Band1.672   

リンパ腔とリンパ管

 リンパ管系ははなはだ多数の細大さまざまな円筒状のリンパ管からできている.リンパ管は一定の分節形式をなして配列し,豊富な網をつくり,また一定の場所でリンパ節Lymphknotenにつづいている.

 さらに毛細リンパ管の領域kapillares Lymphgefäßgebietは体の諸器官(そのなかにはリンパ節自身も含まれるが)に広がっている.毛細血管にいろいろな形や構成があるのと同じようにリンパのごく細い通路についてもそれがある.毛細血管と同じように,その所属する器官によって形状が変わっている.また太い血管壁の微細構造が毛細血管の構造を知ることによって初めて理解できるのと同じく,太いリンパ本幹の構造も最も細いリンパの通路の構成を知ることによって初めてよく分るのである.

 リンパ管には次のような形がある.

I.1次のリンパ腔

 これは原リンパ系Urlymphsystemに属するもので上皮によって被われている.これには心膜,胸膜および腹膜の腔(陰嚢腔は最後のものに含まれる),脳の脳室系,脊髄の中心管,耳の迷路の内リンパ腔が属している.

II. 2次のリンパ腔

 これは結合質の隙間という形であって,その表面は内皮で被われているところもあり,その被いがないところもある.2次リンパ腔の大きさと形は極めてさまざまである.これは一般にリンパ隙Lymphspalteという言葉でよばれている.これが袋のような形をしている場合は1次のリンパ嚢に対して2次のリンパ嚢といわれる.内皮を有する2次のリンパ隙には硬膜外腔,硬膜下腔,軟膜腔が属し,内皮をもたないものとしては関節腔,粘液嚢,腱鞘が属している.

III. 毛細リンパ管,大小のリンパ管の幹

 毛細リンパ管Lymphkapillaren, Lymphröhrenは毛細血管に相当するものであるが,たいていそれよりも広くて,やはり毛細血管と同じく1層のうすい内皮の管からなっている.内皮細胞は正多角形,あるいは不正多角形の輪郭をしていて,その縁は曲がっていたりあるいはギザギザになっていることがある.その長い方の径が管の長軸と平行するよう.に配列している(図702).毛細血管の内皮細胞の場合と同じく,小口Stomataがみられるが,毛細血管のそれと同じ意義をもつのである.すべての2次リンパ管は初め内皮の管からなりたっているが,太いリンパ管になるとその壁の層が増加することによっていっそう丈夫に作られている.かなり太いリンパ管(直径2mm以上のもの)の壁は血管の壁と同じく3層からできている.内膜は内皮細胞と縦走する細い弾性繊椎の網からなっている.中膜には横走する平滑筋細胞と少量の弾性線維がみられる.外膜には縦走する結合組織の束と弾性線維,それに縦走する平滑筋束がある(図715).

 静脈と同じくたいていのリンパ管の幹はをもっており,これは内膜のヒダである.弁の形は静脈の弁と同じであるが,それよりもはるかに繊細で薄い.たいてい2枚の帆状弁がたがいに向きあった形をしており,それが付着しているところでリンパ管ゐ壁は外方へふくらんでいる.その役目は静脈の場合と同じで,遠心方向への流れを阻止し,求心方向への流れを助けるのである(図703).

 リンパ管の弁はたいていたがいにかなり接近して存左し,静脈の場合よりもいっそう密接している.したがってリンパ管に液が一杯つまると弁の位置に応じてふくらみができ,ちょうどジュズのような外観を呈する.細いリンパ管の幹では弁がだいたい2~3mmの間隔をおいて存在する.

 S.672   

最終更新日10/08/28

 

ページのトップへ戻る