achselhaardrüsen
腋窩腺は最も大きい糸球状腺である(2.3:1.32mmに達する).その腺体の全部が真皮のすぐ下の皮下組織のなかで,ほとんどひと続きになった灰赤色の板をなしている.この板の中にはリンパ性組織がかなり豊富にふくまれていることもあるが,その量が少ないこともある.導管は短くて糸球の構成にはあずかっていない.分泌部は長さ約1~2.5cmで,その広さはまちまちである.
Peter, K., Z. mikr.-anat. Forsch., 38. Bd.,1938, およびGroht, W., 同誌の同巻.
ε)乳輪腺Glandulae areolares mammae
乳頭と乳輪とにみられるアポクリン汗腺を,今日では乳輪腺とよんでいる.しばしばこれは非常に大きいものである.
ζ)肛門周囲腺Glandulae circumanales.
この腺は肛門をとりまいて1つの輪をなしており,ふつうの汗腺よりも数等大きい.しかし比較的小型のものは内肛門括約筋のところにまで続いている.この腺は疎性結合組織のなかに散在している(PeterおよびHorn).腺体はゆるく糸球状にまいており,その糸球が長く伸びてほつそりした形で毛根に接している.哺乳動物のいわゆる肛門腺Analdrüsenは胞状腺に属するものであって,これと混同してはならない.
最終更新日10/08/31