Band1.079   

V.からだ全体としてDer Körper als Ganzes

1.人体の設計Bauplan des Menschen

 人間を他のあらゆる動物から一目ではなはだたやすく区別することができるが,目の前に存在しているその著明な差異を認識しても人体の設計に関する知識は全く得られないのである.この問題を解くつもりで進んでいくと,間もなくわれわれは人体の形を幾何学が教えるところのいろいろな規則正しい形のものと比較しようとする試みに達するであろう.そして人体の基本形は1つの円柱Zylinderと似ていることをみいだすであろう.この円柱をその長軸をとおる1平面に対してやや平たくして,中央より上方で1つのつよいくびれをおくならば,人体の形におおよそ似るところの1つの形態ができるのである.このさい四肢については考えてないのだが,これを考えるとすれば,やはり円柱に近い形のものが,太い円柱形の胴体に付属していることがわかるのである.

 G. Fechnerは全身の表面の形,とに顔面の形を数学的に表現しようと試みた.鳥類の卵の殻や多くの無脊椎動物の非常におもしろい形をした外殻については数学的なとりあつかいがなされている.しかしこういうことをしてみても人体の設計に関する知識はいずれも得られないであろう.

 H. Lotzeがそれに反対して正しく述べているように,高度の有機体である生物の体は決して単なる形をあらわすのでなく,内部の複雑な組み立てを包んで,外界から境しているものである.“大多数の人々は身体が内容をもって充たされた立体のもので,その内部を充たす構造が外形を決するものであることを看過している.だから身体の形を単なる形と比較できるという希望を持って満足し,またいくつかの係数を変えるとカニの表面をクモの表面にかえることができるというような空想をえがいて喜ぶのである.ところが数学上の線や面は発生学を持っていないし,内臓を持っていないのである”.

 しかしこんな数学的なものに内臓をあたえることも考えられるであろう.またこれとは別にしても,われわれは外形をみることによって,人体の設計という問題に価置のある若干の事柄を知ることができる.これを認めることをLotzeも決して看過ごしたわけではない.

[図141]二等辺の錐体形 1つの側面を下にして倒してある.abcが底であって,acとbcが底の二等辺であり,abは底の不等辺である.

 人体の内部に直角の軸系をおいてみると,すぐ分かるのは,長軸にそって体は非対称を示し,同様に背腹軸でもほい対象であるが,横軸では対称性が存在している.

 これと同様な軸の違いは動物界ではひろい範囲に著しくみられるのであるが,しかし何れの動物もそうというわけではない.すべての軸がみな平等という場合を持って,他の2つの軸が同価置の極をもち,そしてその互いの間では同じという場合がある.

 人間やすべての脊椎動物,多くの無脊椎動物,さらにまた植物の葉にも明瞭である体形をHaeckel (Generelle Morphologie)いらい正二側型eudipleure Korperform, Typus der Eudipleuren, Homo-Form(人間型の意)とよんでいる.

S.079   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る