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内面から見たクモ膜下槽と関係のある血管

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静脈系

 

1: Pericallosal cistern 脳梁周囲槽 (Cisterna pericallosa)

 脳梁周囲槽は脳梁の全長にわたって周囲にある腔所で、脳梁周囲動脈や前大脳動脈の分枝を入れる。

2: Postcommunicating part; A2 segment 前大脳動脈の交通後部;脳梁周囲動脈;旁脳梁動脈;前大脳動脈のA2区域 (Pars postcommunicalis; Segmentum A2)

 前大脳動脈の交通後部は皮質部ともよばれ、その走行は大脳縦裂に中にはいると上方に走って脳梁膝の下面に達すると前方に屈曲して、そのあとは脳梁の周囲にある脳梁槽の中を脳梁をとりまくような形で後方に走り、脳梁膨大の付近にまで達する。この脳梁にそって走る部分を脳梁周囲動脈(旁脳梁動脈)という。脳梁周囲動脈は前大脳動脈の終末枝であり、脳梁の背側面に沿って尾側方向へ走り、楔前部を含む頭頂葉の内側面に分布する。

3: Cistern of lamina terminalis 終板槽 (Cisterna laminae terminalis)

 終板槽は大脳終板の前端にある腔所。

4: Anterior cerebral artery 前大脳動脈 (Arteria cerebri anterior)

 前大脳動脈は、視交叉と視神経の外側で内頚動脈から分岐する。左右の前大脳動脈は視神経の背側を前内側方向に走り、相互に近づき、前交通動脈によって連結する。前大脳動脈は、大脳縦裂の間に入り、大脳の内側面を上方に向かい、つづいて脳梁の背側面を後方に向かう。前大脳動脈は、大脳縦裂の間に入り、大脳の内側面を上方に向かう。前大脳動脈は、途中で次のような枝を出す。すなわち①内側線条体動脈、②眼窩枝、③前頭極動脈、④脳梁辺縁動脈、⑤脳梁周囲動脈である。前大脳動脈の異常は約25%の脳にみられる。このなかには前大脳動脈が1本しかないもの、枝が反対側の大脳半球に分岐する例もある。
一側の前大脳動脈の本幹が閉塞すると、下肢に最も強い対側性麻痺が起こる。両側の前大脳動脈の閉塞は、両側麻痺、特に下肢の両側性麻痺と脊髄疾患に類似の知覚障害をともなう。

5: Chiasmatic cistern 交叉槽;視交叉層 (Cisterna chiasmatica)

 交叉槽は視交叉の下方および前方にクモ膜下腔が拡張したもの。

6: Interpeduncular cistern 脚間槽 (Cisterna interpeduncularis)

 脚間槽は橋底の吻側で乳頭体の腹尾側にあるクモ膜下腔の拡張部で、クモ膜が両側頭葉間に張って間脳底をおおう形になり、クモ膜と間脳底の間に槽を形成する。この中に動眼神経がある。

7: Basilar artery 脳底動脈 (A. basilaris)

 脳底動脈(BA)は左右の椎骨動脈は脊髄の腹側面で合一して1本の脳底動脈となる。脳底動脈は脳底を前進し、橋の前縁で左右の後大脳動脈に分かれる。小脳前下面に前下小脳動脈を、内耳に迷路動脈を、橋に数本の橋枝を、小脳上面に上小脳動脈を与える。左側の椎骨動脈は通常は右側の椎骨動脈よりもずっとよく発達している。そのため、大きい方の椎骨動脈が閉鎖すると重大な結果を招くことがある。脳底動脈は橋底面の正中部にある脳底溝の中を吻側に走り、鞍背のレベルで2本の終枝、すなわち後大脳動脈に分岐する。後大脳動脈と後交通動脈との吻合によってウィリスの動脈輪が閉じる。
脳底動脈の完全あるいは部分的な血栓により、筋緊張の急激な消失、対光反射と関係のない瞳孔の散大または縮小、両側性のBabinski反応の出現が起こる。神経系の障害は、通常両側性であるが、非対称性で、ある程度症状に変動を示すこともある。

8: Pontocerebellar cistern 橋小脳槽;橋槽;橋前槽 (Cisterna pontocerebellaris)

 橋小脳槽は橋が小脳と連絡するところの両側にある腔所で、上下に分けることもできる。橋槽(Pontine cistern)、橋前槽(Prepontine cistern)ともよばれる。

9: Internal cerebral veins 内大脳静脈 ( Vv. internae cerebri)

内大脳静脈は、第三脳室蓋板の脈絡組織内(第三脳室脈絡組織)の正中線近くを走る。この静脈は、室間孔の部位から視床の上内側面を後方に走り、中脳蓋の吻側部のクモ膜下層内で、左右の内大脳静脈が合流して大大脳脳静脈になる。内大脳静脈には、左右それぞれに下記の静脈がはいってくる。①視床線条体静脈(分界静脈)、②脈絡叢静脈、③透明中隔静脈、④視床上部静脈、⑤側脳室静脈である。

10: Basal vein 脳底静脈 (V. basalis) Rosenthals' vein

 ローゼンタール静脈ともよばれる。脳底静脈は小脳テント上部に存在する脳深部の静脈で、側頭葉前部内側にあり、島葉からの島静脈、大脳半球内面からの前大脳静脈、脳幹からの静脈などを集めてガレン静脈に注ぐ。脳底静脈は多くの静脈が合流し、以下のように3つのセグメントに分類されている。Ⅰsegment:前方に存在し、前有孔質(線条体)と密接な関係を有することより、anteriorまたはstriate segmentともよばれる。前大脳静脈Anterior cerebral vein、深中大脳静脈 deep middle cerebral vein、下直静脈inferior striate veinが有孔質の近傍で合流し、脳底静脈が始まる。そのほかに後前頭眼窩静脈posterior fronto-orbital vein、嗅回静脈olfactory veinが合流する。Ⅱsegment:中間に位置し、また大脳脚の周囲を走行することより、middleまたはpeduncular segmentと呼称される。Ⅰsegmentが後方へ走行し、大脳脚の前外側で大脳脚静脈と合流し、Ⅱsegmentとなる。また、脈絡裂をでてくる下脳室静脈inferior ventricular veinや側頭葉内側縁の静脈がⅡsegmentに合流する。Ⅲsegment:後半分あり、posteriorまたはposterior mesencephalic segmentともよばれる。Ⅲsegmentは視床・大脳脚などからの細静脈、太い外側中脳静脈lateral mesencephalic veinと合流する。 ドイツの解剖・生理学者Friedrich Christian Rosenthal (1780-1829)による。

11: Great cerebral vein 大大脳静脈 (V. magna cerebri)

 ガレン大静脈ともよばれる。大大脳静脈は脳梁膨大部の下方で、両側の内大脳静脈が合流して始まり、脳梁膨大部の近くで後方および上方に走行し、大脳鎌と小脳テントの結合部の前方に流し直静脈洞となる。大大脳静脈の全長は平均12mm(範囲8~25mm)と短いが、非常に重要である。大大脳静脈には、1対の脳底内大脳静脈、1対の内大脳静脈、1対の脳底内大脳静脈、1対の脳底静脈、1対の後頭静脈および1対の後脳梁静脈が注ぎ込む。ローマ在住のギリシャの医師Claudius Galen (130-201 ?)による。
大大脳静脈はもっとも静脈が集中する場所の一つであるだけでなく、周辺に多くの動脈も存在することより手術操作に際しては慎重でなければならない。同部に発生するvein of Galen aneuysmに大して静脈洞交会を経由するtranstorcular embolizationも手術に変わる方法として行われている。

12: Quadrigeminal cistern; Cistern of great cerebral vein 四丘体槽;大大脳静脈槽 (Cisterna quadrigeminalis; Cisterna venae magnae cerebri)

 大大脳静脈槽ともよばれる。四丘体槽は脳梁と視床の間で中脳被蓋のすぐ後方に位置するやや広がって伸び出たクモ膜下腔で、背側から外側にかけて取り巻いている大大脳静脈槽を、臨床では迂回槽cisterna ambiensと呼んでおり、重要なクモ膜下層である。その理由は、このクモ膜下層の中に、大大脳動脈(great vein of Galen)、後大脳動脈、上小脳動脈などが存在するからである。これらのクモ膜下層のほとんどは、核磁気共鳴画像撮影法(MRI)やCTによる画像で見ることができる。

13: Posterior cerebellomedullary cistern; Cisterna magna 後小脳延髄槽;大槽 (Cisterna cerebellomedullaris posterior; Cisterna magna)

 後小脳延髄槽は小脳の延髄背面との間にある最大のクモ膜下槽で大槽とも呼ぶ。ここには第四脳室正中口ならびに外側口が開いて、脳室系とクモ膜下層の脳脊髄液の接点となっているため、脳室の脳脊髄液を得たいときにはこの槽に穿刺(後頭下穿刺)を行う。
脳脊髄液の採取や薬剤注入などのために、この槽に後頭骨の下から穿刺を行うことがある(大槽穿刺あるいは後頭下穿刺cisteranal or suboccipital puncture)。

 

 

最終更新日: 19/02/06