Rauber Kopsch Band2. 180   

 腎洞を両側からとりかこむようにのびており,なお錐体の間にも突起を出している.この突起は腎臓を切断すると柱のようであるから腎柱Columnae renalesと呼ばれる.腎柱はその内部がどこもほぼ一様の性質で,少しく粒子状を呈し,赤褐色の外観をもっている.また柔かくて表面に対して垂直な方向に裂けやすい.腎臓を垂直の方向にさくか切断すると規則正しくならんだ明るい条がみられる.この条の多くは錐体の底から腎臓の表面に向かって放射状にすすみ,そのほかの皮質部を貫いている.腎柱のなかだけは水平方向にのびていることがある.この条は皮質のなかにおける髄質の突起であって,髄放線Striae medullares corticis, Markstrahlenと名づけられる.それが全体として腎皮質の放線部Pars radiataを作っている.その他の皮質部は迂曲部Pars convolutaと呼ばれる(図241, 242).

 皮質と髄質の容積比についてはHollatz(Z. Anat. u. Entw., 65. Bd.,1922)が成人3体について測定した.46才の男の髄質の容積は31.9ccm,皮質は82.9ccmで,髄質:皮質=100:259であった.新生児においてはこの比が(Parade, Z. Anat, u. Entw.,81. Bd.,1926)髄質:皮質=100:167.4である.

 若い個体では腎臓という1つの腺がもともと各錐体を単位にした個々の葉,すなわち小腎Renculiに分れたものであることを示している.この状態は多くの哺乳動物で生涯を通じて残っている.腎葉Lobi renalesのおのおのは実際には1個の錐体とそれをかこむ皮質の被いを合せたものである.一人の新生児でも腎臓は分葉を示しておあおのの葉が深い溝によってたがいに境されている.最初の何年かの間にこの溝は次第に消えてゆくが,深浅いろいろの切れこみが長いあいだ,あるいは一生を通じて残って,以前の状態を暗示していることもしばしばである.顕微鏡でみると皮質はやはり錐体と同じ数だけのたがいに分れた領域をいつまでもなしている.これが腎葉Lobi renalesそのものである.

 微細構造では左右の腎臓は複合管状腺で,それぞれほぼ100万本の尿細管Tubuli renales, Harnkanälchenからなりたっている.尿細管は1層の上皮で被われている約50mmの長さの細い管で,それぞれ揚所によっていろいろ異なった口径と構造をもっている.尿細管の初まりはすべて腎臓の皮質のなかにあって肉眼でも認めうる.りっぱな球形の腎小体Corpusculum renis(マルピギー小体Malpighisches Körperchen)である(図241).尿細管の他端は乳頭の頂に開口しており,そこでは乳頭孔Foramina papillarumというその開口部が乳頭の篩状野Area cribriformisを作っている(図243, 244).

 尿細管の走行はその初まりから終りまで直線的ではなくて,一連の曲折をくりかえすことが箸しい.尿細管には次のような多くの部分がある.

I 分泌と吸収の起る部分secernierender und resorbierender Teil.

1. 迷路部

 a) 糸球体嚢(ボーマン嚢) (径130~222µ)

 b)頚

 c)曲部(曲尿細管) (径40~60µ)

2. 係蹄部(ヘンレ係蹄)

 a) 下行脚(径9~16µ)

 頂

 b) 上行脚(径23~28µ)

3. 中間部(介在部) (径39~44µ)

 a)第1部(不規則な形をもつ細管)

 b)第2部(結合細管)

II. 導出する部分ausführender Teil

4. 集合部

(第1,第2,第3次などの集合細管)

a)第1次の枝(径25µ)

b)第2次の枝

c)第3次の枝

d)第4次などの枝

e) 乳頭管(径200~300µ)

1. 尿細管の迷路部pars labyrinthicaは髄放線のあいだの皮質にある.

S.180   

最終更新日13/02/03

 

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